■■■ 鳥類/哺乳類の分類 2013.5.2 ■■■ 東アジアの民俗的分類 分類といえば、科学者の成果をそのまま受け入れることになっているようだが、それはあくまでも仮説。実際、大きく変わることがある。特に、分子生物学の発達で「系図」上、類縁関係が変更されることはザラ。 そんなものを丸暗記するより、自分達がなんとはなしに考えている分類はどうなっているのか、省みる方が余程意義があるのではなかろうか。 東アジアということで考えるなら、中国神話における見方をあげることができよう。良く知れれているように、四方を護る霊獣が決められている。所謂、四神。 裸のヒトと大きく違う点は表面の構造である。つまり、4種類に分かれることになり、それぞれの頂点が「帝王」というか、「神」とされる訳で、それは実在の動物ではない。こういうことになろうか。 ○「鱗」で覆われた動物群の帝王: 龍 ○「羽」で覆われた動物群の帝王: 鳳凰 ○「殻」で覆われた動物群の帝王: "巨大"亀 ○「毛」で覆われた動物群の帝王: 麒麟 亀だけは実在動物だから、おそらく巨大な亀と想起しているのだろう。この場合、対象としているのは、脊椎動物の範囲と見てよさそう。脊椎動物とそれ以外という大分類がありそう。感覚的には、それぞれの帝王という意味は、その動物群支配者というより、軍事的統帥権の保有者というところ。それぞれの部族のトーテムが実際の動物だとすると、それを束ねた概念とも言えそう。 その他を入れても、脊椎動物を5分類ですますことになり、随分と荒っぽい見方だ。従って、もう少し細かくしたくなる。そんなものとしては、「十二支」があげられる。 おそらく、四神の分類を踏襲している筈である。ただ、大きく異なるのは実在の動物である点。但し、「辰」は「龍」とされており、仮想の帝王とされている。これは、分類としては可笑しな例外を作ったと言わざるを得まい。もしも、本当の分類なら、「辰」は実在の動物であるべき。そうなると、これは鰐ではないか。 何故、そう考えるかといえば、「四神」には亀が入っているのに、「十二支」では除外されているから。おわかりだと思うが、これは陸棲動物の分類なのである。つまり、鰐も亀同様に水棲と見なされるだろうから、現存生物としての鰐は除外される。しかし、陸棲的な鰐が存在しなかったとは言えまい。相当昔に絶滅してはいたものの、分類としては残っていたと考えることもできるのでは。もちろん絶滅した大型蜥蜴の可能性もある。 そこさえクリアすれば、ほぼ「脊椎構造」を持つ動物の全体観がつかめる分類になっているといえそう。従って分類としてはこうなる。 ○「脊椎構造」動物 ●陸棲動物 ●水棲動物 ・「鱗」類:魚類 ・「粘膜」類:鰻、両生類[蛙、等] ・「殻」類:海亀/淡水亀、鰐 ・「毛」類:アシカ/アザラシ ・「肌」類:イルカ/クジラ ・「羽」類:水鳥・・・これは水棲と見ないでもよさそうだが。 ○非「脊椎構造」動物 さて、その陸棲の「脊椎構造」動物だが、その基本は"四肢"である。細かく分類してみようか。そうすると十二支がどう位置づけられているか見えてこよう。折角だから、東西南北の象徴的聖獣も追加してみた。 ○「着衣」(裸)類 ・ヒト ○「肌」類 ・象 ・カバ (偶蹄目) ○「羽」で覆われた卵性繁殖二翼ニ足 ・鳥/鶏 「酉」 「鳳凰[南]」 ○「毛」類 【純草食性-健脚】 ・馬 「午」 (奇蹄目) ・駱駝 (偶蹄目) 【純草食性-角・特殊胃】 ・牛 「丑」 (偶蹄目) ・羊 「未」 (偶蹄目) ・山羊 (偶蹄目) ・鹿 (偶蹄目) 【狩猟性】 ・虎/猫 「寅」 「白虎[西]」 ・狼/犬 「戌」 ・熊 ・白鼻芯 【雑食性】 ・猪/豚 「亥」 (偶蹄目) ・鼠 「子」 ・兎 「卯」 ・猿 「申」 ○「殻」類 ・犀 (奇蹄目) 【特殊:卵生】 ・蜥蜴 【不明】 ・架空動物 「辰」 「青龍[東]」 ○「鱗」類 ・センザンコウ 【特殊:脱皮、卵性、無】 ・蛇 「巳」 「玄武1/2[北]」 当然ながら、僻地生息で生態不明なものは伝説的伝聞とされ、上記分類のどこにも位置付けできないことになるが、以下は上記の「毛」類である。 ・パンダ、レッサーパンダ ・バク (奇蹄目) 尚、以下は、上記の陸棲「毛」類としては扱わないのではないか。 ○土棲(穴居)・・・非正統的陸棲だから除外していたかも。 ・アナグマ ・モグラ ○空棲の二翼ニ足動物・・・「毛」だが、飛ぶ「羽」類としたのでは。 ・コウモリ タブーなく食べるというのが、大陸の掟であり、その視点からの分類と考えることもできる。食材化する際の、表皮の処理の仕方が違うということ。十二支は、この分類から代表を選んだことになるが、結構、網羅しているような気がする。選ばれなかった動物にはそれなりに訳がある訳だ。 ・非「毛」類の巨大動物 象、カバという巨大動物は外されたのは、毛らしきものがあるが、「肌」感覚に違和感があったということか。犀は鎧で覆われている上に角まであるから選ばれでもよさそうだが。ただ、これらはすべて、泥浴び型。土棲動物も含めて、日本流に言えば"植物の"「根の国」に生きる動物と見なされるから、トーテムとしては不適ということだろう。 ・「毛」類のよく知られた家畜系 駱駝が何故選外なのかは、腑に落ちない。食に不適とも思えないし。砂漠棲息ということで、特殊なのでトーテム化しなかったということだろうか。山羊は羊の"山"版という名称なのだから、羊と重複して代表に選ばれる訳がない。一方、鹿(トナカイ、等)だが、季節的に角が落ちる。こうなると、牛や羊のような有角動物の亜流と見なさざるを得まい。 ・「毛」類の猛獣 熊は頭がよく働き、森の頂点に立っているから、神聖化されるべき動物。選外になる筈はないのだが、冬眠する点で一時的に「根の国」に生きる動物と見なされたので除外されたのかも。白鼻芯は家畜化困難だし、強いというより、敏捷なだけだから選外で当然だろう。 ・「殻」/「鱗」類の小動物 小動物だから選外になる訳ではないが、蜥蜴やネンザンコウのヒトの生活に対するインパクトや、出会った時に与える緊張感という点では極めてマイナーな存在と見てよいだろう。 こうして眺めると特別扱いされている動物の存在に気付かされる。 ・「殻」/「鱗」類の極めて特殊な動物 十二支の「辰」と「巳」である。前者は空想生物とされているが、分類にそのような概念が導入されるのは極めて不自然である。従って、歴史以前に実在していたが絶滅してしまった陸棲鰐と見た。口承では、尾鰭がつくので、どのような生物であったかは今となってはわかるまい。揚子江鰐は水棲だが、それに類似だったに違いない。 蛇は珍しくもない動物だが、極めて特殊な陸棲生物である。地中で冬眠するから、日本流では「根の国」の生物。地上の動物分類に入れるのは本来はおかしなことだが、そのような見方ができないほど超越的な生物と見なされたのだと思われる。なにせ、上記のなかでは唯一の無足だし、脱皮するのだから、脅威的生命力を持つと見られていたに違いない。 そうそう、玄武は蛇と亀からなる。四神という大分類では亀は登場するが、その下の細かな分類になると登場しない。にもかかわらず、玄武として表象的姿になっているところを見ると、歴史以前に、東アジアに陸棲の大型亀が存在した可能性があろう。ということで、この2種を含めて、上記の陸棲脊椎動物の"網羅的"分類に欠けている部分を補足しておこう。 要するに、視野から漏れているものを補う訳である。 ○アジア地区絶滅種 ・陸亀 「玄武1/2[北]」 ・化石の有袋目相当 ○非アジア地区の種 ・カモノハシ(卵性) ・カンガルー、等(有袋目) ・アルマジロ/アリクイ/ナマケモノ、等 ・ジラフ(偶蹄目キリン科) ・ハダカデバネズミ いやー、それにしても十二支というのはよくできた分類だ。 多摩動物公園の見所−INDEX >>> HOME>>> (C) 2013 RandDManagement.com |