---テクノポリス振興策

                "New Economy"化に合わせた都市の産業政策

 科学技術振興政策ではないが、地域開発の成否も科学技術の進歩に著しい影響を与える。
 すでに80年代から、西海岸サンフランシスコのシリコンバレー地区と東海岸ボストンのルート128号地帯がハイテク地域の成功例としてあがっていた。大学と、その地域を拠点とするハイテク大企業、さらにはスピンアウトしたベンチャー、といった産学コミュニティが、産業発展の原動力との認識は古くからあった。そうした教訓をもとに、日本でもテクノポリスの議論が盛んだったこともある。しかし、その動きは弱く、成果についての話題も乏しいのが現実だ。
 一方、米国は、90年代を通してハイテク地区や知識産業中心の産業地域の強化策を続けてきた。

 例えば、以下の地区はハイテク産業の基盤がほぼ出来上がっている。しかも、ほとんどが、更に変身・成長中なのだ。
(西部)
 ・シアトル(マイクロソフトとボーイングの城下町)
 ・オレゴン州(カリフォルニア大)
 ・シリコンバレー
 ・ハリウッド(「インフォティメント」ということ)
(中部)
 ・アイオワ州(インターネット「情報ハイウエー」の臍)
(南部)
 ・アルバカーキ(アリゾナ州立大、モトローラなどが拠点設置)
 ・オースチン(テキサス大、インテル、TI、モステック、AMD、モトローラなどが拠点設置)
 ・リサーチ・トライアングル(ノースカロライナ大、デューク大、IBMなど)
(東部)
 ・首都ワシントン(「ネットプレックス」と呼ばれ、防衛関連やAOL)
 ・ニューヨーク(「シリコン・アレー」と呼ばれ、インターネット企業とグラフィックス関係)
 ・ルート128

 このような特定地域に企業・大学等が密集することで、新しい産業コンプレックスが生まれている。業際・学際的な知恵の交換が頻繁に行われることで、技術発展のスピードが速まっているといえよう。この動きを加速させる政策が、一挙に打ち出され奏効しているようだ。南部ではアトランタ、バレンタイン、オレンジはインターネット経済化の波に乗りつつあるし、五大湖ではクリーブランドやデイトンも生まれ変わりつつあるようだ。米国経済好調の源泉はここなのだろう。

 重要なのは、施策の根底にある考え方だ。例えばHUD(the US Department of Housing and Urban Development)の地域開発の政策指針は、"Old Economy"から"New Economy"への動きを明確に語っている。
 特筆すべきは、新しい産業クラスターをつくることが地域経済発展の原動力と考えていることだ。発展段階としては、以下の4タイプがあり、簡単なケースの解説が掲載されている。
 ・ブーム状態(代表例は、半導体のオースチン、テレコムのアトランタ)
 ・広域型(代表例は、ハイテク金融商品とマルチメディアのニューヨーク、国際貿易、輸送業、エンターテインメント、旅行業、情報処理のロサンゼルス、バイオのワシントン、国際的バンキングのマイアミ)
 ・再生(代表例は、自動車製造から研究や設計中心へと動くデトロイト、エレクトロニクスと通信分野で伸びるポートランド、タイやとゴム製造から研究型の合成高分子へと動くアクロン)
 ・過渡期(代表例は、鉄鋼、機械、化学、航空から新サービスと医療用製品やエレクトロニクス・通信といった技術型製造業への変身をはかるセントルイス)

 このように、シリコンバレーだけでなく、様々な地域が"New Economy"へとハイスピードで邁進している。アメリカの懐は深い。
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