---自動車分野の研究施策

            PNGVのインパクト

 米国はエネルギー源の多くを輸入原油に頼っている。これを、安全保障上の大問題と考えるのは当然のことであろう。問題が起きたときに、ボトルネックとなるのは、自動車燃料である。従って、国家戦略として、この分野で米国がヘゲモニーを握れるような技術を確立したい、と考えるのは当然のなりゆきである。

 こうした背景のもとで、クリントン・ゴア政権は93年にPNGVを発足させた。ケネディのNASAプロジェクトと対比しても遜色無い挑戦的なものである。というのは、燃費で、現在の3倍の性能を実現するという高い目標だからだ。しかも、タイムテーブル上で、2004年までに「生産プロトタイプ」を仕上げるというのだ。
 これと同時に、米国自動車産業の競争力を向上させる。もちろん、環境にも優しい自動車となる、という野心的なものである。

 名目上は政府機関とUSCARを中心とするパートナーシップ型の組織だが、実質的には、クリントン・ゴアのリーダーシップでGM、フォード、クライスラー(ダイムラー・クライスラー)が動かされて編成された、コンソーシアムと言ってよいだろう。

 このような挑戦的な目標を打ち出すのは、いかにも米国流といえよう。時宜が的を得ているから、軍事研究から民間研究に有能なブレインを呼び寄せる効果もある。大統領府のリーダーシップにより省庁横断的動きもスムースに進んでいるようだ。管掌はDOC(商務省)だが、DOEや国研の力を活かせる体制が作られている。
 さらに、ゴア副大統領は、2000年3月、最高4,000ドルの税控除策を提言し、いよいよ本格的な動きを進めるとの決意を披瀝した。

 もっとも、皮肉なもので、米国が早くから始めたのにもかかわらず、本気になって燃料電池に注力した海外の民間企業、ベンツとトヨタが先を走っているようだ。
 ベンツが燃料電池車1号モデルを公開したのは95年。カナダのバラード社にも資本参加した。(フォードも参加)
 一方、トヨタが燃料電池車を展示したのは、96年である。(ちなみに、日本政府のプロジェクト発足はそれより後である。)そのうえ、ハイブリッド・カー商用化も果たした。

「米国政府の技術政策」目次へ

(C) 1999-2000 RandDManagement.com