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2002.10.29
 
 


インクスの意義を考える…

 光造形によるプロトタイプ試作事業で急成長したベンチャー、インクス(1990年設立 2000年12月期の売上45憶円 2001年業績記載無し。http://www.incs.co.jp/overview/ovewview.html) が相変わらず注目を浴びている。
 確かに、3次元CADを駆使した型の開発期間短縮の力量は目覚しいものがある。1998年には今まで40日かかっていた型製作を10日に短縮し、2001年にはさらに半減させた。しかも、業界経験が少ない若者に実現させたという。(http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_yamada09)
 快挙である。

 インクスが注目された主な理由は3つある。
  ・ 大企業の同僚が集まり設立したベンチャー
  ・ IT技術を駆使して歴史ある「モノ作り」業界に参入
  ・ サービス業化した製造業
 これなら、同様なベンチャーはいくつも登場しそうに思うが、いまだに後が続かない。従って、いつまでもインクスが話題にのぼる。

 インクスのこれまでの成果は、あくまでも光造形技術の適用だ。同社の光造形装置は米国企業発だし、3次元CADの基本システムを開発した訳でもない。
 ラピッド・プロトタイピング(特急での型の試作)市場は急伸長中だから、事業も急成長した。(Wohlersによれば、1998年は186万の型が作られたが、2001年には355万に達した。)しかし、逆に、新技術の挑戦が続いているから、競合技術が優勢になる可能性もある。そうなると、光造形技術の企業が流れに乗れるとは限らない。
 このような厳しい競争状況にもかかわらず、インクスの成功例が議論の対象になり続けている。不思議な現象だ。

 実際、この分野では、新技術が次々と登場しており、光造形(光硬化性樹脂)が最良ともいえなくなりつつある。競合する有望技術だけでも、少なくとも3種類ある。(http://www.rpjp.or.jp/products.html)
  ・ 溶融物積層法(熱可塑性樹脂)
  ・ 粉末固着法(溶融接着)
  ・ 薄板積層法(薄紙)
 すでに、熱可塑性樹脂を用いる方法は光造形法を凌駕しそうな勢いだ。
 さらに、MITは、インクジェットを用いた積層法を開発した。2002年中に金属部品の直接鋳造装置を上市する計画だ。(http://www.zcorp.com/content/product_info/zcast.htm) これは、原理的に装置構造が簡単だ。従って、安価で簡便にすぐ型が完成する時代が来る可能性がある。光造形装置は高額だったから、委託サービスが進んだが、インクジェット方式が普及すれば、各メーカー1台となるかもしれない。技術で激動する市場である。
 残念ながら、日本は、こうした次世代技術の開発元ではない。技術活用基盤が決定的に弱いからだ。

 市場シェアを見るとその力量が一目瞭然だ。2001年の装置の購入・設置シェアでは米国が42.8%と圧倒的。日本は18.7%だ。モノつくりを誇るが実態はたいしたことはない。一方、新興勢力、中国はすでに4.7%に達している。(http://www.wohlersassociates.com/press22.htm)
 実は、これでも日本の動きは活発化している方だ。というのは、日本の製造業で稼動する3次元CADシステムの数が少ないからである。実数ははっきりしないが、米国の2割程度と見られる。

 日本には、そもそもラピッド・プロトタイピングのベンチャーが生まれる土壌がないのである。その点を考えると、インクスの革新性は際立っている。


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