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2003.3.20
 
 


お役人のやること…

 「お役人のやることだから」という言葉がある。企業内の会話には、極く自然に登場する。
 この感覚が、お役人には理解できないようだ。

 この言葉を使いたくなるような動きが報道された。
 経済産業省がLLC制度の検討を始めるという。2006年度から実施できれば、との計画らしい。(3月17日 日本経済新聞朝刊)

 米国の状況を少しでも知っているなら、LLC(Limited Liability Company)など、珍しいものではない。今頃になって、米国の真似を始めるらしい。
 それなら、個人事業の連合体でもある、便利なS Corporation制度は認めるつもりはないのか、と思わずたずねたくなる。

 お役人仕事とは、提言に応え、諸外国の実態調査を行い、関連部署と調整の上で新制度を導入すること、と言われているが、LLCはまさにその通りといえそうだ。
 官庁の役割に疎いビジネスマンから見れば、こうした業務はつまらぬものに映るが、担当する側にとっては大変な作業である。真面目に淡々と業務をこなさなければ、新制度は実現できないのだ。
 しかし、それだけのことである。官庁は変わらないのである。

 平沼経済産業相が掲げた「開業創業倍増プログラム」も典型といえよう。「大学発ベンチャー1000社」で新聞紙上を騒がしているが、単なる米国の物真似版施策である。 (http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0001574/1/010525hiranuma2.html)
 今までと違う点は、「1000社」とか「新規開業を5年間で倍増」との、極めて高い目標を掲げたこと位だ。

 このプログラム自体は、2001年5月に始まったが、現実には1990年代後半からの開業支援施策の集大成である。この間、ほとんどが超特急で法制化されており、官僚が不退転の決意で進めたと思われる。
 この結果、現在では、新事業創出促進法、中小創造法、産業再生法、中小企業労働力確保法と、支援策の揃い踏み状態である。さらに、ストックオプション制度も活用できるし、エンジェル税制もある。新事業開拓助成金を受けることもできる。
 おそらく、お役人は大満足だろう。

 しかし、現場から見れば、やはり「役人のやることだから」である。わかりきった施策を、真面目に導入しただけで、それ以上でもなければ、それ以下でもない。
 お役人には、この現場感覚がわからないのである。

 仕組みができても、起業家がすぐに上手く使える訳がない。というより、ほとんどの起業家は、こうした仕組みをどう使うのか、知らない。知らないのだから、いかに素晴らしい制度でも、利用は進まない。
 お役人には、こうした常識的判断ができないのである。

 お役人が知っている世界とは、先生、大企業のスタッフ、成功した有名人、だけである。といっても、確かに、一部の「起業家」との交流はあるだろう。しかし、一般の起業家と接点がつくれる訳がないのである。
 ここが、官尊民卑を続けてきたお役人には理解できない。
 一般の起業家は、ゼロから出発するのである。まともな経営者なら、新制度の勉強に時間を割く暇などない。お役人のお話に興味を持つことなどありえない。

 ところが、お役人はそう思わない。素晴らしい仕組みを作り、通達を出せば業界が動くと考えているのである。

 お役人に、この問題を指摘をする人は稀である。無言の圧力があるからだ。といっても、官僚側からでなく、産業界からである。官僚のやる気を削ぐようなことをするな、と言うのである。
 ここに構造改革が進まない原点がある。
 官僚に仕組みを作ってもらい、既存産業界が利用を取り仕切ることになる。お役人には足がないから、どうしようもないのである。

 これに目をつけ、ベンチャーや開業という形を真似して、ぶら下がる人達がいる。「過去の清算」と「未来への挑戦」を狙う施策に、政府依存体質の人達が群がるのである。
 起業家精神に溢れる人たちは、この動きを、遠くから眺めるだけである。


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