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2003.5.17
 
 


非主流技術のスピンアウト…

 2003年5月、ベンチャー企業NuCOREがイメージ・プロセッサーの新商品を発表した。この2つのチップセットを使えば、極めて高品質なデジカメ画像品質が実現できるという。台湾のファウンドリーTSMC製、0.13μルールだそうだ。(http://www.nucoretech.com/nu2/30_pr/press/presspr_2003.05.14.html)

 デジカメは5つのモジュールからできている。レンズ光学系、センサ、イメージ・プロセッサー、メモリ、筐体である。
 ブランドシェアを見ると、カメラメーカーが強いから、消費者はレンズ光学系の良さを重視していると思われる。しかし、OEMを含めたシェアを見るとCCDセンサーメーカーが健闘している。
 ところが、競争を議論する際に、抜け落ちがちなのが、イメージ・プロセッサー分野である。他に比べると消費者への直接訴求力が弱い部品だ。
 製品に組み込まれてしまうと、この部品の処理能力が威力を発揮しているのか、ソフトが優れているのか、はたまた、センサーやレンズが良いのかははっきりしないから、訴求の努力もしてこなかったのだろう。

 しかし、4〜6Mピクセルものセンシング能力が登場するようになれば、処理能力で画質に大きな影響がでてくる筈だ。しかも、開発費用も嵩む。
 今までは、各社とも、専用のIC(ASIC)を用いていたが、ここまで来ると、外部調達に踏み切る可能性が高い。
 従って、イメージ・プロセッサーに特化したベンチャーにチャンスあり、といえよう。

 といっても、センサからのアナログ信号をすぐにデジタル信号に変換する信号処理が中心のチップ事業に、それほど魅力があるとは言い難い。
 ICメーカーが提供している技術プラットフォームを使って設計するだけの、下請事業になりかねないからである。

 ところが、NuCOREは、高画質/高速応答かつ省電力を実現するために、アナログ技術を使った。
 センサからの信号をまずアナログ処理し、その後デジタル変換するのだ。こうした得られたデジタル信号を画像処理する、2段型の仕組みである。これだけで、デジカメの処理がほとんど済むという。
 しかも、銀塩フィルム並のダイナミックレンジで信号が処理できるという。本当なら、コストがこなれてくれば、プロ用機器並の性能の一般消費者製品も夢ではなくなる。

 この技術が独特なのは、アナログ技術を用いている点である。デジタルと違い高度なスキルが必要だから、簡単に真似はできない。優位を維持しやすいのである。

 すでに、デジカメメーカーが蓄積してきた独自のカラー技術に対応できるよう、パラメーター設定できるような専用ツールキットも用意されており、デジカメメーカーが自社専用ICからNuCORE製に移行する環境は整っている。
 デジカメメーカーの支持を集めることができれば、一気に成長できるかもしれない。

 と言っても、アナログ技術ベースなので、この事業展開が、この先も長期間に渡って続くとは言い難いが、培ってきた「技術をしゃぶり尽くす」のは技術経営の鉄則に従った方針といえよう。

 一般に、大企業は、時代の流れから外れた技術の利用には消極的だ。特に、デジタル技術時代にアナログ技術に力を入れる企業は稀である。技術マネジメントから言えば当然の姿勢といえる。
 しかし、優れたアナログ技術があるなら、捨て去るべきではなかろう。NuCOREのような挑戦を鼓舞するのが、投資家やマネジメントの役割といえよう。但し、大企業内では、戦略方針に反するから、やりにくい。従って、スピンアウトがベストな方針といえよう。

 大企業は、アナログ技術者をデジタル分野に回すようなことをせず、このようなスピンアウトを促進させて、キャピタルゲインを狙うべきだろう。


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