↑ トップ頁へ

2003.5.23
 
 


中小企業向け会社法制の議論…

 2003年5月「中小企業政策の視点からの新しい会社法制のあり方について」が発表された。(http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004021/1/030513chuuseisinhontai.pdf)

 問題意識として、3点があげられている。
   1 枠組みが画一的
   2 過剰な規制
   3 会社形態の選択にひずみ
 誰でもが感じていることである。

 そして、この問題点を解消するためになにをすべきか、が記載されている。答申の根幹をなすものである。
 「有限責任の下で運営される会社の最低限のルールを明確にし、成長する中小企業がその時々の実態・成長段階に応じて最適な運営ルールを選択できるようにする」との主張だ。

 要するに、いまもって「最低限のルールさえ曖昧なまま」、とあらためて確認したのである。

 実務家の視点で見れば、このような報告書作りは時間の無駄としか思えない。一般的に、「ルールが無いから作ろう」といった動きが、意味あるルール作成に繋がる可能性は極めて低い。ルールが無いのは、その方が得である、と考える人が多数派だからだ。ルールが無いことを知らない訳ではない。ビジネスの社会で、損に繋がる動きを是認する人などいない。

 そもそも、独裁国でもないのに、曖昧なルール下で運営できるのは、支配的な地位にいる人達が決まっていて、その閉鎖的なサークルの判断で、その時々に応じてルールを決めることができるからだ。
 安定した社会で、こうした人達のモラルも高く、ビジネスセンスも磨かれているなら、これでも十分機能する。というより、ルールを悪用する輩による混乱を防ぐことができるから、経済成長期なら低コスト高パフォーマンスな優れた仕組みかもしれない。
 しかし、この仕組みの前提がすべて崩壊したのである。・・・グローバル化で産業構造は激変しており、安定を目指せば、産業は衰退する。企業経営者のモラルも地に落ちた。古き良き時代しか知らない経営者にビジネスセンスは期待できない。
 要するに、こうした仕組みを続ける訳にいかなくなったのだ。

 従って、こうした観点で会社法制を改定すべきである。

 ところが、この報告を見る限り、そのような印象は受けない。
 最低資本金を下げるとか、会社設立目的の包括的な記載を認める、などは小手先の改定である。この施策が、意味あるような起業増加に繋がるとは思えない。やる気がある人達にとっては、他のバリアに比べれば、たいした問題ではないからだ。
 ましてや、家族経営の企業に不評な仕組みをいくら改定したところで、手間がかかる割には、経済成長貢献はほとんど期待できまい。

 仕組みを変えたいのなら、どこから手をつけるべきかを考える必要がある。

 実務家なら、手をつけるべきは、閉鎖的なサークルを壊すことから始める。といっても、このような仕組みを外から壊すことは難しい。内部から改革派を生み出すことが重要なのである。
 変革型企業が新しい動きを始められる仕組み作りが肝要なのである。

 それでは、何が必要なのか。

 まずは、大企業からのスピンアウトを促進させる仕組みの構築である。すべての機能を保有する巨大恐竜は滅びつつあるのだが、一向にアウトソーシングが進まない。コアではない機能に属している従業員を社外化する仕組みが決定的に不備なのだ。
 その上で、企業買収をし易くする仕組みが必要である。経営者と株主を分離する方向に進まない限り、溢れる資金を有効に使えない。当然ながら、こうした方向に進むには、経営健全性チェックの仕組みも必要となる。同時に、大企業が株主の場合、経営独立性担保の仕組みも重要となってくる。

 こうした動きが始まれば、中小企業に膨大なチャンスが生まれる。大企業の系列が崩れ、オープンな市場が生まれるし、大企業が掃出した人的資源を活用して、様々なビジネスを始めることもできる。

 当然のことながら、このようなことがすぐに始められる訳ではない。一般に、このような大変革は、具体的なアウトプットが確実なものから始まる。第一歩は、目立つものではない。
 重要なのは、変革の方向に一歩を踏み出すことである。そして、逆方向の施策に繋がりかねない提案は、すべてお蔵入りさせる必要がある。
 中立的で合理的な仕組みを取り入れ始めたら、それだけで改革は失敗だ。一歩も進まなくなるからだ。

 つまり、誰にでもわかる表層的な制度いじりが前面にきたら、改革の動きでは無く、既存の仕組みを温存させる動きと見ればよい。


 「ベンチャー政策」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com