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2003.7.9
 
 


SUPINFOCOMの衝撃(その1:プロ輩出作戦)…

 相変わらず、日本のアニメは世界に冠たるものと語る人が多い。日本の強みを生かして、コンピュータ・グラフィック技術やアニメ文化を融合することこそが、新産業創出の鍵、と語るオピニオン・リーダーもいる。

 そこで、「日本の強みは、具体的には何なのですか?」と尋ねると、曖昧な回答である。
 さらに、「黒沢明が存在したが、日本の映画産業が世界のリーダーになれなかった。アニメ産業も同じことになりはしないか?」ときくと、今度は黙り込む。
 なにを考えているのかわからないから、「コンピュータ・グラフィックの映画応用分野で、日本が先を走っていると考えているのか?」と聞くと話題をそらす。

 そして、あろうことか、このような質問者に対して、報復的な言動を始める。自分の意見に対する敵対者は芽のうちに潰す必要があるようだ。
 先ずは、「日本のアニメが世界市場を席巻しているのを全く知らない人がいるんですよネ。」といった調子で質問者を揶揄する。その上で、「日本を蔑む人がいまして、こまったもんです。」と愛国心に訴え、批判者に下賎な輩との印象を与える作戦を展開する。(もっとも、こうした大衆操作に長けることこそ、オピニオン・リーダーの商売のコツらしいから、このようなことを指摘しても意味はないらしいが。)

 どうしてここまで、批判者を嫌うか、不思議だったが、ある日、突然、謎が解けた。

 実は 新産業創出のチャンスありと語る当人が、アニメーションやコンピュータ・グラフィックにはほとんど興味を持っていないのである。これを知られると、職業基盤が失われるから、必死なのである。
 どうしてこのことがわかったかというと、オピニオン・リーダー氏は、NHK番組の「デジスタ」を知らなかったのである。(別に、「デジスタ」など知らなくても、自らの哲学に基づく発言や、新鮮な切り口で見方を提供してくれるなら意義もあるのだが。)

 素人でも、この番組を見れば日本の実力のほどがわかる。
 そして、特集番組を見た人なら、日本が遅れている点に気付いた筈だ。(New generation makes the world. とのメッセージである。)
 圧巻は、仏の、コンピュータ・グラフィック専門教育機関SUPINFOCOMの紹介だった。(クリエイターの超エリート校と言った方がわかり易い。)

 地域経済の活性化のため、EUの支援を受けている学校だが、ここの学生の作品の質の高さは群を抜いている。といっても、アートはフランスという文化イメージでの優位性とは違う。作品を見たとたん、素人の観客までがその力量に圧倒されるのである。まさに百聞は一見にしかずである。日本のアマチュアの「デジスタ」作品は、センスや面白さはあるが、プロとは違うと気付かされるのだ。
 この学校は、プロとして世の中に出るための実学中心の教育に徹しているから、その結果が歴然と現われたのである。特に日本と違うのは、早くから共同作業の訓練が行われる点だ。集団作業なくして、まともな商業用コンピュータ・グラフィックなど作れないから、徹底的にスキルを磨かせるのである。

 名物校長の方針は明確だ。
 「デジタルの分野で最高の教育機関を設立することが当初の目的でした。今や多くの卒業生がこの分野で就職を果たして満足しています。デジタル技術に関連した産業をこの街に根付かせることも目的の一つでした。」(http://www.nhk.or.jp/digista/onair/2003/130_0329.html)

 もしも、高度な産業技術スキルを持つプロの数で、コンピュータ・グラフィック産業の競争力が決まるとしたら、勝負はついているかもしれない。 


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