■■■ 北斎と広重からの学び 2013.1.25 ■■■

   お店の佇まいの描き方

今も昔も、気晴らしに出歩けば、どこかで一服ということになる。遠距離旅行になれば尚更。そんな情景を絵師はどう描いたか見てみよう。

○葛飾北斎 富嶽三十六景 「東海道吉田」
ドラマ「不二見茶屋」の一場面として演出。
  ・主演:品を作る旅の美女二人
  ・助演:茶托をもち話かける茶屋の女将
  ・脇役:くつろいでいる旅の男二人
   (トレードマーク付衣装)
  ・その他:草鞋調整中の籠人足
窓が一幅の絵と化しているが、店全体が劇のセットのよう。小道具としての、商品宣伝用看板もよくできている。
  ・お茶つけ
  ・根元吉田ほくち[火口]
はてさて、このシーンの位置付けだが、こんなところかな。
  旅人を まねく薄の ほくちかと
  ここもよし田の 宿のよねたち
      [十返舎一九 「東海道中膝栗毛」 1802年]


○広重 東海道五十三次 「石部(目川の里)」
名物の田楽を売るお店「いけや」に大勢の旅人が立ち寄っており、まさに大賑わい。店頭では、酔っ払って踊り出す人もでるほど。
そんなことに無縁の地元で働く人も通るが。

○広重 東海道五十三次 「草津(名物立場)」
名物は「姥ヶ餅」。
店頭では早駕篭が通ったりとせわしないことおびただしい。東海道と中山道が合流する地点の継立場(公認休憩施設)だから、当然といえば当然だが。
もっとも店で一休みしている旅客のほうは、そんなことは気にもならない。ほっと一息の境地。そこでは、武士、町人、駕篭かきが、一様に疲れを忘れて、餅で悦に入っているのである。

(ご注意)
本稿の意図は、マインドセットからの解放につながるような、鑑賞手引きの提供です。こんな話に興味を覚える方のためのもので、浮世絵の素人芸術論を展開している訳ではありません。尚、現段階では、ウエブ上の閲覧対象としては、アダチ版画拡大版をお勧めします。


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