■■■ 北斎と広重からの学び 2013.2.6 ■■■

   土下座姿

土下座は、尊崇高貴とされるお方に対してなされるもの。そんなシーンを描くことははばかられるだろうから、絵には登場しない。
・・・と書くと正確ではない。跪いている情景は描かれているからだ。ただ、その対象はどうも人ではなく動物のようだ。

○葛飾北斎 富嶽三十六景 「下目黒」
見るからに農家だけしか存在していなさそうな丘陵地帯。
秋刀魚を食した将軍のお話で有名な目黒である。小道を鷹匠が歩いているところを見ると、現在の目黒区鷹番の近くだろうか。目黒不動辺りの坂道かも。
家康が好んだから、鷹匠は将軍側近扱いの高位の人達である。と言っても、それだけで農夫が畑で跪いているとは思えない。将軍様の御鷹ということではないか。
鷹狩といっても実際は飼育動物捕獲であり、風習維持のための年中行事にすぎない。しかし、幕府にとっては重要なイベントだったらしい。そのため、この辺りの農民も駆りだされるし、お狩場維持の責任を分担させられた筈。その上、いったん狩猟が始まれば、儀式であっても、畑の作物などおかまいなしにそこらじゅう踏み荒らされることになる。農民の心情はいかばかりか。
・・・とつい感じてしまうのは、赤子を背負う母や、鋤を持って農作業に出かける農夫の姿が同一画面に押し込まれているからだ。

○広重 東海道五十三次 「藤川(棒鼻ノ図)」
「棒鼻」とは宿外れを示す用語。
絵では、外を示すための高い杭で、それがわかる。お定め書きなのか、2ツの高札がそれに並んで立っている。そんな場所に人が集まっているのは、特別なお馬様のお通りだから。
宿場町からは代表2人が羽織袴姿で出向いてお出迎えの様子。なんだかわからず、通りかかった旅人も指示に従い一緒に土下座姿勢。それに従わないのは犬っ子達だけ。

(ご注意)
本稿の意図は、マインドセットからの解放につながるような、鑑賞手引きの提供です。こんな話に興味を覚える方のためのもので、浮世絵の素人芸術論を展開している訳ではありません。尚、現段階では、ウエブ上の閲覧対象としては、アダチ版画拡大版をお勧めします。


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