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2002.8.11
 
 


中国脅威論(2)…

 「中国脅威論は幻」論者が、反論の対象とした論点は3つある。
  (1) 日本市場が中国製品に奪われる。
  (2) 日本製品の輸出先市場が中国製品に奪われる。
  (3) 日本の先端技術が流出し、中国に技術面で抜かれる。

 この論点には難がある。日本企業も含む在中国外資企業の製品を中国製品と呼ぶのか、はっきりしないからだ。しかし、論旨から判断すれば、日本の産業空洞化の「脅威」ではなく、中国企業対日本企業の競争力格差を議論しているようだ。

 「中国脅威論は幻だ」と結論づける第一の論拠は、「経営改革遅れた国営企業がシェア競争におびえる」というものだ。WTO加入により、市場が開かれたので、業績悪化企業が増えている点を指摘する。しかも、中国国内でも品質が悪い商品は安価でも売れないため、不良在庫が溜まっているという。・・・確かに、膨大な在庫だ。(http://ce.cei.gov.cn/)
 従って、弱体な企業は外資の「餌食」になると見る。・・・その通りだろう。

製品 代表的
メーカー
炊飯器 万家楽
電子レンジ 格欄
洗濯機、冷蔵庫、エアコン 海爾
カラーテレビ 長虹、康佳
デスクトップパソコン 聯想
オートバイ 嘉陵、軽騎
 ところが、突如、これを「中国のほころび」とみなす。日本のような護送船団型産業保護政策の視点で見れば、確かに「ほころび」だろう。しかし、競争政策の国では、弱者の衰退は必然である。弱者の存在をもって、中国企業を弱体とみなす訳にはいかない。
 「餌食」になるような弱体企業が、外資の傘下に入ったとたん、最強になる理屈があるなら別だが、買収したところで、競争力向上に失敗すれば、お荷物の買い漁りに終わる。熾烈な競争の世界である。

 21世紀の競争は、強い企業は益々強くなり、弱体企業は駆逐されていく戦いだ。従って、見るべきは、弱者ではなく、強者だ。当然ながら、そのような企業の数は極めて少ない。しかし、勝ち組み企業は、競争で鍛えぬかれているから、その強さは抜群だ。日本企業の競争相手とは、こうした勝ち残った中国企業である。

 この論者は、表に示すような中国の成功企業を競争相手と考えないのだろうか。韓国を含むアジア諸国でも、シェアを着々高めている企業が多いし、日本企業より収益は好調だ。
 例えば、Euromonitor調査による冷蔵庫分野での世界5強とは、Whirlpool、海爾(Haier)、 Electrolux、Kenmore、GE だ。海爾の世界シェアはすでに5.3%に達しており、米国現地工場を保有している。(http://english.peopledaily.com.cn/200201/13/eng20020113_88569.shtml)
 中国企業との競争とは、潰れかかった企業との戦いではない。高収益な世界トップレベルの企業との戦いなのである。(尚、海爾は日本企業と提携し、日本向け製品を開発して、市場進出を図っている。「幻」論者は、この製品の評判が芳しくないから、脅威にならない、と結論付けている。)

 ここまで勝ち進んできた中国企業が、WTO加入によって、低迷し始めるとは考えにくい。中国製品からの脅威が「幻」である筈がなかろう。 


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