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2004.2.1
 
 


リコール問題の難しさ…

 自動車の「リコール・改善対策の届出」状況の内容から、企業の姿勢を語る人がいるようだ。
  (届出データ http://www.mlit.go.jp/jidosha/recall/recall03/recall_.html)

 コストダウンばかり図るからリコールが大量に発生している、と語ったりする。何の証拠もないし、理屈もおかしいと思うが、本人は正しいと信じきっているようだ。

 日本のリコールの仕組みが上手く機能するには、まだ時間がかかるようだ。

 リコールに対する、極く一般的な見方なら、2000年に出された日本弁護士連合会の意見に集約されていると言えよう。以下の3点が基調となっている。
 ・罰則強化
 ・情報収集・分析体制の整備
 ・事故・クレーム情報の一般開示
  (http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/00/2000_21.html)

 同時に、自動車業界全体および行政の姿勢が変わる必要があるとの意見を付け加えている。
 誰でも、その通り、と考えるだろう。

 しかし、未だに上述のような意見が登場するのだから、これだけでは無理だろう。顧客側の姿勢も変える必要がありそうだ。
 消費者に間違った印象を与える主張がなくならない限り、仕組みは上手く回るまい。

 そもそも、コストダウンと安全は直接関係ない。
 というより、普通は、無駄を省けば、安全性は高まる可能性がある。コストダウンが安全を低下させる訳でない。

 重要なのは、どこまで品質を担保すれば安全かを本気に検討することである。常識で考えれば、本気になってコストダウンを実現しようと考える企業の方が安全だと思うのだが、逆の意見がまかり通っている。
 実務家なら、コストダウンができることがわかっていても動かない企業は、安全性も余り考えていないと判断する。マネジメント能力が劣る企業を危険と見なすのである。
 適当に、たまたまコストダウンを図ったりする企業の方が、重大事故を発生させる可能性は高いと判断するのだ。

 安全性はコストダウンの問題ではなく、企業経営の姿勢の問題である。合理的思考でコストダウンを徹底して、事業の競争力向上を図っている企業の製品なら、より安心と見るべきである。
 もともと、コストダウンは消費者にとってもあり難い筈である。

 リコールの数に関しても、単純に安全性を結びつけるような論理は避けるべきである。
 技術進歩に伴って、新しい部品が投入されれば、問題が発生する可能性は高まる。問題ゼロはあり得まい。これを避けたいのなら、新しいことに取り組まないことになる。そのような企業の製品を信頼する人がいるとは思えない。
 要は、重大問題が発生しないように、その前に気付いて、100%対処することを目指しているのがリコールの仕組みなのだ。

 従って、イノベーティブな企業が、リコールが少ないとは言えない。
 リコールが多いのは、問題を早めに発見する能力が高いことを意味するかもしれないからだ。

 そもそも、メーカーがリコールを嫌がっていると決めつける態度は、そろそろ止めるべきだろう。
 イノベーティブな企業なら、喜んでリコール発表するようになる筈だ。

 活発なリコール活動は、自社の顧客に接する機会が得られることでもある。これはメーカーにとってはマイナスとは限らない。
 顧客との接触を通じて、より高い信頼を勝ちとれるかもしれないし、その場で様々なニーズを掘り起こすこともできるかもしれない。ビジネスチャンスである。


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