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2004.7.13
 
 


メルセデスの不調のもと…

 欧州(EU15+EFTA3ヶ国)の自動車市場が低迷している。2004年5月の新車登録台数は対前年比+1.2%にすぎなかった。最大のドイツ市場が大幅なマイナスを記録したからである。
欧州の新車登録台数
(2004年5月)
Source: ACEA
対前年
伸び率
10%以上
ジャガー
大宇
起亜
現代
スマート
ボルボ
ランチア
スズキ
マツダ
BMW
規模(台数)
10万台以上 ルノー
フォルクスワーゲン
オペル
フォード
5万台以上 プジョー
シトロエン
フィアット
メルセデス
トヨタ
3万台以上 アウディ
BMW
セアト
日産
1万台以上 現代
ボルボ
シュコダ
マツダ
ホンダ
大宇
アルファロメオ
スズキ
スマート
起亜

 お蔭で、メルセデスは大きなマイナスになった。
 ところが、ドイツメーカーであっても、BMWは好調である。
 又、韓国車やマツダ、スズキも大きく伸びている。ボルボやジャガーも好調だ。

 メルセデスの全世界での乗用車販売台数は2002年にピークだったから、多少の落ち込みは当然とも言えるが、他社と比べると、衰退の印象は否めまい。

 これを見ると、ダイムラーの戦略は機能していないのかもしれない。
 一時多角化を試みたが、結局のところ、自動車事業集中方針に戻った。そして、世界に冠たるメガ企業になるとの方針を設定した。自動車産業の環境を考えると、この方針には説得性があったが、今の状況では、実が伴っていないと言わざるを得まい。

 もともと、メルセデスは、自動車とは「こうあるべき」との思想をベースにして、高品質な製品を作るモノ作りメーカーだった。当然、大量生産はできかねるが、商品価値に見合った価格で販売することができるから、リーズナブルな利益を確保してきたと言える。
 例えば、シート材もウレタンフォームでなく、ホースヘアーを用いていた位である。生産性は二の次だったと見てよい。

 メガ企業を志向するなら、この体質を一気に転換せざるを得ない。マジョリティに合わせた普及品の大量生産を狙うか、商品ラインの幅を広げて、高価格セグメントで圧倒的なリーダーとなるしか考えられないからである。
 どちらにしても、高品質の車作りに徹してきた企業にはハードルが高い方針である。
 と言うのは、今までと、知恵を生み出す構造が変わるからである。

 そもそもが、欧州では、日本企業のようなフルライン志向は稀だ。それぞれの企業が独特のテーストの車作りに励んできた。こうした産業では、単純な統合化だけではメリットが得られにくいのである。

 又、ブランド力で一気にシェア向上という策も無理がある。
 車は宝飾品とは違うからだ。見た目のデザインだけで選定されることはないから、ベンツのマークだけでの顧客獲得には限界がある。
 運転感覚、居住性、デザインセンスがすぐれているマツダ車やジャガーが伸びているように、顧客はイメージではなく、本質的な価値が実感できるものを選択している。

 成熟市場では、こうした価値を低コストで実現できる、技術マネジメントに長けた企業が勝利することになりそうだ。


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