→INDEX ■■■ 曼荼羅を知る [2019.2.17] ■■■ 法界 文殊菩薩 法界曼荼羅と呼ばれる図絵がある。 小生は、円と正方形のコンンポジションが生み出す風景の印象からすると、デザイン的によく考えられているように思える。その辺りの意味は後述しよう。 ともあれ、「法界曼荼羅」は所作→行→瑜伽(yoga)と進展してきた密教の完成形を目指して創られたのであろう。 胎蔵曼荼羅、金剛界曼荼羅よりかなり後に創出したものではないかと思うが、情報は限られているのでなんともいえない。 ネパール高原に住むネワール族の仏教寺院に残存しているものだが、線刻の小さな図絵が数種あるのみのようだが、精緻な出来栄えであるし、曼荼羅台があるから例外的ではなく儀礼としてその地に確立していたことは間違いなさそう。 何と言っても、その特徴は、中央は金剛界曼荼羅とソックリに見えるが、五如来の主尊は大日如来ではなく文殊菩薩という点。 ★法界語自在文殊菩薩(主尊) ●四如来 Ⓦ阿弥陀 Ⓝ不空成就 Ⓔ阿閦 Ⓢ宝生 文殊菩薩は胎蔵曼荼羅の釈迦院と同じように●八頂佛に囲まれており、他の四如来は金剛曼荼羅と同じように●十六大菩薩に囲まれている。 (文殊菩薩は胎蔵曼荼羅の中心部中台八葉院に登場するだけでなく、釈迦院の上の文殊院[→]の主尊であり、観自在菩薩と普賢菩薩を侍尊としている。) 4重構造のものもある。・・・ ○○○○○○○○○Ⓢ←Ⓦ→Ⓝ ┌──────────◆──────────┐ │■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■│ │■┌────────◆────────┐■│ │■│◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎│■│ │■│◎┌──────◆──────┐◎│■│ │■│◎│●■■■■■■■■■■■●│◎│■│ │■│◎│■┌────●────┐■│◎│■│ │■│◎│■│○○○●○●○○○│■│◎│■│ │■│◎│■│○●○○●○○●○│■│◎│■│ │■│◎│■│○○○●○●○○○│■│◎│■│ │■│◎│■│●○●●●●●○●│■│◎│■│ ◆■◆◎◆■●○●○●★●○●○●■◆◎◆■◆ │■│◎│■│●○●●●●●○●│■│◎│■│ │■│◎│■│○○○●○●○○○│■│◎│■│ │■│◎│■│○●○○●○○●○│■│◎│■│ │■│◎│■│○○○●○●○○○│■│◎│■│ │■│◎│■└────●────┘■│◎│■│ │■│◎│●■■■■■■■■■■■●│◎│■│ │■│◎└──────◆──────┘◎│■│ │■│◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎│■│ │■└────────◆────────┘■│ │■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■│ └──────────◆──────────┘ ○○○○○○○○○Ⓢ←Ⓔ→Ⓝ 《第1重》 主尊の周囲は頂佛のようだ。 ●八頂佛 大転輪仏頂 光聚仏頂 無量声仏頂 白傘蓋仏頂 勝仏頂転輪 最勝仏頂転輪 高仏頂 摧砕仏頂 如来の侍尊は金剛界曼荼羅と同じようだが、その位置は東西南北ではなく、その中間に配置されている。位置はどうなっているかわからないが、登場尊は同じだと思われる。 ●十六大金剛菩薩@阿弥陀如来 語…舌中三鈷杵 因…輪宝 法…蓮華独鈷杵 利…金剛剣 ●十六大金剛菩薩@宝生如来 幢…幢幡上三弁宝珠 宝…三弁宝珠 光…日輪 笑…笑口葉+横金剛杵 ●十六大金剛菩薩@不空成就如来 護…甲冑三鈷杵 拳…二拳弾指 牙…三鈷牙形 業…十字金剛杵 ●十六大金剛菩薩@阿閦如来 薩捶…十字五鈷杵 王…双立金剛鉤 喜…二拳弾指 愛…双立三鈷杵 "金剛菩薩"としての供養妃は仏母尊に変更。 ●四仏母 仏眼仏母…胎蔵曼荼羅遍知院 白衣母/白処尊菩薩…胎蔵曼荼羅観音院 多母/忙莽雞菩薩 救度仏母/多羅菩薩…胎蔵曼荼羅観音院 ●四門護/四摂 金剛菩薩 鎖…鎖輪三鈷杵 鈴…五鈷杵 鉤…鉤形三鈷杵 索…索頭上独鈷杵 《第2重》 すべて女尊。 ■ 十二女尊 Ⓦ十二自在 Ⓝ十二陀羅尼 Ⓔ十二地 Ⓢ十二波羅蜜 4隅に供養妃。 ●四供養妃 金剛菩薩(内側) 鬘…三鈷縄(華鬘) 歌…六弦三鈷箜篌 舞…十字金剛杵 嬉…若干屈折三鈷杵 門には無碍女。 ◆四無碍女 法 義 詞 弁 《第3重》 多分金剛界曼荼羅に対応しているのだろう。・・・ ◎賢劫十六大菩薩 Ⓦ 無量光…光明 光網…羅網 賢護…賢瓶 月光…半月 Ⓝ 無尽慧…梵篋 弁積/文殊…五色雲 金剛蔵…独鈷四井字 普賢…剣 Ⓔ 慈氏/弥勒…群持 不空見…独鈷杵(両脇に眼) 滅悪趣…梵篋 除憂闇…無憂樹枝 Ⓢ 香象…鉢器 大精進…独鈷戟 金剛幢/虚空蔵…三弁宝珠 智幢…如意智幢 《第4重》 胎蔵曼荼羅外金剛部院の諸尊が並んでいるようだが、金剛界曼荼羅では以下には対応していそう。・・・ ■二十天 Ⓦ 羅刹…棒上火炎 風…幢幡上火炎宝 金剛衣…《象頭像》⇒弓箭 火…《仙人形》⇒三角火炎 毘沙門…《冠装着》⇒宝棒 Ⓝ 金剛面…《猪頭像》⇒三鈷鉤 炎摩…人頭棒 調伏…《象頭像》⇒三鈷剣 毘那夜迦…《象頭像》⇒歓喜丸 水…龍索 Ⓔ 那羅延…宝輪 俱摩羅…三鈷鈴 金剛摧…傘蓋 梵…紅蓮華 帝釈…《冠装着》⇒独鈷杵 Ⓢ 日…日輪 月…半月綸 金剛食…《象頭像》⇒華鬘 彗星…棒上火炎 熒惑…火聚 ◆ Ⓦ伐楼拿/ヴァルナ Ⓝ俱毗羅/クベーラ Ⓔ因陀羅/インドラ Ⓢ閻摩/ヤマ 流石、文殊の智慧の曼荼羅であり、平面図ではあるものの立体感を生み出すように描かれている。 上記の図は、尊像の全体像を知るためのポンチ絵であるからわかりにくいが、要するに中央に楼閣があり、如来を中心に菩薩が存在する状況がわかる。その楼閣の周囲にも、尊がズラリ。・・・このように描いては意味が薄れてしまうか。 と言うのは、平面図であるから、どうしても上空から俯瞰的に眺めてしまうからだ。密教の本質を考えると、これは拙い。中央の座から周囲に散らばる尊像の存在を確認しながら、全体を見渡している自分を瞑想してこその曼荼羅なのだと思う。 唐代の書「酉陽雑俎」のここらの薀蓄話を読んでいて感じたからそう思うのだが、須弥山を観念すし、その詳細を頭に思え描くことこそが、宇宙の全体像を概念的に把握することに他ならないのである。もちろん、仏教徒にとっては、と言う大前提ありき。 須弥山はソコ存在そ、その造成者はいない。そして、その須弥山風景とは釈尊の直観で観た図絵に他ならない。従って、曼荼羅とは、釈尊の宇宙観の象徴そのものなのである。 曼荼羅を眺めれば、誰だろうと、宇宙の真相を知ることが可能とも言える訳だ。宗教的な言い回しなら、曼荼羅で観想し仏陀の境地に迫ることができれば、その智慧を頂戴することができる筈となろう。 (参照: -ご注意- 尊名や配置形態はママ引用ではありません。) 特別展「マンダラ ─ チベット・ネパールの仏たち」参考資料:法界マンダラの白描 @ 国立民族学博物館 立川 武蔵:「ネワール法界マンダラ図像資料」国立民族学博物館研究報告23(4) 1999年 (C) 2019 RandDManagement.com →HOME |