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■■■ 本を読んで [2015.7.31] ■■■

英語詩の観賞障壁はとてつもなく高い

1957年ドイツ生まれの、現代詩評論家(他:6冊の詩集,翻訳多数,フロリダ大で教鞭)が執筆した本に目を通してみた。
浅学故、どういう方か知らないが、"I don't own a TV and don't really approve of seeing films except in cinemas."といった生活らしいので、それなら時間を割く価値ありと踏んだ訳。
"Is There a Vespa?: An Interview with Michael Hofmann December 4, 2014" by Jack Livings The Paris Review

このような本を読もうかと考えた背景には、活字中毒者として、英語の現代詩にも触れてみたいと常々思っていることもある。まあ、実力不相応な、見果てぬ夢であることはわかってはいるものの。

なんといっても、宣伝文句が、ズフの素人を釣る。・・・
英語現代詩分野で、"What to read, why to think, & how to like"の旅に誘う本となれば惹かれる。英語詩など、古典的なもの以外手が出せないでいるから尚更。
しかも、こんなことが書いてある。・・・
"This book is a sort of baroque convenience, a vade mecum, a few more connections, a few more lines, a further wrinkle of mapping."

漢詩なら、知らない漢字や熟語がところどころにあっても、なんとなく感じがつかめる。わからない部分の辞書翻訳を見れば、中身はかなりの程度想像がつく。実際は、誤解も多いから、観賞どころか、読むというレベルにも達していないが、それはそれで結構愉しいもの。
同じようなことが、英語の詩でもできるとよいのだが、これが途方もない位難しい。
わからん単語があるとほとんどの場合アウトだからだ。しかも、辞書が役に立つとは限らないとくる。
従って、単語がわかっても、なにが面白いのか見当もつかなかったり。しかも、韻やリズム感の嬉しさもわからんし。

当然ながら、ココがイイんだという解説本から入りたくなる。しかし、そのような目的に合うような本が見つからない。まあ、そんな市場がある訳ないか。

そんなこともあり、この本を選んだ次第。

間違えてはこまるが、小生はこの分野、完璧な門外漢。
とりあげている詩人ですぐに名前がわかったのは、Elizabeth Bishop[1911-1978]だけ。もちろん、名前以外になにも知らない。
「The poets' poets' poet」とされているそうだが。

それでどうなったかだが、結果はご想像におまかせしよう。

ただ、1つ位は、どう感じたか書いておこうか。

当たり前といえば、当たり前の話だが、"Behind the Lines"の重要性。
3行Haikuが取り上げられていたのである。

先ず、この3行詩のタイトルだが、「1.1.87」。政治でもないだろうし、新年明けましておめでとうの筈もない訳で。
この詩人の母が1984年に亡くなり、1986年には父も無くなったのだそうである。
ソリャ、註でもなければわからん。
しかし、これが掲載されている本では、詩がオーバーラップしているのが特徴なのだそうである。魚の鱗の如く、あるいは、屋根を葺く瓦の如くに。

成程。
だからこそ、3行目の"With my father's stick."が生きてくる訳か。
そもそも、唐突に始まる"Dangerous pavement"の感覚が掴めないのである。何故にステッキを持ってまでそんな道を歩かねばならぬのかが。
両者の関連がわからぬ。

と言うのは、2行目が"But,"で始まるからだ。
しかも"this year"限定話.
単に、"I face the ice."というだけなのに。
うーむ。
熾烈な命を掛けた戦いが始まっているということなのだろうか。

コリャ無理だ。小生の能力をはるかに超える。とても、観賞どころではない。

ちょっと背伸びをしてみたくなったのは、たまには、その昔の洋書ワクワク気分でという気になったから。
と言うのは、文芸書ジャンルの本屋さんではないが、50年間続いた嶋田洋書が秋分の日に閉店するから。小生はたいした購買層ではなく、散歩ついでに時々立ち寄っていたにすぎないが。いつか、その時は来るとは思っていたが寂しいかぎり。
   「本屋文化の終焉」[2003.7.26 ]

(本) Hofmann, Michael:「 Where Have You Been?: Selected Essays」 Farrar, Straus and Giroux, N.Y. 2014
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