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■■■ 本を読んで [2015.9.25] ■■■

でんでん虫図鑑を眺めて

"それぞれの地域でよく見られるカタツムリを一覧にし、なるべく簡単に名前が調べられるように工夫"した本が出たので、観察することにした。小生の目から見れば、どれもこれも単なるデンデン虫。(もちろん、殻無しのナメクジ、蓋付きの山タニシ、貝殻の形が特殊なキセル、アズキ、ミミはカタツムリではあるが、デンデン虫ではない。)いくら見てもそうたいしてかわらない感じ。
しかし、角を出して歩いている一瞬をとらえた写真ばかりなので見飽きない。その辺りは、ヒトそれぞれであることは言うまでもないが。

小学生の頃、飼って遊んだ覚えがある。それから何年たったのだろうと、ノスタルジーが湧くのでつい見とれてしまうのであろうか。当時は、外に出ればどこにでも居たような気がするが、今はどうなのだろう。少なくともほとんどの公園には居ないことは間違いない。燦々と陽が差し込む環境になっており、ジメジメした場所などどこにもないからだ。マンションの植え込みなら、湿気が多い一画があるかもとは思うが。そんな状況で、都会ではたしてデンデン虫を見つけることができるのだろうか。もっとも、そんな場所があっても、そこをウロウロする子供などいないか。ご近所の子供に下手に質問すれば、変質者として通報されかねないご時世だから、実際のところはよくわからないが。

本の話からズレたので戻そう。

今の今まで知らなかったが、夜行性動物だという。ナメクジもデンデン虫も雨が降っていたり、その後の葉が濡れている時に這い回るものとばかり思っていたからだ。
そんな生態だから、北海道で採集するとなると、ほぼ命がけらしい。それほど大変だとは露知らず。
個人的思い込み的"常識"を覆して頂いたのは、それだけではない。下記は、小生が勝手に分岐を変形し、あてずっぽうに漢字化した名前の系統図だが、このようなものが分子生物学的検討結果として掲載されているのでビックリ。
("左巻マイマイ"とは名称であり、もちろん、左巻き[]である。)
┌─■青森マイマイ
┌┴─■左巻マイマイ
┌┤┌┬■左巻マイマイ
│└┤└右巻発生せず.
└─マイマイ
┌┤┌┬■左巻マイマイ
│└─┤└右巻発生せず.
└─舳倉マイマイ
┌┤┌─■青森マイマイ
│└─┬┴─■左巻マイマイ
└──■左巻マイマイ
┌┤┌─■青森マイマイ
│├──┬┴─■左巻マイマイ
││└──■左巻マイマイ
│└────┬■左巻マイマイ
┌┤右巻発生せず.
┌┤└──────深山左巻マイマイ
│├───────茂尾,那智,牛力,平マイマイ
│├───────越後,大滝,江村マイマイ
│├───────道奥マイマイ
│├───────黒岩,白山マイマイ
│└───────陸奥左巻マイマイ

└─■右巻のマイマイ類

系統図に同じ名前が登場するのである。それが意味するところは、ド素人の上、分類学の基礎知識を欠くので、さっぱりわからない。この図から伝えたいことは、2点あることだけはわかったが、かえってナンダカネ状態に陥ってしまった。
 ・右巻が元祖。そこから左巻が発生。
   遺伝子的には一ヶ所の変異とされる。
 ・左巻の「左巻マイマイ」から右巻の「青森マイマイ」が派生。
   退化ではなく元に戻ったのだろうか。
この辺りは、解説してもらってもどうせ理解できそうにないから、どうでもよい問題。

小生的な興味としては種の進化。いわばガラパゴスの日本版である。
ガラパゴスは海で孤立してしまった故に、各島毎に種が独自進化を遂げたということで有名だが、日本のカタツムリも同じことがいえよう。食糧にしていなかったから、ヒトが移動させていないと思われるから、地方毎に独自に進化しておかしくなかろう。この本の著者によれば、それこそ山一つがカタツムリにとっては巨大な障壁だそうだし。

ところが残念なことに、"似た者同士が多く、外部形態での同定は難しい"とのこと。確かに、どれも同じに見える。成程、それで「同("おなじ/similaris")マイマイ科」という名称になっているのか。
この科に並んでいる貝殻を眺めると、それなりに違いが見えてはくるが、なんといってもその特徴は地名だらけという点。ローカルな分布であることがよくわかる。・・・
神戸,東京孔大臍,首里,(奄美)大島,四国乙女,九州,アポイ(岳),蝦夷,沖縄薄皮,筑紫,高千穂,阿波,出雲,播磨,瀬戸内,山陰,白山,敦賀,伊吹黒岩,能登,那智,大山(@鳥取),下田,箱根,札幌,常陸,尾瀬,青森.

そういえば、遠藤貝類博物館@真鶴にマイマイの素敵なコレクションがあった。地図上で分布を示してくれたら面白いのだが。
   「和名の由来展」[2015.8.12]

逆に、"全国屈指のかたつむり不毛の地"も存在することが知られている。流石に、「カタツムリハンドブック」にはそんな話は記載していないようだが。でも、そんな地域でも・・・驚異の新種! アキラマイマイ〜「晴れの国おかやま」を象徴するかたつむり〜@国立科学博物館+岡山大学[2015.1.13]
狭い地域での分布を調べると、さらに色々なことがわかってくるのである。地域毎の風土の違いが、そこに棲むでんでん虫の姿から推定できたりして。

おっと、ここで終えると拙いか。
細かな地域毎の種が集まったものがオナジマイマイ科と誤解を与えてしまうから。広域分布しているマイマイもある。それが左巻。しかし、上記の分岐図からすれば、単一種に見えるだけかも。分子生物学的には、地域毎に違うが、現時点ではいくら調べても差違が見つからないと解釈すべきかも。

そうそう、貝殻をもたないが陸棲巻貝とされる蛞蝓[ナメクジ]も広域分布だ。地域毎の変異と言っても、裸になってしまうと限界があろう。
ところが不思議なことがある。
どこでも見かける4〜5cmタイプの分布は南が九州で北は本州までかと思いきや、北海道にも棲息しているからだ。蛞蝓にブラキストン線(津軽海峡)は無いのである。津軽海峡が無かった時代から進化していないということか。
一方、山地に住む種は、沖縄の7cmの山原蛞蝓と20cmにもなる本土に棲む山蛞蝓。沖縄-九州間に分布境界線がある訳だ。北海道では山地タイプは発見されていないから、津軽海峡ができてから生まれたということか。
もっとも、ナメクジをヒトが運んでくることはないというのも勝手な思い込みかも知れない。外国産のカタツムリも来日しているそうだから。土着カタツムリが息絶えてしまった場所に、そんな過酷な環境に耐えられる種を持ち込もうと考える人がいるのだろう。

「舞え舞え→マイマイ」の話を書いていて、ついつい思い出して書いてみただけ。
   「日本語の美しさの考え方」[2015.9.19]

(本) 武田晋一[写真]+西浩孝[解説]:「カタツムリハンドブック」文一総合出版 2015年7月27日
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