表紙 目次 | ■■■ 本を読んで [2016.2.15] ■■■ 25大化石の選定眼(うち哺乳類) 「モンスター爬虫類の化石」[→]が終われば、次は爬虫類哺乳類から始まる。 ●哺乳類の化石● 三畳紀に入り、単弓類(1ッ穴)のなかから哺乳類型爬虫類が生まれたというのが現時点で一番説得力があるシナリオ。 その辺りの分岐は分類学的には以下のようになっているようだ。単なる単語が並ぶだけで、絵を見たところでチンプンカンプンである。 この辺りの最古の化石は「アーケオシリス[オファコドン類]」で、大きさ的に頂点を極めたのは「ハプトドゥス」らしい。 ┌────エオシリス類,カセア類 ┤ │┌───エダフォサウルス類,オファコドン類 └┤┌──クテノラキルス類 ┼└┤┌─ハプトドゥス類 ┼┼└┤┌スフェナコドン類,テトラケラトプス類 ┼┼┼└┤↑<盤竜類>[すべて絶滅] ┼┼┼┼└─<獣弓類> ⇒ <哺乳類> 盤竜類も獣弓類もどこが大きく違うのかは知らないが、初哺乳類とみなせそうな化石を選ぶのだから獣弓目からとなる。 ただ、そう簡単ではなさそうである。そもそも、単弓類(1ッ穴)などという奇妙な分類用語が使われる理由は「顎」に注目しているから。結果、アーチ[弓]型骨とその動きに関係する穴で同類か否かを判別したりすることになる。 しかし、どうとでもとれる化石がほんの一部なら、そんな判別が奏功するが、そんな時代は終わった。換言すれば、骨で哺乳類の祖とは簡単に認定はできなくなったということ。 ・・・と見ていたら、定説があるようだ。 -----祖哺乳動物 【19】「トリナクソドン」(Thrinaxodon) 猫似の動物だ。はたして、これは鱗類でなく毛類と言えるのだろうか。少なくとも、哺乳類とは言えそうにないようだ。 小生は、胎盤をもつ世界最古の真獣類「ジュラマイア」にしたいが。 → NHK「生命進化プロジェクト」〜古代生物・ジュラマイア”ジュラ紀の母!ほ乳類の母!”[2015.06.23UP] モンスター爬虫類に続くのだから、巨大哺乳類にしたいのなら鯨だ。ただ、水棲なので哺乳類の主流から外れ過ぎ。その辺りを取り上げるのも意味があるとはいえ、全体の流れからいえば枝葉だろう。 -----祖鯨 【20】「アンブロケトゥス」(Ambulocetus) 鯨は偶蹄類の近縁で、「河馬、絶滅した古鯨、歯鯨、髭鯨」で一群を形成していると教わることになっている。 鰓呼吸でないし、尾鰭の動きが魚と違い左右でなく、上下であることからも、陸から海に進出した哺乳類であることがわかると聞かされると成程となるものの、河馬が鯨に似ているとはいいかねる。化石で祖先の姿をみせてもらわねば。と言うことになると水陸両棲の哺乳類化石の出番。絶滅種は4グループにまとまるようで、パキケトゥス[5,300万年前,最初に登場],アンブロケトゥス[5,000万年前に登場],レミングトノケトゥス.プロトケトゥス,バシロサウルス[最期の絶滅種]。このなかでは、アンブロケトゥスが一般受けしやすかろう。後足には水掻きがあるし、河馬鰐といった印象が強いからだ。そんなこともあるのか、この名前は「歩く鯨」なのだそうナ。 この本の著者は、四肢を持つ水棲哺乳類化石には興味津々のようでもう一つ加えている。半水棲という生態は珍しいものの推論にすぎず、全歴史の25大に入れる重要化石とはとうてい思えない。書籍販売上の戦術的な理由や、数合わせの埋め草として最適ということでか。 -----"歩くマナティ" 【21】「ペゾシーレン」(Pezosiren) 最初期の、いわば、歩くジュゴン。ジャマイカ出土化石。観光業的にはマナティの方がうけるようだが。 カリブ的気候とは縁遠い気候の住民からすれば、ジュゴン化石なら、寒冷適応進化ということでベーリング海の大型種、ステラー海牛の方を選びたくなる。それならジュゴンでなくてもよい訳だが。 -----祖馬 【22】「エオヒップス/曙馬」(Eohippus) 馬の進化は教科書的。情報量も豊富で良質な化石も揃っている。しかし、江南や倭の感覚からすれば、祖と現存種の違いは些細なもの。・・・ ヒラコテリウム[5200万年前以前]→オロヒップス[5000万年前]→エピヒップス[4700万年前]→メソヒップス[4000万年前]→ミオヒップス[3600万年前]→---- 馬やジュゴンの化石に人気があるとは思えないから、なんだ、著者のお好みオムニバス本かという気分に陥ってしまう。 絶滅種ということなら、サーベルタイガー[スミドロン]とか、ヒトの歴史に係る氷期動物化石(マンモス、ケブカサイ、オオツノジカ)の方が素直。もっとも、この辺りの話は一般書に色々書かれているから読もうという気になる人はすくなかろうが。 流石に、この手の話を続ける訳にいかなくなったか、モンスターとは言えないまでも、巨大哺乳類を出してきた。絶滅間違いなしの現存種の古代化石である。 これもナンダカナ感は否めない。 哺乳類は小さい上に恒温動物だったからこそ生き残れたともいえるからだ。 代謝効率向上と戦闘能力増大を目指して巨大化にひた走るのではなく、体と社会のマネジメントの仕組みの高度化でのしあがってきた動物のように思えるからでもある。その辺りが全く感じられない巨大生物話はどうかと思う。 -----史上最大陸棲哺乳類 【23】「パラケラテリウム」(Paraceratherium) 巨大哺乳類というと、どうしても氷期のマンモスの姿が目に浮かぶが、最大陸棲となると犀である。古い本だと、インドリコテリウムと記載されているが同一。首を伸ばせば高さ7mで、重さ20tに達したかも知れぬという。 ちなみに、象ではデイノテリウムが巨大とされるらしいが、肩高4mで体長5mと、マンモスとそれほど変わらない。ただ、牙長は考慮されていない。 いよいよ残る枠は2ッ。 ヒトしかなかろう。 ●ヒト進化史の化石 と言っても、それぞれどの種を選ぶべきかは結構悩ましい。 最古のヒトとは何を意味するかは自明でもないからだ。 -----直立歩行動物化石 【24】「サヘラントロプス」(Sahelanthropus) 600〜700万年前の化石で、俗称「Toumaï[生命の希望]」。最古のヒトと見なされつつあるのだろう。しかし、直立歩行動物とされる理由は、直接的な証拠からでなく、頭の骨の形状の違いから想定した理屈にすぎない。このことは、チンパンジーと分岐した直後ではなく、直前の可能性も否定できない。しかも、後続がどうなっているかは今もってさっぱり話が聞こえてこない。まだまだ、紆余曲折ありの領域である。 ということでラストOne。 これは、アウストラロピテクス族華奢型とホモ族最古のハビリス原人辺りの化石を選ぶしかなかろう。と言うか、説明が逆か。 素晴らしい保存状態の約320万年前の骨格化石がトリ。1974年のことである。"Lucy in the Sky with Diamonds"で掉尾を飾ろうとのいかにも化石屋さんらしい選択。 -----"ルーシー" 【25】「アウストラロピテクス・アファレンシス」(Australopithecus afarensis) 390〜290万年前の化石。 最後に、著者に拍手で締めくくろう。 (本) Donald R. Prothero: "The Story of Life in 25 Fossils - Tales of Intrepid Fossil Hunters and the Wonders of Evolution" Columbia Univ. Pr. 2015 本を読んで−INDEX >>> HOME>>> (C) 2016 RandDManagement.com |