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2003.10.15 |
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「なんば」と六本木の違い…「なんばパークス」をざっと眺めてみた。面白そうだし、一度は行きたくなるショッピングモールだ、しかし、それが何故大阪ミナミなのかは理解できない、との印象を述べた。→ 「なんばパークス」は脱浪花 「なんばパークス」を取り上げたのは、実は、これだけの理由ではない。 設計者を見て、「唖然」としたことが大きい。設計(協力)が米国企業 The Jerde Partnership International(JPI)なのだ。 [JPIは1984ロサンゼルス・オリンピックで有名になった。Horton PlazaやMall of Americaで成功を収めており、集客施設では抜群の力量を誇る。但し、米国市場は飽和していると思われる。] (http://www.jerde.com/go/to/results1) 米国企業を施設設計に使うのだから、斬新な発想を取り入れようとの試み、といえないこともない。 しかし、JPIはすでに他のプロジェクトで実績を重ねている企業だ。大規模プロジェクトの「キャナルシティ博多」と「六本木ヒルズ」での活躍が、特に有名だ。 外部から見れば、同じような施設を浪花に、という方針に映る。 しかし、「なんばパークス」と、「キャナルシティ博多」や「六本木ヒルズ」とは前提条件が全く違う。 両地域とも、開発エリアは広いし、普段から海外とのビジネス交流が行われている。本質的に国際性を兼ね備えているのだ。 従って、海外企業が、新しい街のコンセプト開発を担当しても違和感は無い。というより、このことが新しい文化を生み出す可能性が高い。 実際、「六本木ヒルズ」の場合、JPIに加え、高層ビル設計の世界のリーダーKohn Pedersen Fox Associates(KPF)や、インテリアでは世界的に定評があるConran & Partners(C&P)、美術館建築のGluckman Mayner Architectsを選定している。明かに国際都市の拠点としての魅力を打ち出そうとの意気込みが感じられる。 さらに、約2,000人もの居住人口が見込めるから、六本木型のインターナショナルな生活スタイルが生まれるかもしれない。 [六本木ヒルズ設計者] (http://www.mori.co.jp/business/roppongi/datasheet.html) ・低層複合商業施設(地上12階/地下3階):森ビル、三菱地所、JPI ・タワー(地上54階/地下6階)+グランドハイアット東京(地上21階/地下2階):森ビル、入江三宅設計事務所、KPF、JPI ・シネマコンプレックス(地上6階/地下2階):森ビル、KPF ・テレビ朝日放送センター(地上8階/地下3階):槇総合計画事務所(槇文彦) ・住宅A(地上6階/地下2階)BC(地上43階/地下2階)D(地上18階/地下2階):森ビル、日建ハウジングシステム、C&P、JPI ・オフィスビル(地上6階/地下1階)+寺院(地上2階/地下1階):森ビル、入江三宅設計事務所 ・備蓄倉庫(地上1階)+住宅関連施設(地上2階/地下1階):森ビル、日建ハウジングシステム しかし、「なんばパークス」には、このようなインターナショナル性は期待できまい。あくまでも、駅ビルと大型デパートのすぐ隣にあった狭い野球場の跡地利用施設なのである。このような場所の街作りに、海外の知恵が生かせるとは思えないのだが。 従って、東京の住民から見れば、「なんばパークス」は中途半端な施設に映る。 売るものが同じで、ウリになる地域特性もないのに、実力あるJPIに頼めば集客力ある商業施設を作ってくれるだろう、という安易な方針としか思えない。 もっとも、そうした姿勢は大阪だけではないようだ。 九州は凄い。既存モールがありながら、JPI頼りで、新しい施設作りに励んでいる。 ・「パークプレイス大分」 ・「リバーウォーク北九州」 首都圏でも同じようなものだ。 ・電通本社ビル/汐留アネックスビルにおける商業文化施設「カレッタ汐留」 ・川崎市映画街の複合エンターテインメント施設「ラ・チッタデッラ」 今や、日本全国、似たようなモノを売り、同じような食事を提供する商業施設ばかりである。特徴といえば、「仮想」街のコンセプトだけになりつつある。消費者は、本当に、このような文化を望んでいるのだろうか。 街とは、ライフスタイルに根ざしたものではないだろうか。そうでなければ軽薄な文化であり、根無し草になってしまう。 「六本木ヒルズ」も新しいライフスタイルを作り出すから意味があると思う。「青山」の魅力も、街が持つ独特なデザイン文化性(ブランドショップ、ビューティサロン、インテリア・クラフト・骨董店等の複合)から生まれている。 その観点から見ると、「なんばパークス」は全く理解できない。 大阪の代表的街になる、とは信じ難いのである。東京人から見れば、長さ日本一と言われる「天神橋筋商店街」の方が余程大阪的だし、迫力もある。交通機関が集中する都会の真ん中であるにもかかわらず、雑多なオフィスと住居が混じる町だ。東京には、これ程のエネルギーを持つ街は失われており、こうした力こそが地域文化だと思う。 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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