↑ トップ頁へ |
2008.2.20 |
|
|
スポーツで見る幻想の国民国家状況…Steven Spielbergが北京五輪の芸術アドバイザーを辞退するとのニュースが流れた。(1)スーダンでの中国政府の対応を批判してのこと。ダルフール問題への対処は、五輪などより重要であるとの意思表明である。現在の世界の経済状況を考えると、小さな声で終わりそうだが。 そういえば、少し前までは、「中東の笛」話が持ちきり状態。 どうも韓国が動いた結果らしい。そして、後のお金の問題などのゴタゴタはほとんど日本に押し付けたそうだ。(2)いかにもありそうなこと。 それはそうと、ハンドボールがこれほど話題になったのは初めて。全く興味を持っていない人の関心まで引いたのだから、まあ、多少の出費でもプラスだろう。なにせ、日本が強い訳でもないのに、予選がテレビ放映までされ、応援者が試合場に大挙して訪れたのである。 スポーツは国民意識を盛り上げる魔物の存在であることがよくわかる。 民主主義国でさえこの盛り上がりなのだから、中東にかかわらず、独裁国がこれを利用しようとしない訳がない。 → 「2008年オリンピックの見所 」 (2007年12月20日) しかし、選手にとっては、スポーツ競技大会に出場でき、素晴らしい成績を上げたい一心だろう。 スポーツでは、いつもその辺りで齟齬が生じる。 などと考えてしまったのは、2008年1月、「Nagasu Wins the Title.」(3)のニュースが流れたから。米国では若い選手が育っており、激烈な競争状態。 そのなかで、次世代のフィギュア女王と目されるのが(4)14歳のMirai NAGASEさん。 日本のスポーツ新聞は、“両親が日本人の14歳、長洲未来が・・優勝”(5)と言った調子の記事内容だし、一般紙になると、見出しで、両親が日本人と強調することで盛り上げを図っている。(6) 両親が日本人なので、日本国籍取得の権利があり、是非日本代表になって欲しいというキャンペーンをはっているのだろう。 だが、2007年10月6日に新横浜プリンスホテルスケートセンターで開催された日米対抗戦で米国チームで登場したし、(7) “Thank you to all the Japanese fans who gave Team USA their support!”(8)と自ら語っており、そんな気は無さそうに見えるが。 そんな状況で、中学生に対して、非公式とはいえ、日本からの五輪出場を打診したそうである。(9) まあ、何としても勝ちたいのは、どの国でも同じだからどうということもない動きだが、普段なら、ここぞとばかり、青少年の心を傷つけるな論を仕掛ける人達が黙っているところを見ると、世間に長洲さん期待感が満ち溢れているということのようだ。 国籍と言えば、井上怜奈さんのように、逆に米国籍を取得した方もおられる。日本国籍離脱にもかかわらず、日本からの声援は絶えない。 度重なる苦労話の上に、素敵な恋物語もあるからだろう。・・・“Rena and John win Silver at the U.S. Championships. John proposes at center ice. Rena says "yes" ”(10) こんな状況を見ていると、“国民国家システムがうまく作動していかなくなっているのではないか”と考える人が増えて当然だろう。(11) 経済がグローバル化し、スポーツも経済活動に取り込まれれば当然の結果だが、国民意識はその動きにそう簡単には対応できないということであろう。 --- 参照 --- (1) “Spielberg in Darfur snub to China”BBC [2008.2.13] http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/7242016.stm (2) “【主張】中東の笛の教訓 「スポーツ外交官」育成を” MSN産経ニュース [2008.2.3] http://sankei.jp.msn.com/sports/other/080203/oth0802030247000-n1.htm (3) PAT BORZI: “In a Youth Movement, Nagasu Wins the Title” NewYorkTimes [2008.1.27] http://www.nytimes.com/2008/01/27/sports/othersports/27skate.html (4) “Competition Results Mirai NAGASU” http://www.isufs.org/bios/isufs_cr_00010220.htm (5) “初出場長洲未来が優勝/フィギュア” 日刊スポーツ新聞 [2008.1.27] http://www.nikkansports.com/sports/f-sp-tp0-20080127-312747.html (6) “全米フィギュア、両親日本人の長洲未来が初出場V” 読売新聞 [2008.1.27] http://www.yomiuri.co.jp/sports/winter/news/20080127-OYT1T00395.htm (7) http://www.tbs.co.jp/figureskate/skater/uw04.html (8) http://www.figureskatersonline.com/mirainagasu/journal2.htm (9) “異色のヒロイン誕生 両親が日本人の14歳、長洲” 朝日新聞 [2008.1.27] http://www.asahi.com/sports/update/0127/KYD200801270013.html (10) http://www.inoueandbaldwin.com/ (11) 中川真美: 「国籍変更するスポーツ選手とその理由」富山大学人文学部国際文化学科平成16年度卒業論文 http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/ir/sotsuken/2004/final/nakagawa-final.pdf (写真) (C) スポーツ素材屋 http://sports.kantaweb.com/ 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
(C) 1999-2008 RandDManagement.com |