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2007.12.20
 
 


2008年オリンピックの見所

 2004年8月7日、北京で行われたサッカー決勝戦後、優勝国の国歌演奏が侮辱され、公使が乗った大使館の外交用車が暴徒に襲われた。発展途上国の独裁政権がやりそうな古い手だ。
 一昔前なら、戦争勃発になりかねない事件である。
 「五輪では日本に限らず全世界に親切かつ友好的に対応する」そうだが。(1)

 だが、スポーツの祭典の役割とは、だいたいは国威掲揚で、友好などその隠れ蓑。
 そのことを本音で語ったのは、George Orwell。(2)
 “I am always amazed when I hear people saying that sport creates goodwill between the nations,”
 “ Even if one didn't know from concrete examples (the 1936 Olympic Games, for instance) that international sporting contests lead to orgies of hatred, one could deduce it from general principles.”

 こうした常識から言えば、北京オリンピックも1936年と同じようなもの。

 だが、今回は、一寸違うかも知れない。
 “Lenin meets YouTube.”がスローガンとして登場しているようなのである。(3)
 ご存知のように、レーニンは、共産党が前衛となって、帝国主義戦争を内乱に転化し、革命を成就すると高らかに宣言した。
 今度は、その前衛党が、インターネットで結ばれている世界から、民主化運動の脅威にさらされている。
 中央集権の専制政治組織は、それを防ぐための諜報活動に忙しいらしい。
 Blog記事をまとめた本を出版した日本の駐在新聞記者へ圧力をかけ、都合の悪いインターネット報道を自粛させようと動き始めている位であり、本気である。(4)

 何故、そうなるかといえば、“a nebulous swarm of foreign activists armed with BlackBerries”が2008年の北京を狙っているからだ。
 人権抑圧国家の実態を、2008年の北京現地から、世界中に宣伝しようということらしい。

 今や、中国国内には、6億台の携帯電話が使われている。その上、チャットやブログは当たり前。すでに、1億6,200万のインターネットユーザーを抱えているそうだ。
 これだけの目と口を監視し、YouTubeとつながらないようにできるだろうか。

 “The 2008 Olympic Games promise to be a great spectacle. And we will all be watching.”・・・その通り。

 --- 参照 ---
(1) 「アジアカップ2004 日本公使車両破損を北京市公安局が謝罪 アジア杯警備」 朝日新聞 [2004.8.9]
  http://www.asahi.com/sports/soccer-japan/asia-cup2004/TKY200408090059.html
(2) George Orwell: “The Sporting Spirit”
  http://www.george-orwell.org/The_Sporting_Spirit/0.html
(3) Moises Naim(editor in chief of FP): “The Battle of Beijing” Foreign Policy [Nov./Dec. 2007]
  http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=4000
(4) 北京趣聞博客(産経新聞中国総局 福島香織記者blog)「記者証が更新できない! 」 [2007年12月17日]
  http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/414434/

 --- 附記 ---
【Brzezinskiの米国の中東政策に関する意見を読んで、中国国内で民主化問題が発生でもすれば、現政権は舵取りができなくなる可能性があるのではないか、という気がしたので、書いてみた。】
Brzezinskiによれば、グローバルな政治・経済の不安定な動きに対して、中国は脆弱化しているという。
その政治姿勢は、“a status quo power”だそうである。パワーバランス現状維持派なのである。
Zbigniew Brzezinski: “A Partner For Dealing With Iran? The Lessons of U.S.-China Cooperation on Pyongyang” Washington Post [2007.11.30]
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/11/29/AR2007112901876.html
 (1) China's internal transformation makes it vulnerable to global political and economic instability.
   China is especially worried about the consequences of any major eruption of violence in the Persian Gulf.
 (2) the Chinese strongly advocate that in dealing with Iran the United States be guided by strategic patience.
北朝鮮の非核化が進んでいるのも、不安定化をもたらしかねない北朝鮮の強硬姿勢は、中国は大いにこまるからでもある。イランについても、同様。なにはともあれ、世界の大混乱を引き起こすから、米国・イランの衝突回避に動く訳だ。
どちらの国にしても、非核化は疑わしいとはいえ、その体面をとりつくり、両国を早急に世界の枠組みの中に引き戻せということ。そうすれば、中国は資源と兵器/工業製品取引で経済発展を狙えるからでもあるが。


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