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2008.4.10 |
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ナマズ食文化を考える…ナマズ料理の本、Stan Warren著“The World Best Catfish Cookbook”をお借りした。→ 「なまずの話」 (2008年3月7日 + 追記3月10日) 料理本としてのレシピの魅力というよりは、ナマズにまつわるさまざまな逸話が取り上げられており、それが料理のセンスとどこか微妙につながって、文化の香りがする。(文化度が高いということではない。) つまり、この本は、行間を読むのではなく、頁の裏を考える必要がある、と言ったところ。 レシピに関して言えば、食材や調味料バラエティが桁違いに多く盛り付けなどにも工夫をこらす「和」のセンスとはかなり違う。料理の特徴はこうまとめることができそうだ。 ・調理方法は、パン・フライ、グリル、オーブンの3種。 ・大きな身を大胆に使う。 ・粉はコーン・ミールだと雰囲気がでる。 ・揚油は調理油でよいが、油風味はバターかオリーブオイル。 ・玉葱やペッパーの微塵切りを加えるとよい。 ・塩・胡椒等で適当に味付け。 ・さっぱり感を出すために、レモン/ライム/パイナップル等の果汁を使う。 ・時折、香り付けにハーブを利用する。パセリ・オレガノやイタリアンハーブが好まれる。 この料理に登場するナマズはおおまかにいうと4種。(Channel, Blue[Whiteを含む], Flathead, Bullheads)意外と種類が少ない感じがするが、食べる気になる大きさで、釣れるのはこんなものということか。なかでは、Blueが巨大そうだから、これが好物の人が多いのではなかろうか。養殖ビジネス側は収益性で選ぶのだろうが、日本と違って、食材の細かなことにこだわらないだろうから、餌効率が良くて耐病性があるものが主流となっていると思う。 読んでいる途中で、ふと、この本、Catfishキャンペーンにあわせて、書き下ろされた力作ではないかという気になった。 米国は、ナマズには相当な思い入れがある。Mike Espy(1)米国農務長官の時代を覚えておられる方もあろう。政治家と言っても、ナマズ養殖で財を成したビジネスマンである。確か、このお陰で、米軍にナマズ料理が入った筈。流石、米国流と感心した覚えがある。 Wiki[US]で“National Catfish Day”を見たが、1987年にReagan大統領が始めた(2)とされており、調べてみるとNational Dayではなく、“Annual World Catfish Festival”(3)だった。 日本流に言えば、「四月の最初の土曜日は鯰日」となろう。ナマズ君のアート作品もある位で、2008年は33回目だから、本気で力を入れ続けていると見てよいだろう。 MISSISSIPPI州Humphreys CountyにあるBelzoni(4)の地場産業興しでもある。 いわく、“The Catfish Capital of the World”。町のマークは、△の中心にハート。 ここまで書けば、ナマズ産業の状況がおわかりになるだろう。 「デルタ」とは、米国の最貧地域の一つ。大規模な鯰養殖で雇用を生み出し、貧困からの脱出を図ってきた自負がある訳だ。(通称地名のデルタで、地学上でのミシシッピ川デルタではないと思う。) もともとは、ナマズとは、最下層の人々の食材だった。それを、嫌われていた泥臭さが出ないよう、清涼な水で養殖することでエコノミー食材化した。さらにファッショナブル化し、すべての人に食べてもらうべく頑張っている訳である。 これは簡単なことではない。ニューイングランド辺りのリベラル派でも、バス釣りを嫌っていたりするのが現実の社会だからだ。 そうした溝を乗り越えようというのが、ナマズ食文化発信の意義でもある。Warrenの本は、そうした流れの一つと言ってもよさそうだ。 一文がその心情を物語っている。 “It is a fish that is a friend of the poor, and one that will sacrifice itself in the interest of humanity.” ナマズ料理は、すでに米国南部の観光名物化している。(5) ナマズのフライに、付け合せとして、ハッシュパピー(6)(香辛料を効かせたコーンミールの揚げ玉葱パン)と揚げグリーントマト(おそらく、コールスローが一般的)というのが定番らしい。 コロンビアでも“Bagre Frito(Fried Catfish Steak)”を食べるそうだ。ただ、こちらは厚切り[3/4"]が特徴だとか。(7) と言うことで、とり急ぎ、拝借のお礼まで。 --- 参照 --- (1) The Mike Espy Collection [Mississippi State University] http://library.msstate.edu/content/templates/?a=1541&z=386 (2) Ronald Reagan: Proclamation 5672 -- National Catfish Day, 1987 June 25, 1987 (3) http://www.catfishcapitalonline.com/futuredates.htm http://www.catfishcapitalonline.com/festival01.htm (4) http://www.belzoni.com/ (5) Mississippi Souvenir Booklet TRADITIONS pp22 http://www.sos.state.ms.us/ed_pubs/Publications/Souvenir_Booklet/ 2007%20Souvenir%20Booklet%20updates/Mississippi%20Souvenir%20Booklet%20(Published%202007).pdf (6) History of Hushpuppies http://whatscookingamerica.net/Bread/Hushpuppies.htm (7) Jessica B. Harris: “Byond Gumbo”Simon & Schuster 2003, pp237 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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