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2015.1.1

未のお話

2015はの年。

は梢の若芽とか。
豊穣につながる嬉しさにつながるのだろう。
十二支の生肖で言えば、生贄の肉の美味しさを指すということか。

そうなれば、しかなかろう。

年始ということで、にまつわる植物の話でも。・・・

となると、先ずは「/Pygmy water-lily」か。被子植物としては、古くに分岐した種である。蓮のイメージとダブルことが多いが、双子葉類であり新しい分岐の種なので、ほとんど類縁関係は無い。
  「蓮文化はナイル河文明発祥か」[2014.3.20]

名称にヒツジが使われている理由は、未の刻@14:00に花が開くからとされる。ところが、実際には、朝開くものも少なくないらしい。開花時間は、日照条件で変わるだけの話だと思う。
閉じるのは夕方遅く。こちらは環境で余り左右されないかも。
数日の間、これを繰り返す訳だ。
従って、中国名は「睡蓮」となった。
尚、日本名の睡蓮/Water lilyとは、様々な交配栽培種とされている。してみると、元の種を未としたような気がしないでもない。
う〜む。羊と関係なさそうな話になってしまったか。

それなら、「耳蒜/False twayblade」を取り上げるか。
まことに聞きなれぬ植物名。「蜘蛛切草」という蘭の仲間らしい。素人にはどのような特徴があるのか皆目わからない。それに、写真を見ても、当該種が羊耳に似ているとも思えないが。
ともかく、野生蘭の種類は沢山ありすぎで全体感がわかぬ。小生の頭のキャパシティを大きく越えている。
蜘蛛切草の仲間を眺めると、学名にjaponicaが入っている種がある。「背高鈴虫草」だ。これもなんだかわからぬ名称である。
イヤー、なにがなにやら状態。この領域は素人には手が出せぬ。

他にないだろうか。
オッ、「耳菊」と「眼花」という名称があるではないか。日本名はさだかではないが、おそらく羊の遊牧地域にだけ生えているのだろう。見ると、小車/旋覆花という菊の仲間だ。浅学の身なので、残念ながらそれ以上は語れない。

結局、つまらぬものが残ってしまった。
生薬で知られる、「碇草/淫羊/Barrenwort」。
「本草綱目」で"西川北部有淫、一日百遍合、蓋食此所致"と書かれて大流行したのだろう。中国は食べることと、富貴に、もっぱらコレの風土である。中国に限らぬか。
尚、正確には、中国では類縁の「穂咲碇草/三枝九叶草」らしいが、含有アルカロドはたいしてかわらないようだ。

気分直しに、"Sheepberry(Nannyberry)"を加えておこうか。
自生地は、米国5大湖周辺で西は中部、東は大西洋岸。
実は、羊用ではなくヒトの食用になるようだ。耳にしたことはないが。
ガマズミの仲間だから、日本名は「」かも。
それにしても、莢[ガマズミ]/Linden viburnumは、不思議な文字である。何故か、覚えにくい。酸っぱい実がなるので、ズミ(酸実)と呼ばれるのは当然だが、接頭語のガマとはなんなのだろう。これに限らず、この木はナンダカナ名称だらけである。茶かしているのかも。
   「ごちゃごちゃ命名木」[2014.6.11]
例えば、こんな具合。
 珊瑚樹/早禾樹/Sweet viburnum
 胡麻木/Siebold's viburnum
 大亀木[or 虫狩]/Forked viburnum
 肝木/鷄樹條莢/Guelder-rose
 藪手毬/蝴蝶/Japanese double file viburnum
   −[園芸品種]→大手毬/雪球莢/Japanese snowball
 男杳染[or コネソ]
もちろん普通の名称展開もあるが。・・・
 深山莢/浙皖莢/Wright's viburnum
 小葉莢/宜興莢
 丁字莢

よくよく考えてみれば、この手のマイナーな植物を探す必要はなかった。正月の縁起物で誰でも知っている葉っぱがあるからだ。
そう/蕨/Fernである。これは象形文字の発展形の文字を知ると、シダの若芽の形に惹かれる日本人なら、その通りだとなろう。倭語そのままの下垂としたり、中国名の蕨を用いるのは、余りにつまらぬということか。

しかし、倭人は、ヒツジという動物にさっぱり関心を払っていない。にもかかわらず、どうして唐突にも、羊を持ち出したのか不可思議。なにせ、古事記も、万葉集も、完璧に無視を決めこんでいるのだから。
そうなると、これは羊の入った実がなる植物「バロメッツ」(スキタイの羊)伝説に対する一種の皮肉かも知れぬ。・・・
シダ[タカワラビ/金狗毛蕨/学名:Cibotium barometz]の、黄金色の毛で覆われた根茎を羊形に細工した中国の商品[玩具]がその正体と言われてきたが、実は、木綿を知らなかった西洋人がウールが実る植物があると信じ込んだというのが、この伝説の実態らしい。[ヘンリー リー,他:「スキタイの子羊」博品社1996]
訳註によれば、南方熊楠はその伝説を「真にお臍で茶を沸かす底の法螺談」と断じたそうな。
それはその通りだが、どうせ、中国商人がそんなシダの存在を知らないタタール人相手に、このシダの生薬は強精効果抜群と語って高く売りつけたのだろう。その商売の馬鹿馬鹿しさを耳にして、羊歯と名付けた人達がいるのではなかろうか。

この辺りで、皆さまのご健勝を祈って、お開き。


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