表紙 目次 | ■■■"思いつき的"十二支論攷 2015.8.25■■■ 十二支の「鶏」トーテム発祥元を探る鳥信仰は様々。仏教国だと飛天となろうが、古事記では雉が使者的役割を担ったり、鳥族が総出で葬儀にあたったりする。英雄的神霊が白鳥になって飛び去っていくシーンもあり、鳥のお話は尽きない。世界中どこだろうが、空中を飛べるという能力を畏敬の念で見る。それが各地の「天」の世界観と結びつけば、固有の信仰になるにすぎまい。 要するに、鳥とは、天に住む神の周囲に存在する生物と見なされている訳だ。 星信仰主体の武力命の草原を駆け抜ける騎馬民族系であれば、鳥の第一人者は天から急降下する鷹となろう。その信仰は強固だった筈。(イヌワシは龍山文化の霊鳥でもある。)しかし、生肖に馬を選んでしまった以上、帝国観形成上、さらに鷹を加える必要はない。 一方、耕作民にとって一番重要な役割を果たしている鳥とは、太陽の動きの補助役。いかに重視されていたかは、厚い米の層が発掘された河姆渡@越の考古学報告書を眺めれば一目瞭然。寶象牙太陽双鳥紋が出土したのである。 その鳥が何かは明瞭ではないようだが、夜明けを告げる鳥が、沈む太陽と共に帰っていく鳥のどちらかだろう。言うまでもなく、鶏か烏である。 現代からみれば、烏の扱いが目立つからカラスとしがちだが、昼間運行役をカラスが担うとの発想は自然に生まれるものとも思えず、どちらとも言いがたかろう。漢代に太陽を運ぶ鳥をカラスと見なしたのは事実だが、生肖設定のずっと後代での話である。 湯王が太陽神の末裔と称した殷王朝にしても、始祖は烏ではない。ただ、何故に玄鳥(燕)なのかはわからぬが。 そのカラスだが、文字的には特別視されてはいない。鳥文字から横棒一本ヌケなのだから。 それに対して、鶏は意味深。 鶏=雞であり、音符"奚"に意味が凝縮されている。その"奚"の音とは、おそらく、鶏の"鳴"(口+鳥)き声だろう。コケコッコーが強烈な印象を与えた訳だ。 → 「トリ文字考」[2014.7.19] 「古事記」でも、常世の長鳴鳥とされているし、招日シーンに登場するが、それは古層の信仰に基づくものなのだろう。そんな信仰は、西にも伝播している訳だし。 聖鳥[ゾロアスター教/拝火教] 勇猛さの表象[ガリヤ人]→"coq"[フランク王国,ワロン/仏系ベルギー] ヒッタイトから伝承表象[戦勝国ツタンカーメン王] 聖ペテロの最後の晩餐 これほど広範に、鶏信仰が広がっているのだから、帝国観を打ち出すための生肖から、鶏を排除するなど考えにくかろう。 🐓しかも、鶏の家禽化が進んでいた訳だし。 もっとも、烏に限らず、鳥トーテムとしては、鷲、燕、鴻、雁、白鳥、鸛、孔雀、等色々存在していた筈である。おそらく、その代表にもなるということで鶏が選ばれたのだろう。そう考えるのは、それらをまとめたものとして鳳凰が創作されているからだ。ただ、鰐を竜にしたように、鶏の代わりに鳳凰を導入しようとはしなかった。鰐と違って、余りに近しい家禽だったからだろうし、鶏トーテム部族は耕作民でありながら土着に拘らなかったからではないか。 そう考えると、鶏トーテム発祥部族像も推定し易くなるかも。 良く知られるように、家禽としての鶏の原形と見なされている野鶏は、インドシナ半島一帯〜雲貴高原〜アッサムに至る広い地域が原産地。当然のこととして、トーテムとしている部族はかなりの数にのぼることだろう。よく知られているのは、アッサム高地丘陵ナガ族、雲南のハニ族、四川涼山のイ族、江南から雲貴高原/インドシナに移ってきた苗族といったところ。 このなかでは鳥居の伝統を維持している苗族がいかにも鶏トーテムの主といった感じがする。 ということで、発祥元は苗族とするか。 (参照文献記載箇所) 「十二支薀蓄本を読んで」[→] 文化論の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2015 RandDManagement.com |