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■■■ 健康の考え方 2015.10.31 ■■■


イベルメクチンの温故知新

大村智氏のノーベル医学・生理学賞受賞で、マクロライド系抗生物質の「イベルメクチン」という名前が知られるようになった。30年前の開発品で、腸管糞線虫の駆虫薬として効く。
同時受賞のさんは蚊が伝染するマラリア用漢方由来薬剤開発者。
   「ノーベル賞は面白い」[2015.10.9]

一寸見には、いかにも古い話という感じは免れないが、そうとも言えないようだ。
「イベルメクチン」を集団投与すると、その血を吸った蚊の活動性が低下し場合によっては死亡する可能性があるとか。
西アフリカのブルキナファソでの研究結果。

安価に大量生産できそうな薬剤だから、マラリアの社会的対策として有望な気もする。開発途上国の場合、地域の環境にもよるが、患者回復の特効薬より、この手の大衆に遍く薬を投与する方法に分があるのではなかろうか。

もっとも、この手の対策は無理と見る人もいるし、抗生物質濫用は耐性を生む原動力でもあるから、かなりのリスクありというのもその通りではあるが。だが、今のままではマラリア蔓延の方向に進む可能性の方が高いのなら、試す価値はあろう。

考えてみれば、そのような効果は十分あり得る話。

「ストロメクトール」はブランド名だが、日本での適応は、もちろん、寄生虫を麻痺させることで効能が期待できる腸管糞線虫症だが、それのみではない。
驚いたことに皮膚病である疥癬症治療薬としての認可も受けているのだ。
こちらは、陰部や足の指間に発生することで知られる疾病だ。その原因はダニである。小生の周囲で罹患した人がいるとは思えないが、実は、恥ずかしいので誰も公言しないだけで、実態的にはかなりの患者数という人もいる。どういう訳か、現代の高度な衛生環境でも疥癬症はなくならないらしい。ダニも外用薬に対抗して隠れる術を身につけているのだろう。
しかし、経口でダニを叩く効果が発揮できるとなれば、それも難しかろう。
どの程度の効能かはわからぬが、ドラッグデリバリー技術を加えれば、患者激減に繋がるかも。素晴らしい話だ。

(記事) "Drug could kill mosquitoes when they feast on human blood" By Martin Enserink 27 October 2015 6:00 pm Science

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