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「我的漢語」講座

第1回 餐庁 2010.7.13
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〜 はじめに 〜
 世界のどの都市にも、たいてい中華街があると言われている。そこでは、現地国籍を持つ華人と、とりあえずの出稼ぎ華僑が入り乱れて働いており、現地語が通じないレストランも少なくない。それなら中国語かといえば、広東や福建の出身者が多いから、北京語がほとんど通じないことも。
 しかし、そんなコミュニケーションがとれないレストランは安くて美味しいことが多い。言葉だけの問題で、そんな魅力的なお店を逃すのは惜しいではないか。
 それに、日本人は表意文字の漢字を読めるのだ。メニューを読めるし、漢字を書けるのだから筆談可能なのである。

 いつ身につくかわからず、苦手な発音で苦労し続けるよりは、筆談スキルを磨く方が実利的ではないか。それに、記事も読めるようになったりする。
 と言うことで、「我的漢語」講座を始めてみた。もちろん、小生、高校での漢文の授業以上の知識はない。しかし、それだけで、無手勝流で中国の記事を読んだりする。正確に理解できているかはなはだ疑問なところだが、経験上からは、大きな問題はない。日本語の引用記事を読むのは便利この上ないが、原文に接すると、文章全体がどんなものかわかるから、真意を考えることができ、なかなか面白い。
 そんなこともあり、筆談型の学びをお勧めしたい。
 ただ、間違えてもらってはこまるが、ズブの素人が書いているので、間違いは多いし、冗談半分の部分もある。そのつもりでお読みいただければ幸甚。
 尚、文字は日本の漢字を使っており、簡体字ではないのでご注意あれ。少々の違いなら、どうということもないという、トンデモ発想。
 と言っても、どうにも代用できそうにないものは記載してある。

〜 先ずは料理店でのすぐできる筆談から。 〜
 要するに、切り離せるメモ用紙とボールペンを持っていれば、コミュニケーション可能ということ。書いて渡せばよいだけのこと。
 典型として、レストランこと、餐庁[庁→厅]での会話を考えるとよかろう。観光本には必ず掲載されているし、会話本にも色々書いてある。誰もが一度は挑戦している会話シーンだ。これを筆談で。
 難点は、読めても書けない漢字が多いことに愕然とすること。庁の簡体字はすぐ覚えられるが、餐はそうはいかない。日本語の漢字なのに、パソコン無しではもう書けなくなっている。この字がスラスラ書けた時代は今何処。

 例えば、どう書くかだが、普段話していることを文章にするだけだから、どうということはない。すぐ書けるものも多い。
   我欲茶。 あるいは、我要茶。
 という事だが、一番最初に必要なのはなんと言ってもメニュー。日本の中華料理店は台湾系オーナーが多いせいか、「菜単」の“単”は繁体字が多いが、簡体字にしたところでたいした違いはない。
   我要菜単。[単→单]

 問題は、中華料理の種類の多さ。半端なものではない。掲載している種類が少ないとすれば、それは、なんでも注文に応じるということを意味しているにすぎない。いずれにしても、素人には、メニュー検討には相当な時間を要する。
 それを考えると、とりあえず麦酒だけ注文しておいたらどうか。日本でも、とりあえずビールというのはよくある話だ。そして、飲みながら、じっくり料理選びにとりかかろう。これこそ一番の醍醐味でもある。お仕着せ好きの人にはこの楽しみはわからないだろうが。
 麦酒注文は簡単である。青島ビールを飲んだことがある人なら、Beerの漢字はよくご存知だろうから。もっとも、読めるが、書けと言われると難しいか。これだけは覚えておく必要があろう。
   我欲Beer酒。[Beer→啤]
 アルコールが駄目な人なら、ミネラルウオーターか。
   我要鉱泉水。[鉱→矿]

 観光本は「要」であるが、小生はこちらの方がしっくりくる。この場合、通じたということで、味をしめて、白酒に文字を代えたりしない方がよい。強いお酒だから、調子に乗って飲めば、酩酊間違いなしだからだ。なにせ、乾杯漬け外交で知られる国であり、下手にそばの人と仲良くなったりして、「干!干!」で大騒ぎになりかねない。中国人は一般に酒が強いから、それも又楽しとはいかないゾ。
 そうそう、観光本も優れたものには、“お姉さん、冷たいビールね”という、日本のサラリーマンの名句の翻訳バージョンがオマケとして記載されている。
   小姐! 要氷的。[氷→冰]
 形容するのになんでも“的”を使えるのが嬉しい。感覚が共通で、漢字の意味さえ間違わなければ、かなりの確度でニュアンスを伝えることができそうだ。
 筆談に“小姐!”は要らないが、こうした呼びかけは、当たり前の風土だと思う。毛沢東時代は、赤本と「同志」だらけだったのだから。それを考えると、「小姐」はどうもイマイチ。ビジネスライクな呼びかけが妥当な所か。実態は全く知らないが。
   服務員![務→务、員→员]
 ここで冷たいものが出ないならすぐに店から出た方が無難では。もっとも、日本でも、夏に冷たいものを摂るのは体に毒と見なす人がいる。漢方発想らしいから、文化的な違いかも知れぬ。

〜 構文らしきものが書けるようにしよう。〜
 こうした表現だが、どれもがあまりに単純だし、なにか強引すぎる感じがしないか。英語の文法を嫌になるほど学ばされた頃を振り返って、高等教育臭い“漢文調”の文章にしてみたくはならないかな。
 ということで、一寸考えてみた。
 上記の「要」や「欲」だが、日本人的には直裁すぎて、感じが悪い。変えるとしたら柔らかい感じの「想」かな。例えば、以下の如し。尚、「吃」は食べるという意味の漢字。
   我想吃食。
 食べるためにレストランに入るのだから、こんなことは自明で、わざわざ言う人はいまい。この文章が使えるのは、知り合いの中国人と一緒に散歩していて、お腹が空いた時。「要」では流石に体裁が悪かろう。

 それはそれとして、漢文を学習したことがあるのだから、もう少し高度な表現にしたいところ。Youの漢字も入れ、文章らしくしてみようか。尚、糸偏は簡略形が使われているが、原型でも判別可能では。なんとなく、正式な文章臭くなっていた感じがしないか。正しいかどうかはわからぬが。
   我請You給我菜単。[You→你、給→给、単→单]
 主語の“I”が目的語になると“me”になるような変化が無いから作文は実に楽である。教わった文法通りの堅い文章も、なかなかよいではないか。
 ついでながら、麦酒の方も追加の時は文章らしくしてみたらどうだろう。
   我請You給我再来一瓶Beer酒。[You→你、請→请、給→给、Beer→啤]
 常識的には、こんな長い文章を使う訳がないから、再来〜。長い文章も、これはこれで面白いのではいだろうか。
 尚、観光本にはかならずといってよいほど“おかわり”が書いてある。
   再来一箇。[箇→个]
 日本人の常識からすると、一個という数え方はキャラメルならよいが、料理の場合はなんとなく気分悪し。ご飯はならやはり「碗」としたい。一般的には、料理の単位はのようだが、そんな“おかわり”は滅多にあるまい。

〜 機微を伝えることができる構文も練習しておくとよい。。 〜
 なんといっても重要なのは、感情表現。それがコミュニケーションの基本だ。
 従って、麦酒で感激したらすぐに表現したいもの。“ウメ〜”などという下品な言葉でなく、いかにもその通りという漢字なのが嬉しい。
   好喝。
 渇と書きたくなるところだが、禅のご指導の「喝!」であるのも面白い。心まで染み入る“感じ”ということか。この言葉は、発音を聞いて、覚えておくとよいだろう。たいして役に立つものではないが、この実感は万国共通であり共感を呼ぶ。
 あとは礼儀として、料理を褒めることを忘れずに。繁盛している中華料理店は余程のことがない限りハズレない。美味しかったら、そう伝えるのは義務に近い。中華圏は食事命の文化なのだから。地震で壊滅した地域にようやく入った救助隊が、テント村避難民から馳走されて、その余りの美味しさに感激したという話がある位だ。そんなこだわりにたいして敬意を払わないのは無礼千万というもの。
 特に、黙々と食べたり、料理そっちのけで話に夢中というのは、なんだかね。
 フレーズは、想像通り。
   好吃。

 これだけでもよいのだろうが、日本人的には、“満腹じゃ”と言いながら、ご満悦の表情を浮かべる姿がよさげ。そう思ったら一言追加。少なくとも、“とってもよかった”位は付け加えようではないか。
   我吃飽了。[飽→饱]、あるいは 好吃了。
 最大級の言葉も用意しておくとよい。かつての英語の授業で習った構文を思い出せばよい。そんな表現も乙なもの。本当にそう感じたなら、なんとかして気持ちを伝えたいもの。文章を準備しておくに限る。もちろん、その場で書くこと。
   我 从来 没有吃过 这么好吃的。
 多分これでよいと思うが、この程度なら、漢字を覚えさえすれば、なんとか書けるのでは。
 ちなみに、“没”は“不”と並ぶ否定表現。从来がつくと、否定形と一括され、「今迄にこんなことは無かった」という表現になる訳だ。この場合、経験を表すためにが付く。英語でもよく書かされた構文だ。尚、この見慣れないという字はfromという意味である。
 もちろん、这么はコンナだ。
 ついでに、コレ/コノ、ココ、コンナ、コノヨウナの簡体字表現を並べておこうか・・・。どうせ、暗記するしかないからここで覚えておこう。
   这/这个、这儿/这里、这么、这样

 もっとも小生的には、観光本的な表現より、「大满足!」がお勧め。
 もちろん、最後は、“ご馳走さま”だが、お礼の言葉でよいだろう。これは筆談ではなく、口に出そう。この言葉をは知らない人はいまい。
   謝謝。[謝→谢]

 と言うことで、初回はこれまで。
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--- たまたま参考にしたサイト ---
中国語達人への道 http://www.chinesemaster.net/chinese_navi/feature/arukikata.php
--- たまたま参考にした本 ---
上野恵司編: 「精選 中国語基本例文集」 白帝王社 2009年11月


 
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