表紙 目次 | 「我的漢語」 2014年5月17日 黴臭き漢詩を読む「獨酌」の漢詩をとりあげたが、そうなると「勧酒」も、ということにならざるを得まい。 → 「黴臭き漢詩を読む」 [2014年5月3日] 漢文丸暗記や清書をさせられた身としては、すぐに、王維の「勧君更尽一杯酒」が頭に浮かぶが、題は「送元二使安西」。別離であって、酒の詩ではない。 ソリャそうなって当然ということを、本を読んで初めて知った。王維は、食は精進、お香と喫茶の正坐生活に勤しむ仏教徒だったというのだから。 と言うことで、「劝酒」で検索した漢詩のご紹介。 先ずは、陽関から西域に出立する気分とは異なるタイプから。都のお別れの宴席を彷彿させる出来。いかにもエリート同士という感じがする。なにせ、金杯。 しかし、金杯だろうが、茶碗だろうが、別離の本質は同じ。 「勧酒」 于武陵 勧君金屈卮、満酌不須辞。 卮=盃 花発多風雨、人生足別離。 続いては、これを、春が去って、又、春が訪れるという情感表現に変えることで、別離感を昇華したような詩。 「勧酒」 李敬方 不向花前醉、花応解笑人。 只憂連夜雨、又過一年春。 日日无窮事、区区有限身。 若非杯酒里、何以寄天真。 小生としては、春から夏へという時期だと、楠を見上げながら、蕎麦で升酒が好みだが。それでは、花のイメージが余りに違いすぎるか。 それはそれとして、お酒と肴の美味しさを堪能できる、百壷清酌こそが「勧酒」の真の喜びかも。 と言うことは、この酒いけるゼ的な直接的表現や、凝った比喩を駆使するのは、愚の骨頂。実は、ステレオタイプな表現の方が、酒飲みの嬉しさが伝わるのである。 「勧酒」 徐夤 休向尊前訴羽觥、百壷清酌与君傾。 身同緑樹年年老、事比紅塵日日生。 六国英雄徒反覆、九原松柏甚分明。 醉郷路与乾坤隔、豈信人間有利名。 〆は、大御所白楽天以外に考えられまい。青門での送別で酒を酌み交わす以外にも、飲酒文化は色々あることがよくわかる。 と言うか、こうした理由は後からついてくるもので、飲酒のTPOなどどうでもよいのである。それこそが、酒飲みの本質では。 「勧酒 十四首 − 何処難忘酒七首」 白居易 何処難忘酒、長安喜气新。 初登高第后、乍作好官人。 省壁明張榜、朝衣穏称身。 此時无一騁、争奈帝城春。 何処難忘酒、天涯話旧情。 青云倶不達、白髪逓相驚。 二十年前別、三千里外行。 此時无一騁、何以叙平生。 何処難忘酒、朱門聡ュ年。 春分花発后、寒食月明前。 小院回羅綺、深房理管弦。 此時无一騁、争過艳陽天。 何処難忘酒、霜庭老病翁。 暗声啼蟋蟀、干叶落梧桐。 鬢為愁先白、顔因醉暫紅。 此時无一騁、何計奈秋風。 何処難忘酒、軍功第一高。 還郷随露布、半路授旌旄。 玉柱剥葱手、金章爛椹袍。 此時无一騁、何以騁雄豪。 何処難忘酒、青門送別多。 斂襟收涕泪、簇馬听笙歌。 烟樹灞陵岸、風塵長楽坡。 此時无一騁、争奈去留何。 何処難忘酒、逐臣帰故園。 赦書逢駅騎、賀客出都門。 半面瘴烟色、満衫郷泪痕。 此時无一騁、何物可招魂。 (source)古詩文網[gushiwen.org]・・・文字改訂 (本) 青木正児「中華飲酒詩選」東洋文庫/平凡社 2008 (C) 2014 RandDManagement.com |