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「我的漢語」
2015年3月17日

キノコの漢字

アングロサクソン系はアンチ茸食らしい。
  「キノコの好き嫌い」[2015.3.2]
文字も"Mushroom"だけしかなく、キノコにとんと興味が薄いようだとの話を聞かされると、そんな気にもなる。しかし、よく考えると、日本語にしても「○○茸」と言う名称であり、「○○ Mushroon」との表現とイイ勝負という気がしないでもない。それに、日本人は茸好きといっても、食材のバラエティがえらく豊富な土地柄だから、one of themの位置付けでもかまわない訳だし。
やはり、ピカイチの大好き民族はスラブ系か。

そんなこともあり、茸にどんな名称をつけているのが、ザッと眺めてみることにした。

和語のキノコは「木の子」の意味だろうが、その代表と言えば、占地、椎茸、松茸だと思う。占地は特別扱いだが、他は「茸」類の一つという扱い。考えてみれば、木に生えるのだから、草冠の「茸」でなく、木偏の「」にしたらよさそうなものだが、キノコそのものは木ではなく、草と見なしている訳か。
もっとも、木耳はキクラゲ(木水母)のことで、すでに決まっているから致し方ない。和語感覚なら、キクラゲとは、間違いなく草ビラ(片)になる。こちらの方が耳朶よりイメージが合っていそう。小生なら、木の子ということで「」を使うが、「李」と混同し易いから考えモノではある。

もっとも、「」は、耳の形をした草であるとすぐにわかるから、悪くはない文字である。ただ、傘と柄のキノコには似つかわしくない。
 艸/+耳/聰=茸
聰は、どんどん育つ状態を現すとか。耳という形だけではないゾという、どなたかのご託宣がある模様。

椎茸や松茸のような、地から生えて、柄に傘がついた形に育つものは、本来は「」を使うべきものらしい。菌と言うと、細菌の印象が強く、キノコはそれとは異なるが似ている生物とのイメージがつきまとう。いかにも、学問分類からつけられたように思ってしまう。
しかし、それは逆で、初めからキノコを菌と名付けていたようだ。それに似た微小な生物を見つけたので、細菌となったそうだが、考えてみれば当たり前か。
 艸/+(米庫の形)=菌
 禾(穀物)+囗=(穀物倉庫)
漫画のキノコは円筒形で傘のような屋根が乗った建物が多いが、もともとそういう文字だったらしい。

桑から生えるのが「」との解説を至るところで目にするが、それがどのようなキノコを意味しているのかはさっぱり書いてくれないので、よくわからない。
 艸/+覃(伸びる)=蕈
現代では、そのようなキノコはメシマコブと呼ぶ。男女群島の女島で瘤のように育っていたからならではの名称。シイタケ、カワラタケ、コフキサルノコシカケ同様に、一部の人達はその効能を信じている。漢名は桑黄だが、それのことかネ。
ただ、菌類(黴、キノコ、麹)分類学者はこの文字を多用するから、なんらかの概念があるのだと思われる。残念ながら解説文にはお目にかかれないが。

さらに、特別な漢字を当てられているキノコもある。霊芝(or 万年茸)の「」。
 艸/+之(一歩踏み出す)=芝
地面からピンと突き出て生える草ということになる。イネ科の青芝はピッタリだが、乾燥霊芝はサルノコシカケのような格好であり全く合わない。しかし、この漢字は、もともと霊芝の意味だったというから不可思議。

現代の中国語ではもっぱら「」である。
 艸/+姑(冬瓜)=茹
和語では、"茹でる"という意味しかなさそうだが、どういうことなのだろうか。ただ、肉厚椎茸を冬姑(ドンコ)と呼ぶところを見ると、冬瓜のような草といったところなのだろう。食感が瓜のようだと「茹」と名付けるということか。
ただ、菜単に掲載されているキノコは草茹が多い。日本だともっぱら缶詰だが、大陸では"鮮"の加熱調理が基本かも知れぬ。Mushroomの場合は、どういう訳か、字がダブって茹となる。味が違うことを示したかったのだろうか。

このように、時によっては「」も使われる。
 艸/+磨=
は蒙古シメジらしいが、Mushroomに用いる文字だから、北方のキノコに関してのみ使うという訳でもなさそう。尚、浙江料理にも姑炒香干がある。

𡵧」という文字も使われたとの記載を見かけたが、さっぱり情報が得られない。(ネットリーソシスだけで、大漢和を参照する手間をかけていないので。)誤植か、小生の見間違いかも。
 山+元=𡵧

と言うことで、キノコ文字を並べてみた。尚、分類はできかねる。と言うか、知らぬ顔の半兵衛。(もともと、胞子を顕微鏡で眺めて分類していた分野であり、これに分子生物学が入ってきたから、もう訳がわからぬ。シナリオ無しの分岐データにはさっぱり興味が湧かない。)
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ヒラタケ/Oyster Mr./平(or 側耳)
エリンギEryngii/King trumpet Mr./杏鮑
シイタケ/Shiitake Mr./ ・・・乾椎茸/和椹
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ホンシメジ本占地(or 本湿地)/-/本占地(玉蕈褶傘)
マツタケ/Pine Mr./
ナラタケ/Honey Mr./Honey Mr./
エノキタケ/Golden needle Mr./金針
ブナシメジ占地/Buna shimeji/-
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タマゴタケ/Half-dyed slender Caesar/-
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ナメコ滑子/Butterscotch Mr./-
クリタケ/Brick cap/-
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キヌガサタケ衣笠/Veiled lady/
イワタケ/-/石耳
オウギタケ/Rosy spike-cap/
ハツタケ/-/-
フクロタケ/Paddy straw Mr./
マツホド松塊/-/茯苓 ・・・[生薬]ブクリョウ
冬虫夏草/Caterpillar fungus/冬虫夏草(or 中華虫草;蝉茸)
アガリクスAgaricus/Almond Mr,/姫松
マッシュルーム(or ツクリタケ)Mushroom/"common" Mr./
ルリハツタケ瑠璃初/Indigo milk cap/藍緑乳
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ヤマブシタケ山伏/Lion's mane Mr./猴頭
アミタケ/Jersey cow Mr./澤西(or 乳牛肝菌)
ポルチーニ(or ヤマドリタケ山鳥茸)Porcini/"Porcini"/美味牛肝菌
チチタケ/Weeping milk cap/-
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アンズタケ/Golden chanterelle/-
マイタケ/Hen-of-the-Woods/灰樹花
ホウキタケ/Clustered coral Mr./-
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ツチグリ土栗//Barometer earthstar/-
ホコリタケ/Puff ball/-
アミガサタケ編笠/Morel/-
西洋松露/"truffe"/松露
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キクラゲ木耳/Jew's Ear Fungus/黒木耳(or 雲耳)

こうして「茸」を眺めてみると、ネーミングに思い入れというか、この食材ならでは感がさっぱり感じられない。力が入っていない印象。ただ、特別扱いがあり、それは旨み抜群のシメジ、ヌルヌル大好き人間にはたまらぬナメコ。
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