■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[15d釋蟲]■■■
虫のなかでは、"子"の名称が記載されている場合があるので、どういうことか見ておこう。・・・

  不過 蟷蠰 其子 蜱蛸

知る人ぞ知る、中藥の領域の話だった。
 <螵蛸>…干燥卵鞘(桑螵蛸@桑樹上 or 蜱蛸)
  大刀螂オオカマキリ[大鎌切]→円柱状卵鞘
  小刀螂コカマキリ[小鎌切]→長条形卵鞘
  巨斧蟷螂ハラビロカマキリ[腹広鎌切]→黒色並行四辺形卵鞘形


  螱 飛螘 其子 蚳

こちらは高級食材。
 醢人:・・・蚳醢・・・---賓客之禮 共醢五十甕
     [「周禮」天官冢宰 第一 醢人之職]
 況蜩 𧍙 蟻 蚳 可供饋食者
     [「本草綱目虫部第三十九卷]

虫の"子"記載はこれだけだが、要するに、この手の珍味が並んでいる訳で、王朝官僚としてはどの様な料理が並ぶのか一通り知っておく必要があるということだろう。蜂蜜は当たり前だが、蜂の子(蛹)も定番。

  土蜂 木蜂
  蟦 蠐螬
  蝤蠐 蝎

  土蜂 木蜂…蜜蜂も食材としては並べるべきだろう。
  蠐螬土蛹スクモムシ(コガネムシ[金亀子]幼虫)…半健康食品。
  蝎=蠍…もともと西域ではサソリは常食対象の類
    蝤蠐はオケラ。もちろん可食。
    蠐はカミキリムシ[髪切虫/天牛]の幼虫。美味とか。

現代感覚だと悪食的な様相に映るので、なんでも食すタブー無し社会と見なしがちだが、古代部族社会の伝統を引き継いでいるだけでは。もともとはカニバリズムが重要な祭祀だった筈で、それは空腹を満たすためではなく、偉大な戦士の力を頂戴する勝利の宴の儀式から生まれたものだろう。昆虫食はそれとは異なっている様に見えるが、同根。食の根幹に位置付けることは難しいのは歴然としているのだから。
もともとは、虫の力を取り入れる為の食ということで、それが薬的な意味に変っただけ。多くの場合は、食べにくい訳だが、それを食べ易くするために官僚が情報を八方から鋭意収集して王朝レシピに組み込んだと考えるべきだろう。
生殖能力・老化抑制力・疾病抵抗力の理屈が認められればその食材は残るだけの話。と言っても、論理性ある分類を避ける社会風土なので、いくら精緻に検証したところで当たるも八卦とならざるを得ない。しかし、医とは対象個人の全体観をベースにしているので、超熟達者の観察眼は鋭く、経験ベースで鍛えられた直観とプラセボ効果が大いに役に立っていたと見て間違いない。(病因分類に論理性が無いものの、生活実体を知らない人に対する措置は行えないとの理屈があるため、判断能力とは直観力そのものになる。身分は低いが、名人級が存在し、多分当てる。その見立てに応じて身分が上の漢方医が特別処方する仕組み。)
  

     

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