■■■ 「說文解字」 卷六 を眺める[2]  ■■■
<木>は枢要な部首であり、その系譜に連なる部首の選定こそが、「說文解字」の文字秩序構想の屋台骨と考えてもよいのでは。
そう考えると、ここでの肝と云えそうな後続部首は<東>だろう。

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②②②②②②②②
林才之𣎵生乇
──────────────────⇒巻七

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単純に<東>を持って来た様に見えるが、この部首に属するのは純正文字の2つのみ。
<東>
 東:動[木 官溥說 日在木中]
 㯥:二東[曹 此]
  <曰>部首文字"曹":獄之兩曹 在廷東[㯥 治事者 曰]

[木+日]とするなら、<東>部首に組み入れてよさそうな2字を除外している。
<木>
 杲:明[日在木上]
 杳:冥[日在木下]
このことは、[日在木中]として、同一部首内での上・中・下の組にしたくないことを意味しよう。

と云っても、甲骨文字を知らなかった時代だから、[日在木中]を否定したかったとは考えにくいが。・・・
甲骨文字からは、橐[字義:ふくろ]⇒東[字形:ふくろの上下を絞った象形]が見て取れるそうだ。本義喪失の仮借ということになる。[@白川静:「字通」]どうして、そんなことをする必要があったのかは不明。
<東>→<束>→<㯻>
       橐:囊[㯻省+石]聲
もっとも、素人的には、解釈は容易。杲と杳がもともと使われていたところに、"東"文字が登場したので、これを[日在木中]に転用したにすぎない。

ただ、[日在木中]の意味するところは、誰でもが即座に想定してしまうが、その太陽崇拝の源流がはっきりしている訳ではないから、実はバリエーションの1つに過ぎない可能性もある。ただ、「說文解字」では、"日"が留まる木は若木/扶桑としているようだ。
<木>
 榑:榑桑 神木 日所出[木+尃]聲・・・榑桑=扶桑だろう。
 柘:桑[木+石]聲
 檿:山桑[木+厭]聲
<叒>
 叒:日初出東方湯谷 所登榑桑 叒木[象形]
 桑:蠶所食葉木[叒+木]

「古事記」では、太素杳冥[@序の漢文]との用例があるものの、"東"に若木の地というイメージは無さそう。
  虎步於東國[@序の漢文] 青垣東山上 猶思東行 東方十二道 自東方所遣建沼河別 追廻東方 平東西之荒~ 蚊屋野之東山
榑桑/扶桑の文字も桑田王という固有名詞に使用されているだけ。
  


木東林才叒之帀出𣎵生乇𠂹𠌶華𥝌稽巢桼束㯻囗員貝邑𨛜 

├┬┐ 巻五
⑫⑫⑫
夂久桀
┌─┘ 巻六

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東林才叒之  │
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│   ③③ │
│   帀出 │
│      ├┬┐
│      ②②②
│      𣎵生乇
│      ├┬┬─┬┬─┬─┬──⇒巻七
│      ③③③ ③③ ③ ③
│      𠂹𠌶華 𥝌稽 巢 桼

├──────────────────⇒巻七

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