■■■ 「說文解字」巻十一を眺める[7]  ■■■
「說文解字」は古文を貴ぶという政治思想を鮮明に打ち出しているが、それに触れたくない文字もあるようだ。それは"龍"。

現代通念としては、この日本流の略字が"竜"とされている。別に、それでかまわないが、実のところは古字。
「古事記」序で、"龍"を本字的に使用しているから、早くに古字は捨て去られていた訳だが、日本ではそれに気付いて掘り起こす人が出たことになる。中華帝国王朝としては、それは面白くない現象なのだろう。("龍"の字体は[立+⺼+⺊+己+三]で、"竜"は[立+日+乚]だから、後者の方が字義Dragonをよりよく受け継いでいそうなので、画数多過ぎということでの略字化ではない。)

龍の定義は誰でもが知る所で、以下の通り。
  神異動物(風雲上天 作雨)
    ⇒皇帝比喩表現
    ⇒巨大馬@北方民族
    ⇒宿星名

「說文解字」も、登天・潛淵の鱗蟲としているし、配置的にも雨雲類と並んでいるから、同じ見方と考えがち。ともあれ、あくまでも蟲類扱い。
つまり、信仰上生まれた想像の動物の様相を描いている訳ではなく、淡々と実態を説明しているだけ。(燕は玄鳥[羽蟲]との字義記載。これと解説のトーンが異なっている訳ではない。)

現代人にとっては、トーテム合成像を描いているとしか解釈のしようがないが、蟲としての実在モデルが存在していないのに、逞しき想像力で創造した非実在動物と考えるべきではないことになる。

と云っても、そんな動物が存在する筈は無いとの常識が頭に埋め込まれているので、そこらを考えることなど無い。しかしながら、頭を柔らかくして可能性を探れば、そんな実在動物が知られていたと見なすことができないではない。・・・

中華帝国とは官僚差配の王朝。創造性には欠けるが、情報探索とその解釈にはとてつもなき力を注ぐ。帝国のレゾンデートルに近い。
そうした状況だと、龍は実在する鱗蟲との説は受け入れられておかしくない。

云うまでもないが、その情報元は、西域の水源域に繋がるような地の人跡未踏的岩山断層域。そこらの岩山から大型化石が出土したことになろう。そのなかに、獣類に混じって、巨大龍的な姿があっただけの話。化石という概念が有ろう筈も無いのだから、遠方に聳える高峰の水源域に棲む動物像と解釈する以外に手はあるまい。登天・潛淵との記載はその論理的帰結。

当然ながら、その様な化石は、利用されないように、すべて破壊尽され完全消滅が図られることになる。
  

     

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