■■■ 「說文解字」 卷十三を眺める[7]  ■■■
"蠅"[虫+黽]は"黽"を字源としていないとされている。たまたま同体なだけ。
この見方、正しいともいえるが、同時に大きな間違いとも思えてくる。

小生は、字義として、当該文字発祥地における元義と、中華帝国最古の王朝が設定した祭祀用から来る原義の2種を設定しているが、そうした考え方をするとどうしてもそうなる。
(甲骨から読み取ると、原義がわかるという考え方は曖昧過ぎるということ。殷王朝制定公的祭祀用文字とでもした方がよい。そうすれば、これを原義と見なしてよいとの論理が脆弱なことがわかるからだ。・・・甲骨以前に呪術文字は存在していなかったとか、土器のみかけ記号類は文字とは別なカテゴリーとか、はたまた巨大王朝による統一規格以外は文字とは呼べないと考えるなら別だが。要するに、南部で甲骨より古代の土器文字が出土品で確認されてもなんらの驚きではない、ということ。それは、甲骨の推定原義とは一致しないと予想する。)

現代のカテゴリー観からすれば、蛙と蝿が重なる部分は、肢が目立つ動物である点以外に共通点は見つからない。蛙の文字である"黽"を用いた"蠅"という文字は考えにくいという見方は納得のいく説明と云えよう。
ましてや、縄と蛙など全く接点が見えて来ないから、これはせいぜいのところ音だろうという風に傾いていくのは当然だと思う。

しかし、こうした頭の働かせ方には陥穽がある。ヒトは裸蟲とする様な、生物分類観が異なる世界を前提として考えていないからだ。つまり、"黽"は図案であって、いくら形状が蝿そっくりだからといって、その概念が現代の生物概念と同じ訳ではない。
蛙と蝿は同様に映っていたからこそ、ハエに"黽"字体を取り入れたと見て検討すべきと思う。

長々と書いているが、「古事記」のハエ文字用例を見て、その感を深くした。

現代常識として、人名にハエを用いるとしたら、それはかなりの揶揄表現となる。ほとんどあり得ないと考えるべきだろう。
しかし、太安万侶は全く気にせず蠅文字を使っている。つまり、ハエを指す言葉として使われてはいるものの、その意味は五月蠅く汚物に集まるハエというイメージではないことになる。例えば、青色金属光沢装飾の華美な姿を意味していたりすることになろう。

以上、想像ではあるものの、そうとしか思えない。
「說文解字」では、そこらを明快に解説してあるからだ。
蠅とは、營營青蠅で蟲之大腹者。
なんだ、ハエ比賣とは、藍染衣装を好むお太りの姫君として有名で、裕福な実家の魅力的な女性ということか、と気付かされる訳だ。

縄にしても、出来立て藁で作った俵の如く太った形態で、細紐状ではないのかも。毎年新調する超巨大注連縄が、もともとの姿と云えそうな気がしてくる。

簡潔に云えば、"黽"の字義は、腹が膨れた青の蟲。青蛙はその属長的存在となる。
と云っても"僶"になると外見印象から離れ、営々と活動する、反慎為怠の僶勉さを意味している。確かに勤勉に動き回る生物ではある。勿論、この文字は非収載。
  


糸素絲率虫䖵蟲風它龜黽卵二土垚堇里田畕黃男力 

│ 巻十二

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⑫⑫⑫
弓甾曲
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⑬⑬
弜弦
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│ 巻十三

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素絲率
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䖵蟲風它
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龜黽



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  巻一

│   巻十三

├─────── ⇒巻十四

├┬┬───── ⇒巻十四
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垚堇里
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畕黃男

     

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