■■■ 「說文解字」 卷十四を眺める[11]  ■■■

文字系譜の最終巻の末尾文字"亥"に近づいてくれば、執筆にも力が入る筈なので、どの辺りだろうと眺めることになるが、その必要もないほど、"酉"に注力していることが歴然。
しかも、ご丁寧なことに派生部首"酋"(+𢍜)まで記載。
古文酉之形とあり、酒壺を意味しているのは自明。もちろん、酒壺とは完成した酒を入れて宴会に供する容器ではなく、甕出し紹興酒のようなもの。
しかし、字義は酒となんら無縁の"就"。部所属文字#1は当然ながら"酒"だが、この字義も同じである。
これには脱帽。

八月黍成 可爲酎酒となっているから、発行熟成が完成したことが元義なのは当たり前だが、原義としては、<高みに昇った状態を受け入れ、味わうことに。>との見解と、語っているようなもの。
文字の概念とはこういうものと、教えを垂れていることになろう。当然ながら、そこには儒教的観念が持ち込まれるわけである。・・・<所以就人性之善惡>
所属文字はほとんどが酒に係るし、次の部首も酒文字である。

ただ、𢍜[酒器]は収録されているが、廾(2本手)⇒寸(1本に横棒)の文字となると、合字ではよく見かけるし、頻繁に使う文字にもかかわらず、部首にしていないし、部所属文字でもない。しかも、周礼6尊を明記までしていると云うに。
  𢍜    尊󠄁
ちなみに6尊とは、記載されている犧尊 象尊 著尊 壺尊 太尊 山尊ではなんのことやらだが、天子宗廟の季節祭祀(春夏秋冬追朝)を意味し、酒器尊が重要な役割を果たす。それぞれの意味はほぼ推定がつく。
例えば、犧(牛)象の上に容器が乗る形状の尊は、もともとは角牙製だろう。著は殷、壺は魯の故事に基づく伝承尊。太は虞を想起させる素焼製で山は夏后の尊。漢代に、周の実情が残存文献以上にわかる筈も無く、専門官僚の決め打ちであり、そこには互いの脈絡も秩序もない。素人の判定と質的に変わらない。
重要なのは、専門官僚のお墨付きと、技巧を凝らした立派な尊であること。その注力度合いは半端なものではないことは犧尊の実態を知ればわかる。
  百圍之 斬而為犧尊・・・[「淮南子」俶真訓]
巨大樹木を切り倒して作る工芸品。彫刻彩色されて龍蛇虎豹が描かれる。牛はいない。

わざわざ、《周禮》六尊を記述する気分はよくわかる。何故、まともに祭祀器が伝承していないかと云えば、渡来王朝秦の始皇帝は、各地の王の天帝信仰に繋がる宗廟を破壊し尽くしたから。皇帝による祭祀以外の絶滅を図ったことになる。従って、現存の《周禮》は尊についての情報を断片的にしか伝えることができないのである。
尚古思想で貫かれている「說文解字」としては触れておきたくなって当然。

[繹酒]の字義も振るっている。長く久しい日々熟成したトップランクということになり、長(おさ)や頭(かしら)の意味に転ずる理由が述べられている。

どうだ、ここまで目を通して来て酩酊してしまったか、それとも覚醒したのかと語り掛けている様なもの。
天晴れ。
  


金幵勺几且斤斗矛車𠂤𨸏𨺅厽四宁叕亞五六七九禸嘼甲乙丙丁戊己巴庚辛辡壬癸子了孨𠫓丑寅卯辰巳午未申酉酋戌亥 
  巻一

│   巻十三


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③③③ │
垚堇里 │
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││  巻十四
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①①
金幵
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②②②②②②
勺几斤斗矛車
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│   𠂤𨸏𨺅


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𠫓

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