■■■ 「說文解字」 卷十四を眺める[15]  ■■■

巻十四は文字系譜の最終であるから、「詩経」のどの句を引用して完とするか、注目していたが、6文字であることが目立つ程度で面白味がなかったが、そのお蔭で、<所所⇒丁丁>と<己己⇒几几>に目が移ることになる。

前者はオノマトペ。どうということもなさそう。
  伐木丁丁・・・
  伐木許許・・・
  伐木于阪・・・ [小雅 伐木]

ところが、後者はそうはいかない。
本質的な問題を投げかけているからだ。文芸的表現とは何を意味するかという、極めて現代的な議論のとっかかりを提供しているとも言えそう。・・・
  ⓮ 巹
  赤舄己己
  
  公孫碩膚 赤舄几几 [国風 豳風 狼跋]
    …公孫[諸侯之孫]とは周公。
  ⓬掔
  赤舄掔掔
文字自体はそれぞれ別な系統。・・・

[中宮 象萬物辟藏詘形 self]

[踞几 stool]≒幾
  或肆之筵 或之授几 [大雅 行葦]

[固 sturdy]

こうなると、文字が持つイメージでの関連性とか、韻の手法的な展開という次元ではとても語れそうにない。

考えてみれば、<赤舄>という題材からして当然かも。
  舄[鵲]
  赤舄…貴族が履く赤色の木製底鞋。
   e.g. 玄衮赤舄 [大雅 韓奕]

純オノマトペなら、木底スリッパが出す音として掔々となろう。
そこに、派手な色が規定されている衣、冠、裳に加えて、目立つ赤色の履物というイメージを重ねているのかもしれない。

しかし、そんなことはどうでもよいという見方もできる。
この詩は進退窮まった周公が題材であって、王朝内の姿を描こうという訳ではないからだ。従って履物が描く心象風景とは何かということになり、それが重畳文字で表現されていることになる。

当然ながら、読み方は色々できることになり、使用文字も変って来る。

小生的には、何時も通りの派手な色彩の規定衣装を身に纏って登場したが、心ここにあらずで、音を出して歩んでいるのも気付かず、履物の赤色よりも、蒼白な顔色が目立っており、滅多に見られない素晴らしい色彩の取り合わせ、と解釈する。
要するに、揶揄タイプの戯作詩。
儒教政治勢力に属していれば、普通ならこの手の鑑賞などできる訳もないが、最後に、文字表現の仕方を通じて、本来の感情を吐露しておく必要もあると考えたのかも。


 ⇒哆兮侈兮
庤乃錢鎛
鐘鼓鍠鍠
擊鼓其鏜
叴矛沃𨯢 ⇒厹矛鋈ロ
鑾聲鉞鉞 ⇒鸞聲噦噦
鉤膺鏤鐊 ⇒樊纓
盧重鋂
又缺我斨
伐木所所 ⇒丁丁
斧以斯之
輶車鑾鑣 ⇒鸞
約軝錯衡
𣵽以𧥎軜 ⇒鋈以觼軜
取羝以軷
捄之陾陾
赤舄己己 ⇒几几
酒醴惟醹 ⇒維
公尸來燕醺醺 ⇒來燕來宜
  


金幵勺几且斤斗矛車𠂤𨸏𨺅厽四宁叕亞五六七九禸嘼甲乙丙丁戊己巴庚辛辡壬癸子了孨𠫓丑寅卯辰巳午未申酉酋戌亥 
  巻一

│   巻十三


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③③③ │
垚堇里 │
│┌───┘
││  巻十四
│├┐
①①
金幵
│├┬┬┬┬┐
②②②②②②
勺几斤斗矛車
│ │   │
│   𠂤𨸏𨺅


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𠫓

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