■■■ 「說文解字」 卷十四を眺める[16]  ■■■

引用句の話で巻十四検討の完とするのも面白くないので、折角だから、すでに書いてはいるものの、〆文字としての≪亥≫について📖
前と筋が違うと感じることになるかも知れないので、戸惑われるだろうが、敢えて。(実は、何の違いも無いのだが。)

全巻を通して眺めて来ると、この文字の位置付けや、猪と豚の見方など、すべてが記載されていることに気付く。・・・
太安万侶の凄さは、「說文解字」読みで培われた結果、と確信する瞬間でもある。稗田阿礼を絶賛している理由もよくわかる。倭語を文字表記化して残せるのは、その類い稀なる才能(文法理解力)に全面的に依拠しているのだから当然と云えよう。

それはともかく、十二支ということで、亥と豕を関連付けることも多いし、字体についてもそれなりの説明はいくらでも可能。しかし、文字そのものの由来で両文字が系譜上交叉することはおよそあり得ない。
しかし、関連性を考えることは愉しいのでわざわざ否定するのも無粋。
  亥[荄]roots  (荄[艸根])
     (俗字:𬽇)
     (俗説:≒閡separate)
しかし、重要な視点もあるので、そこらについて少々。

亥に猪の文字を当てるのは、まさに中華帝国の歴史観そのもの。そこらを縷々説明する気はにはなれないが、頭が柔らかいなら、「說文解字」を見ればわかる筈。
生物学分類的には干支の最後の文字の倭語的読み方は正しいものの、亥に当たる動物は狩猟対象のwild boarではなく家畜(非生物学用語)との見方は至極妥当。ブタ年とされると、日本人感覚では違和感有り過ぎだが、瓜坊を育てあげた家畜ならお馴染みな筈で、年賀状にもよく使われている。それだけのこと・・・
 豕[彘]swine(類名)
 猪[n.a.]wild boar(日本語:ゐ)  (潴[n.a.]…潴畜水)
 
 豬[豕而三毛叢居者]
 豘[n.a.]small pig  (俗字:肫[面頯])
 豚[小豕]…猪之子(日本語:瓜坊)
 彘[豕]pig(非生物学名)
     

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