■■■ 「說文解字」 卷十五【叙】 を眺める [7] ■■■
官僚たる太安万侶は叙を読んで、科挙の国の制度に恐れ入ったに違いない。

「說文解字」程度の内容は頭に入っていないようでは、官僚として失格であると書いてあるようなものだから。・・・
 17歳以上で試験。  學僮十七以上始試
 籀書9,000字を
   暗誦できると官[史]となれる。  諷籀書九千字 乃得為史
 八体に合格してもさらに試験。  又以八體試之
 優等生には尚書の位が与えられる。  最者 為尚書史

暗記能力を欠けば知識僅少での判断しかできないから意味が無い訳ではないが、それは聡明さとは違うというのが太安万侶の思考なので、中華帝国の仕組みの欠陥を感じ取っただろう。(語り部稗田阿礼は天才的暗記能力があったから聡明と評価された訳ではない。)

その制度は、経典(テキスト)絶対主義に陥ること必然。

政策論争とは思弁的な解釈競争でしかあり得ず、教条主義的な政治を招くことになる。正当性の根拠は教祖の単純は主張に換言されるから、質の高い議論にはならないし。
外見からは、学問論争に映っても、それは官僚間の権力闘争そのものということになる。敗者は社会から一掃されかねない社会であるから、ただならぬ緊張感に満ち溢れていた筈。もちろん、人口0.1%未満の閉鎖的コミュニティ内部での角逐でしかないが。

「說文解字」 はそのなかでの、尚古主義・反始皇帝型路線派が構築した儒教テキストということになろう。・・・

  "予欲觀古人之象"@「書経」
  "吾猶及史之闕文 今亡矣夫"@「論語」

 文字とは≪經藝≫と云った書籍の元であり、
      中華帝国の政治基盤形成の緒
        蓋文字者≪經藝≫之本 王政之始
 先人が
   後世の人々に教えを垂れることを意味し、
 後の人々が
   先人の認識を追体験することでもある。
        前人所以垂後 後人所以識古
  

叙 漢 太尉祭酒許愼記 

     

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