■■■ 「說文解字」 卷十五【叙】 を眺める [13] ■■■
「古事記」序の冒頭は「易」の核心的用語の乾坤話から始まる。中華帝国の事実上の国教である儒教で最高テキストとして位置付けられているから、漢字を用いて倭語の文字表記を行うに際して、表敬行為が必要という意味があるのかも知れない。漢文記載の粗筋は、どう見ても本文の倭文とはトーンが異なるのだから。

一方、本家の「說文解字」は、儒教秩序の文字宇宙を提示することが目的の書であるから、「易」の思想を根底に置いて編纂していることになる。

両者ともに、「易」を崇高な書と見ているのは間違いないが、文字に対する考え方が180度異なっている点を忘れるべきではないと思う。「古事記」はあくまでも言葉ありきであるが、易は哲学的記号論が出発点であり、これを援用して文字を考えるということは、文字とは意味の図案であるということになってしまい、そこには言葉の影さえなくなってしまうからだ。

「說文解字」叙は「易」の文字史をママ移したようなもので、そこらの認識はない。
  古者包犠氏・・・觀鳥獸之文・・・於是始作八卦・・・
  上古結繩而治 後世聖人易之以書契
  百官以治 萬民以察 蓋取諸夬
[繋辞伝]

ともあれ、そのコンセプト持ち込みこそが最重要課題。
  參天兩地 而 倚數[説卦伝]
これが、一風変わった系譜を生んだのは間違いない。
  一(⇒天)⇒三
  一⇒二⇒土(⇒地)

このことは、「說文解字」の底流には、易から得た記号イメージ論的発想があることを意味する。普通は、限られた対象で検討するものだが、自閉症的スペクトラム型展開を進めてしまったことになる。
易の対象は64でしかないが、これを一気に540に拡大し、さらに博物学的レベルの高みに持ち挙げた訳だ。換言すれば、文字の分野の易経創成を狙った書ということになろう。

部首の数540も「易」から来ているとの説があるそうだ。確かに、部首から外されている文字があるから、ありえそうなこと。・・・
  天一、地二、天三、地四、天五[繋辞伝]から、
    陽(奇数)の象徴は9(=1+3+5)で、
    陰(偶数)は6(2+4)と考えることができる。
  これが"⚊"陽爻九(32)と "⚋"陰六爻(22)の元。
  これを掛け合わせた数字が54。
どうでもよい話ではあるが、この手の発想が秩序論の根底にあることは間違いない。論理を突き詰めて行けば、ただた細かい設定に陥ることになる。(地動説の科学の様に詳細複雑専門化して行く。その美学に酔うことが最上の悦びと化す。)

<蜥易 蝘蜓 守宮>
01【111天】<上出也><顛 至高無上>天地定位 萬物生焉
02【000地】<地><元气初分 輕清陽為天 重濁陰為地 萬物所陳𠛱>大地
03<難 象艸木之初生 屯然而難>盈 萬物始生
04<王女>蒙昧
05<𩓣 遇雨不進 止𩓣>飲食之道
06<爭>爭訟
07<二千五百人爲師>興兵為師
08≪密 二人爲从≫起兵興師後同群之人
09小畜<物之微><田畜>人們親近後開始集合
10≪足所依≫履為踩踏
11<滑>泰為通達
12<不>
13同人<合會><天地之性最貴者>會同 協同
14大有<(籒文大 改古文)><不宜有>意指大的收穫
15<敬>謙遜
16<象之大者 賈侍中說…不害於物>喜ス
17<-(从)>跟隨
18<腹中蟲 臬桀死之鬼亦爲蠱>腐敗
19<監臨>臨近
20<諦視>觀看
21噬嗑<啗 喙><多言>
22<飾>裝飾 修飾
23<裂>剝落
24<往來>回復
25无妄{-[無<亡>]}<亂>无妄之災
26大畜<(籒文大 改古文)><田畜>豐收
27<舉目視人皃>引申為吞噬
28大過<(籒文大 改古文)><度>過猶不及
29【010水】<陷>≪凖 北方之行≫水窪 坎陷
30【101火】<離黃倉庚 鳴則蠶生>≪燬 南方之行 炎而上≫
31<皆 悉>交感 互相連結
32<常>永恆
33<逃>隱匿
34大壯<(籒(黃文大 改古文)><大>陽剛壯盛
35<進 日出萬物進>進步
36明夷{-}<平>K暗
37家人<居><天地之性最貴者>齊家
38<目不相聽>乖違 違背
39<跛>艱難
40<判>消除 緩和
41<減>減損
42<饒>利益
43<分決>決裂
44<偶>相遇 邂逅
45<艸皃>匯聚
46<十龠>上升
47<故廬>受圍困
48<八家一井 象構韓形>養生民而無窮
49≪獸皮治去其毛≫改革 革新 革命
50≪三足兩耳 和五味之寶器≫鼎新
51【100雷/靁】<劈歴 振物者><陰陽薄動靁雨 生物者>
52【001山】<很>≪宣 宣气𢿱 生萬物 有石而高≫高山靜止不動 不動如山
53<水⊂出丹陽黟南蠻中 東入海>漸進
54歸妹<女嫁><女弟>女子出嫁
55<行禮之器>豐盛
56<軍之五百人爲旅>探索
57【011風】<具>≪八風・・・≫無孔不入
58【110澤】<說><光潤>喜ス
59<流𢿱>渙散
60<竹約>節止 節制
61中孚<內><卵孚>誠信
62小過<物之微><度>稍有過失
63旣濟<小食><水⊂出常山房子贊皇山 東入泜>安定
64未濟<味(六月 滋味 五行 木老於未)><水⊂出常山房子贊皇山 東入泜>事未成

   ---八卦---(順番には注意した方がよい。)
   乾⇔坤⇔震⇔巽⇔坎⇔離⇔艮⇔兌
   天⇔地⇔雷⇔風⇔水⇔火⇔山⇔澤
   金_____木________
   健⇔順⇔動⇔入⇔陷⇔麗⇔止⇔悦
   馬⇔牛⇔龍⇔雞⇔豕⇔雉⇔狗⇔羊
   ____________鼠__
   首⇔腹⇔足⇔股⇔耳⇔目⇔手⇔口
     (家族の記述は異なる発想。)
     (方位設定は確定的とは言い難い。)
     (名と象からのイメージ展開である。)
  

    

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