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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.3.13 |
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倹約食を考えよう…ウエブでスイトンを検索していたら、お年寄りに作ってもらった話にでくわした。余りに美味しいので、「じいちゃん、これなら戦争が来てもいいネ。」と孫が言って殴られたとのこと。 確かに、経験豊かな人の作ったスイトン、ハットウの類には独特な風味があり、素晴らしい。 そんなことを知ったのは中年になってから。 食べてみたいと言ったが、母は一度も作ってくれなかったことを思い出す。
と言っても、不合理な出費だけは御免被りたいというのが正直なところだろう。 しかし、どのような費用が無駄かは自明ではない。美味しいとか、楽しいというのは、極めて主観的なものだからどうにもならない。実に、つまらぬ話だが、ココ、初心者にとっては結構重要なのだ。お金がかかって、たいした意味がないと感じた瞬間、自炊は頓挫するからである。 そこで、味がわかってきた来たら、倹約型の食を試すことをお勧めしたい。 題材としては「うどん」がよかろう。 なにせ、量は少ないとは言え、讃岐では1杯\100の外食があるそうだし。自炊で勝負できるものか試す価値はあるだろう。結構、高価なうどんもあるから、それより圧倒的にコストパフォーマンスが高いものならできそうな気もするのではないか。 それに、日本全国こだわりの郷土食だらけだし。 料理の初心者でも、「うどん」の味評価能力には期待してもよさそうだ。 ただ、1杯\100との競争と言っても、余りにひどいものはよそう。お金をかけなくとも、美味しいものを追求することだけは忘れないように。 などと言うのは、いくつか想い出があるから。 昔のことだが、観光の閑散期に、奥日光の食堂で「釜揚げうどん」を食べたことがある。お客さんどころか、周囲で歩く人も全く見かけない状況で、これ以外に選択の余地はなかった時のこと。 安物の乾麺をグデグデに近い状態まで茹でたものが容器に入って出てきた。量は、都会の半分。あとは醤油小瓶と、卵1個。舐めるとなくなるような微量の鰹節の削ったものがあったといえばあった。これで1杯\1,000以上。言葉なし。 ついでに、もう一つ昔話。 山懐での手作り食を食べに、その筋では知られる農家に泊まりに入った時のこと。酒饅頭、饂飩、じんだのたまち(馬鈴薯の煮物の一種)の賞味が目的だったのだが、お客は我々夫婦だけ。にもかかわらず、とんでもない料理の量で大いに驚いた。とりあえず、量の話はおいておこう。 ご高齢の当主と話がはずんだが、畑仕事をすれば健康になるというお話と、小麦粉食品は美味しいとのご高説を拝聴させられたと言った方がよいかも。ただ、その美味しさを出す秘訣があるとのこと。だから、全国から教えてもらいたいとの訪問者しきりだという。そして、笑いながら、商売だから「本当のことは教えな〜だよ。」だそうである。 ハハハ。 前段の話が長くなったが、倹約型の「うどん」食を考えてみよう。 【都会の実践的倹約プランなら乾麺と麺汁購入がよかろう。】 都会なら、安い店での乾麺調達になろう。なかには、小麦粉より安価なものまであるから恐れ入る。麺汁も、大容量モノは、安価な醤油の単価とほとんど変わらないものもある。使ったことはないのでわからないが、店員は質は高いと誇る。大量買取だから、もし質が悪ければ、売れ残り商売あがったりだとのこと。流石、商売人。説得力がある。 もっとも、いくら安いといっても、乾麺購入のためだけに交通費や時間を使えば、とてつもない高級品になってしまいかねないが。 乾麺の品質の差は極めて大きいが、郷土のうどんの特性も様々。従って、安物乾麺が好きになる方がいてもおかしくない。ただ、口に合わないものを大量購入したりすると悲劇。 ともあれ、業務用サイズの乾麺と、大容量の麺汁を購入すれば、1食分30円内には確実に収まりそうだ。と考えるだけでよい。多少高価でも、少量包装を買おう。不味かったらたまらぬ。 【具と薬味を用意し、“ぶっかけ”を賞味してみよう。】 これだけでは、栄養不足。嫌いでなければ、卵10ヶと納豆50g3個パックの特売品をスーパーで購入するとよい。これは、1食分両者合わせて50円で行きたい。 あと、薬味として、根生姜、浅葱、煎白胡麻といった類のものが欲しい。こちらは、安物は敬遠したい。海苔も欲しいところだが、コストパフォーマンスが悪いから遠慮しよう。薬味のお陰で多少コスト増になるが、上記すべてをあわせて食材費は1食約100円。 これなら、サラリーマンの平均的所得からみれば、倹約型プランと言ってよいのではないか。 尚、この場合、うどんの質はそれほと良くない可能性があるから、“ざる”をお勧めする。 ただ、記載してある茹で時間は目安であり信じてはいけない。実際に硬さを確認して、自分好みになったら、火からおろして一気に冷たい水でよく洗う。 あとは、卵と納豆のぶっかけ型でどうぞ。 【倹約型のパフォーマンスを調べる必要がある。】 倹約型食の質を確かめるため、好きな半生麺や乾麺、良さそうな麺汁でも試しておこう。 この時、つけ汁あるいはかけ汁を、自分でとった出汁で作るとさらに楽しくなる。但し、もし作るなら、茶漬用の簡易出汁とりは駄目である。本格的に鍋で、しかも多めにとること。そうでないと、本当の味はわからない。そして、好きなな麺汁を作り、余ったら冷蔵庫保管。汁のレシピはそこらじゅうに出ている。問題は、長くは持たない点。まあ、他の用途に転用もできるが。 ところで、本来は、麺汁は、出汁も含め、“ざる”用と“タネもの”用は違う。もちろん、煮物用出汁はさらに違う。出汁用鰹節の切り方も、用途毎に変えるのが本式。だが、おそらく、そこまでしている店はほとんどなかろう。 そんな味の違いががわかる人がいなくなっていることもあるが、こんなやり方をするなら、最高の出汁が欲しくなるからでもある。だが、今時、そんな出汁だと、麺汁だけで1杯分\1,000はとらないと、経営が成り立つまい。商売は簡単ではないのである。 もし、お金と、時間と、意欲があるなら、こんな味に挑戦されたら如何。 【食べながら、自分にとっての倹約モデルの意義を考えること。】 乾麺・麺汁の倹約モデルで1食100円にしたのは、理由がある。実は、讃岐うどん店の価格ではない。コレ、3食30日なら\9,000になるからだ。 「安い、うまい、簡単、健康的」で「ものは捨てない、残さない」で倹約食生活を送ろうという、魚柄仁之助氏の主張、(1)都会での月9000円の食生活のレベルである。 魚柄流は手間はかかるが安価というもの。一方、乾麺・麺汁の倹約モデルは工業製品の利用で安直そのもの。 どちらが望ましいか考えて欲しい。 小生は、都会で、乾物主体の食生活で“快適”を追求する発想には無理があると考えている。それに、いくら安価でも、余り食材にしていない部位の活用料理は避ける。リスクはどこに潜むかわからないからだ。 うどんの場合、どう考えるべきかは、以下をお読み頂けばおわかりになろう。 【小麦粉からの饂飩作りをしたいなら、何を学ぼうとしているのか考えよう。】 実は、手抜きのうどん作りが魚柄本に記載されている。ともかく、小麦粉を塩水で練って玉にし、一寸こねくり回したら、包丁で切り、すぐ茹でて水洗いというだけ。 これはこれで結構だが、本格的に自炊を始めたい人にとって、どんな勉強になるか考えて欲しい。小麦粉から作る主食は、米から作る米飯とは違うのだ。小麦粉の質の差はとてつもなく大きいからである。
つまり、粉が合わなければ、美味しいものはできないということ。自作すれば美味しいものができる訳ではないのだ。それに、セメント袋のような大きさで小麦粉を購入するなら別だが、乾麺は十分に安いし。(それに、粉は放置すると色が変わる。轢き立て小麦粉を買えるなら自作はお勧めだが、そんなものをスーパーで見たことがない。) つまり、小麦粉食品の美味しい店は、おしなべて、粉屋さんから、特定の仕様の粉を調達しているということ。これだけで相当な差がでてしまうのだ。プロが大手メーカー工業製品のパンは美味しいと言うのは当然である。最適な仕様で最高品質の粉を調達できるからだ。 もっとも、グチャと潰れる食パンを、流石地粉を使うと美味しいと褒めちぎる人もいるから、なんとも言えないが。(うどんのようなスパゲティイが嬉しい人もいるということ。・・・日本文化ではないのだから、そんな好みはあって当然である。) 【好きな食感を実現できるのが、うどん作りの醍醐味である。】 ともあれ、一般家庭が、欲しい小麦粉を入手しようと思ったら、価格は一桁上を覚悟した方がよい。それを乗り越える手段もあるが、料理の初心者がそこまですることはなかろう。 饂飩作りの面白さとは、たとえ粉自体の選択はできなくても、入手した粉の特性を見ながら、それなりに一番美味しい状態をつくり出すことができる点。(蕎麦は素材が悪いと、何をしても駄目である。)しかも、小麦粉以外に必要なのは、塩だけ。従って、手作りに挑戦する価値ある。捏ねたら、適度に寝かせて、その美味しさを味うことに意味がある。手順はウエブの様々なところに記載されている。 轢き立ての地粉は高価だが、もしも、廉価で入手できたら、作るのに十分時間を割き、じっくり味わう価値があるのは言うまでもない。たいていはうどんに向いている。小麦粉特有の香りがする筈である。 --- 参照 --- (1) 魚柄仁之助: 「ひと月9000円の快適食生活」 飛鳥新社 1997年 (イラスト) (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED http://homepage1.nifty.com/NOM/ 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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