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2008.5.21
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中華料理の第一歩…


中国は大陸国。そのことが海産物に対する憧れを生んだのかも。
広東料理の高級食材は海産物の乾物というのが象徴的。
しかも食にこだわる遠方の島国産が上物とされていたようだ。
大切そうに作られた乾物入手の嬉しさは格別だったに違いない。
実は、そんな食材は海産物だけではない。
日本の干し椎茸は垂涎の的だったのである。


 世界中どこへ行ってもフレンチと中華のレストランがあると言われる。前者は外交官、後者は華僑が広めた結果だろう。
 しかし、中華料理がグローバル化する理由は、華僑の人口が多いというだけでなく、現地の素材を使って“中華風”に作れるからでもあろう。和食ではなかなかこうはいかない。和の様々な素材の特徴を、それぞれに合わせて楽しむことに意義があるからだ。
 そこで、中華の特質を実感できる料理に挑戦してみたくなった。食べ易い和風中華料理ではなく、中華の本質に迫る料理を狙おうという訳である。

 と言っても、中華料理は、どんな素材も利用するし、調理の仕方も様々。レシピの数はどれだけあるかわからない。
 選び出すのは至難の業だ。

 そこで、香港「南園」の昔の料理、「十大件筵席」(1)メニューを参考に、香港から遠く離れた異国で、この手の宴会料理を食べようとしたら、どんなメニューになりそうか考えてみた。

 う〜む。そういうことか。
 乾物を本国から取り寄せさえすれば、どこであろうと、高度な宴会料理は実現できそうである。
 ここが中国料理の肝かも知れぬ。

 例えば、以下のようなコース料理を設定できる。(牛・豚肉を食べない国があるので、肉は鶏だけ。)
  茶: 鉄観音
  酒: 地場蒸留酒
  頭盤小食: 山クラゲ
[苔干]、湯葉
  珍味: フカヒレ
[魚翅]/燕の巣[燕窩]/魚の浮き袋[魚肚]/干しナマコ[海鼠]
  家禽(焼): 地場品(家鴨類似)
  貝(煮): 干し鮑
[乾鮑]
  烏賊(炒): スルメ
[干□<魚偏に尤>魚]
  魚(清蒸): 地場品
[ハクレン類似]
  蔬菜(炒): 地場野菜+干し貝柱
[干貝]
  茸(湯羹): 干し椎茸
[花望
  麺(炒): ビーフン
[米粉]+干し蝦[蝦米]+地場野菜
  甜食: 蓮の実
[蓮子]+干し白キクラゲ[銀耳]+くこの実[枸杞子]
  [湯]: 地場鶏

 しかし、こんなコース料理に挑戦する力などないから、どれか選ぶしかない。
 妥当なところとしては、干し椎茸のスープだろうか。

 と言うことで、日本語のウエブを眺めたが、数は多いが、どれも和風中華の感じがする。
 普段の味に合うように調整すれば美味しいものができるかも知れぬが、それでは中華の本質に触れないで終わってしまう。目的から外れる。
 そこで、できる限り、中華らしく作ってみるとどうなるか考えてみた。

 先ずは干し椎茸だが、いろいろあるが、(2)花冬魔ェよかろう。肉厚だが、若いため小振りで傘は閉じている。胞子があるということか。形態的特徴は、傘の亀裂模様だ。言うまでもないが高級品。
 そこまでする必要はないと思うなら、できるだけ肉厚で傘が開ききっていないものを選べばよいだろう。

 そして、なんといっても肝心なのが作り方。
 本場では、丸ごとの蒸し煮にこだわっている。これを守ろうではないか。
 どうしてこの調理法になるかは自明。スープに含まれる肉の脂分と旨みを身に染み込ませることができるし、独特な舌触りと噛み心地を生み出すことができるからだ。結構難しい目標だが、素材さえよければ、蒸し煮なら確実に実現できる訳である。
 この目標、和食でも同じことを追求していると考えがちだが、思想は全く異なる。
 和食では重視する椎茸の戻し汁だが、一滴も入れない。乾燥品臭が出たら失敗なのである。
 と言うことで、手順を書いてみた。
  (1) 柄を取らずに、人肌より低い温度のぬるま湯で戻す。
     (冷蔵庫で戻すと長時間漬けすぎ。)
    戻ったらすぐに水で徹底的に洗う。
     (戻し汁は冷蔵庫に保存し、和風料理に利用すればよいだろう。)
  (2) 間髪をいれずに、軽く茹で、網にあげて冷ます。
  (3) 碗に戻ったシイタケを入れ、上品な鶏のスープを少量注ぐ。
     (前もって調味料が全く入っていない透明なスープを作っておく。)
  (4) これをじっくりと蒸す。・・・お暇なら4時間では如何か。

 料理店のメニューでは、シイタケ以外の素材を加えるが、それは避けよう。
 と言うのは、中華料理の特徴を知るために作っているからだ。
 述べてきたことをまとめると以下のようになろう。
   【姿】 丸々した椎茸の、形の美しさを堪能できる。
   【触】 しっかりした歯ごたえと、つるりとした食感を味わえる。
   【臭】 乾物特有の日向臭さは全く感じない。
   【香】 椎茸の淡い香りが立ち上る。
   【味】 上品なスープ味が椎茸に深く染み込んでいる。
   【旨】 椎茸の旨み成分はごく薄く感じるだけ。

 まあ、出来上がったら時間をかけてじっくり味わおう。
 ところで、ここで、これが中華料理の本質かと思わない方がよいなどと言ったら、せっかく読んできた人に怒られるかもしれぬが、一応ご注意しておこう。
 中華料理には、混合の妙が加わるからだ。
 例えば、この椎茸スープなら、蓮子や枸杞子を加えてもよい。野菜を入れることもできよう。どうすると美味しくなりそうか想像して素材を選ぶのが、本格的な中華料理だと思う。
 挑戦したい方はどうそ。

 --- 参照 ---
(1) 小倉エージの旨いもん食った、いいもん聞いた [2007.1.29]
  http://kitami.blogspot.com/2007_01_01_archive.html
(2) 乾しいたけの名称 大分県椎茸農協組合  http://210.150.204.172/c_oita.html#p07
(シイタケのイラスト) (C) 素材のプチッチ http://putiya.com/


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