トップ頁へ>>> オジサンのための料理講座
←イラスト (C) SweetRoom 
2008.5.28
「料理講座」の目次へ>>>

 


和菓子を作ってみよう…

 蕨粉の希少品化が進んでいる。
 精製の手間がかさむ割にできる量は少ないから、生産者が敬遠するのだろうが、残念なことだ。


 “六月という、この国の曖昧な気候には、熱いお茶で水無月やわらび餅をいただくのがふさわしいと思います。”(1)
 その通りだと思う。

 暑い季節を目前に控え、熱くて渋みがある煎茶で、軽やかな甘さをのんびりと味わうも、いとをかし、といったところか。

 水無月は、6月30日に行われる「夏越祓」用の菓子とされる。6月1日に氷室から取り寄せる氷をイメージした、三角形の白色の外郎の上に、邪気払いとして蜜漬け小豆を乗せたものだ。氷など頂戴しなくても、お菓子の方が余程美味しいし、ご利益もあるぞということなのだろう。
 京都の人たちは、今でもそんな想いをはせながらいただくのだろうか。東京では、夏になると、天然氷を食べに長瀞(2)まで行く人もいる位だから、夏まで残る氷には特別な感情が湧くということかも知れない。

 この水無月、正直のところ、格段美味しい菓子とは思えないが、こんなことを話しながら、のんびり時間を過ごすのにはうってつけである。これこそが和菓子の嬉しさだと思う。
 一方、話をすることを忘れてしまいそうになるのが、蕨餅。小生は大好きである。
 ただし、流し込んだ板状のものを冷やしてから頂く蕨餅ではなく、小さな饅頭の方。(葛とは違い蕨粉は冷やしても固くならないそうだ。)コレ、「包わらび」と言うらしい。
 多少固めのあっさりした小豆の漉し餡を、繊細な弾力感がある蕨粉の薄皮で包んだものに、焦がし黄粉がかかった、小さなお菓子である。表現するのは難しいが、ただただ美味しいといった感じ。もっとも、近くのお店以外では、がっかりさせられどおしである。
 冒頭の引用文も、実は、その本の表紙に蕨餅の写真が掲載されていたので、つい覗いてしまったということ。

 この時期のお勧め生菓子は、もう一つある。本葛(産地名表示義務なし: 中国から輸入, 吉野/筑前秋月/伊勢/若狭産があるようだ.)を用いて、緑色の桜の葉で巻いた、葛桜である。本葛を使っていると、独特な雑味を感じるが、それが風情をさそう。

 さて、前置きが長くなったが、たまには、和菓子作りなど如何。
 お勧めするのは、通称名「水饅頭」。葛で餡を包むだけのもの。スーパーやコンビニで購入できるが、自作にこだわるのは、自分の味が作れるから。

 間違ってはこまるが、和菓子作り一般に挑戦しようと呼びかけている訳ではない。
 例えば、練り切り(餡の細工)など、好きなものを応援したい店で購入するのが一番。職人仕事を眺め楽しむ方がよかろう。
 同じ和菓子でも、水饅頭は違う。この菓子、結構なお値段でも、甘さと食感が好みに。つまり、人によって感じ方が合うとは限らないのだうということ。そのため、自分の好きなものにはなかなか出会えないのである。

 従って、自製は結構お勧めだ。以下、簡単にまとめておこう。
  【材料の準備】
   ・漉餡
     -沢山食べることはないから、餡は購入することにしよう。(作るなら甘さ控えめ。)
     -砂糖が多そうなものは避けよう。(製造者/価格/包装状態/デザインから甘さを推定するしかない。)
     -使用量はレシピ本記載の分量に従わぬこと。餡の量など好き好きである。
   ・葛粉
     -本葛。(高価なので100%ではない葛粉もあるが、・・・。)
     -分量は自分で考えて、好みの固さに。(葛湯を食べたことがあれば、分量の感覚位あるだろう。)
   ・砂糖
     -すっきりした味にするのだからグラニュー糖に限る。ただし少量。
   ・水
     -そのまま飲んで美味しい水に限る。始める前に飲んでみて、不味いと感じたら即中止。
  【用具の準備】
   ・蒸し器とそこに入れる丸底の茶碗[饅頭の個数分]
   ・粉を混ぜる容器と混ぜるヘラ
   ・ダマをとるための漉し網
   ・饅頭を冷やすための大きな丼かボウル
  【作り方】・・・自明だが、一例を記載。
   ・先ず、砂糖を溶かす。濃度の味見をするとよい。
   ・ここに粉を入れて溶かし、漉した上で、電子レンジで暖め(半透明感がでる程度)、ヘラで練る。
   ・生地を容器に入れ、餡を丸めてのせて、ヘラで生地で覆う。
   ・蒸す。透明になっていればよいだけ。普通は10分とかからない。
   ・水を入れた丼に投入。丼ごと冷蔵庫に入れる。
  【食べ方】
   ・30分以内に冷蔵庫から出して、皿に盛る。遅れると、葛が固くなって興醒め。
   ・濃い目の煎茶がよいと思う。
   ・桜の葉をとってきて敷くのも一興。
    (温度ではなく、見かけと食感を楽しむ菓子であることを忘れずに。)
   ・食べつくすこと。(細菌にとっても大いに嬉しいお菓子である。)
  【附記】
   ・「水まんじゅうの素」という商品もある。流石。(でんぷん・くず粉・ブドウ糖・寒天・増粘多糖類・乳化剤)

 尚、和菓子作りなら、葛饅頭でなく、錦玉や水羊羹流し物にしたらという声もありそうだが、どちらも初心者は避けた方がよかろう。
 前者は、自分好みの味や食感を実現して楽しむというより、美しく作ることに注力せざるを得ない。味の訓練ができてから挑戦したいものだ。
 一方、後者は難しすぎる。両国に有名店(3)があるように、水ようかんに関しては、東京は質が高く、プロの品と比較されたのではたまったものではなかろう。小生が好きなわらび粉のお店の水羊羹も悪くはないが、どうしても好きなお店(4)のものが欲しくなる。
 水羊羹は、素材の差もさることながら、「水」を食べるようなものだから、店毎の微妙な特徴に気付いてしまうということ。
 挑戦のしがいはあるが、結果は見えている。 従って、とても作る気にはなれないのである。

 それに、水羊羹は、冬の生菓子だったという話も影響しているかも。昔、日光の林間学校で聞いた話が、どういう訳が頭に残っているだけで、どこまで本当かはあてにはならないが。

 ともあれ、水饅頭は挑戦のしがいがあるから、自作をお勧めしたい。

 --- 参照 ---
(1) 金塚晴子: 「和菓子とわたし」 淡交社 2008年4月
(2) 天然氷蔵元 阿佐美 [長瀞町観光協会] http://www.nagatoro.gr.jp/sisetu/kaiin/asamireizou/
(3) 抹茶菓子本所一ツ目 越後屋若狭八代目主人インタビュー [料亭に愛される江戸の和菓子]
  http://www.shinnichiya.com/sc_saruwakaclumn09.html
(4) 菓匠 菊家 水ようかん
  http://home.h00.itscom.net/kikuya/htm/goodsinfo/seasonalcommodity/mizuyoukan.htm
(水無月・わらび餅の作り方) 「和菓子つくりましょ!」お菓子ネット.com [動画レシピ付] http://www.okashi-net.com/recipe/
  http://www.okashi-net.com/recipe/minaduki/top.html
  http://www.okashi-net.com/recipe/tutumiwarabi/top.html
(わらびもちのイラスト) (C) A.Tohno フリー素材 くいしん房 http://www2.odn.ne.jp/~cfo18640/index.html


「料理講座」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2008 RandDManagement.com