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2008.7.16
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涼を呼ぶササミ料理へのお誘い…


 鶏肉といえば、胸、腿、手羽だ。
 ササミは美味しさからでなく、健康食材ということで食べられているようだ。
 しかし、なかなか良い素材であり、生姜を使えば、夏向きではないかと思う。
 ただ、冷凍品ではなく、新鮮なものを入手したい。


 夏は、風を感じながら、涼しげな肴で冷酒を傾けたいものである。
 そんな料理をご紹介しよう。

 魚にしたいところだが、夏は鮮度を保つのが厄介だから、肉料理にした。人気は、冷シャブのようだが、芸がなさすぎるのではないか。それに、料理の設計や、ある程度味の評価ができるようになれば、それなりに手が込んだ料理も作りたいだろうし。
 それで肉の種類だが、鶏肉にしてみた。そう言うと、胡瓜と腿肉の棒棒鶏が思い浮かんでしまうだろうが、これでは、どこにでもありそうで面白くなかろう。
 と言う事で、同じ鶏肉でも、脂っこいモモ肉ではなく、淡白なササミを使って、“さっぱり”した料理にした。実質的な調理時間はたいしたことがないから安心して試して欲しい。

 ただ、ササミは、この淡白という点が曲者。良質の蛋白質だが、調理すると、パサパサになりかねないからだ。軟らかいから、赤ちゃんや病人用の食事には向いているが、敬遠する人が多いのも無理はない。
 もっとも、給食では「ほぐしささみ(水煮)」(1)を多用しているようだから、その味に慣れていると、美味しいと思うかも知れぬが。

 それは別として、実は、上質なササミは美味しいもの。
 それを知ったのは、相当昔のこと。出張先で晩御飯に入った小さなお店で、ササミを食べるべしと強引に勧められたのである。海のものと違い、陸の生ものは得体の知れぬウイルスや寄生虫に当たる可能性があるのでおことわりたしたかったのだが、そうはいかなかったのである。入って気付いたのだが、メニューは鶏料理のみ。しかも、料理人と1対1の面談状態になってしまったのである。
 止むなく食べることに相成ったが、まさに目から鱗。
 要するに、ササミとは、無神経に火を通しすぎると一気に不味くなるものなのである。
 と言って、リスク覚悟のグルメは御免こうむりたいから、二度と試していない。

 そうなると、ササミを食べるなら、熱をかけてもパサパサ感が出ないような調理技術が必要となる。

 と言っても、そんなことが可能なマジックがある筈もない。
 できることといえば、塩とアルコールで蛋白質を変性させること位。まあ、普通は、熱をかけすぎないよう注意するしかない。
 これだけで、どこまで美味しくできるか、頑張るしかないのである。
 まあ、はっきり言えば、それほど大きな効果は期待できないが、調理を工夫すると、それがかえってプラスに働くかも知れないという逆転の発想。大人が頭で感じる涼しさということ。これなら試しがいがあろう。

 先ず、食材だが、ササミ以外は以下の3種類。これに薬味として根生姜が必須。どれも、量は好き好き。
   1 オクラ、あるいは長ネギ
   2 生椎茸
   3 銀杏の水煮(缶詰/レトルトパウチ)
尚、オクラと長ネギは同居させないこと。これ以外の野菜も入れたくなるが、味の染み具合や柔らかさを揃えるのは難しいので止めた方がよい。それに、雑味が加わると、折角の“さっぱり”感が弱まってしまう。ギンナン無しでもかまわないが、なんとなく寂しかろう。
 調味料としては、酒、塩、醤油、味醂。砂糖はお勧めしないが、欲しいなら、どうぞ。この他には、中華出汁(鶏ガラの出汁の素)。塩分が効いている場合は、煮汁の味調整に塩は不要である。ササミの鶏の旨み味を強化するものと考えて欲しい。
 そして、鍵を握る材料が必要となる。それが、粉ゼラチン、あるいは、片栗粉(葛粉)。どちらを選ぶかで料理は違ってくるし、好みも別れるので、お好きな方を。

■■タイプ1: ササミの煮凝り風(ゼラチン料理)■■
煮魚の煮凝りがお好きな方もあるかも。まあ、洋風ならテリーヌといったところ。しかし、ササミにゼラチン質は無いから、粉ゼラチンを加えて煮凝り風の料理にするのである。当然ながら、冷製。・・・ 脂分が無く、生姜味で、口の中で溶けるから、“さっぱり”感は間違いない。これがお口に合うかは、保証できないが。
【1: 野菜を煮る。】
  ・オクラは邪魔なところを切って丸ごと。
  ・長ネギは10cm程度に切ったら縦割りに。
  ・必ず、オクラか長ネギのどちらかにすること。
  ・生椎茸は柄を取り、傘を半分に切る。
  ・根生姜は薄切りして、さらに線切りにする。
  ・これらを中華出汁でよく煮る。もちろん弱火。
  ・野菜が煮えた頃に、水煮のギンナンを加える。
  ・スプーンで味を確認しながら、調味料を適宜加える。
   (薄味にすること。)
【2: ササミを処理する。】
  ・筋を取るか、筋を切る。
   (熱を通す前に肉を切らないこと。)
  ・酒をかける。
  ・軽く塩をふる。
  ・10〜20分放置する。
  ・電子レンジ[弱]、あるいは蒸し器で、軽く熱を通す。
   (水煮は絶対に駄目。熱を通しすぎると失敗作。)
  ・熱いうちに身を手でほぐす。火傷しないように注意しながら、我慢する。
   (ほぐした身は放置しないで、連続的に次の作業に入ること。)
【3: 粉ゼラチンを加えて熱をとり冷やす。】
  ・野菜を煮ている鍋に下処理したササミを入れて軽く煮込む。
  ・火を止め、別の鍋に煮汁だけとり出し、粉ゼラチンをよく溶かす。
  ・少し冷めたら、適当な容器に中身を綺麗に並べ、煮汁を注ぐ。
  ・冷蔵庫で数時間冷やす。
  ・厚手の皿を冷凍庫に入れておく。
【4: 皿に盛り付ける。】
  ・皿に盛る。

■■タイプ2: 吉野鶏の煮野菜添え(片栗粉料理)■■
こちらは、ゼラチンではなく、片栗粉か葛粉で、とろみをつけた料理。熱いままでもよいのだが、冷まして食べよう。ただ、冷やしすぎると硬くなってしまい最悪。それに、時間が経つと確実に不味くなる。ともかく、できたてを味わう必要がある。・・・ ササミをプルプル食感で味わうことができれば成功。頭のなかで、涼しさを感じとる訳である。なかなか風流なものではないか。
【1: 野菜を煮る。】---[ゼラチン料理と同じ]
【2: 煮野菜を冷やす。】
  ・煮野菜を皿に取り出し、冷ます。
【3: 汁にとろみをつけて冷ます。】---面倒ならカット。
  ・片栗粉を水で溶き、煮汁に入れ攪拌する。
  ・とろみがでたら、煮野菜にかけ、冷ます。
   (さらに冷蔵庫で冷やしたい場合は、20分程度に抑えること。)
  ・別途、“とろみ”を容器に入れ熱を冷まし、食べる際に追加できるようにしておく。
【4: 吉野鶏を作る。】
  ・茹であがり肉を冷やすために、氷水入りのボールを用意する。---無理に冷やさなくてもよい。
  ・鶏肉を茹でるために、一つまみの塩を入れた湯を用意する。グツグツと沸騰させない。
  ・ササミの筋を取り去り、薄く二枚にスライス。
  ・スリコギで肉を軽く伸ばす。---面倒ならスリコギ伸ばしは不要。
  ・葛粉あるいは片栗粉をまぶし、再度スリコギで肉を伸ばす。
  ・沸騰していない湯で軽く茹で、すぐに氷水に入れて冷やす。
【5: 盛り付ける。】
  ・皿の煮野菜の上に茹でササミを盛る。必要なら“とろみ”を加える。

 ササミ料理だけではさみしいから、もう一品つけたらどうだろうか。
 材料は鶏皮としたい。最高級品でも驚くべき安さである。まあ、皮を見ただけで鳥肌が立つ人もいるから、この料理には注意が必要である。拙宅でも小生しか食べない。
 そういえば、ササミは猫ちゃん専用という家もあるそうだ。ササミも無理だったりして。

■■付録: 鶏皮と水菜のポン酢和え■■
【1: 野菜を盛る。】
  ・水菜を洗って、包丁で切らず、手でちぎり、根生姜の細切りと混ぜる。
   (生姜無しでもよいが、“さっぱり”感は出ない。)
  ・大皿に盛り、予め冷蔵庫で冷やしておく。
   (冷やすとシャッキリ感が強まる。)
【2: 鶏皮を処理する。】
  ・先ず、皮に付着している余計なものを取り去る。
   (肉のパックを入れている半透明のビニール袋を裏返しして、手を入れて作業するとよい。)
  ・沸騰している湯に入れ、しばらくくぐらせてから、流水で冷やす。
  ・適当に千切り。皮は硬いので包丁の扱いには十分注意すること。
  ・フライパンを熱し、カリカリになるまで炒める。油はひかない。
【2': 油揚を処理する。】---鶏皮が嫌いな場合の代替品。
  ・美味しい油揚を購入しておく。
  ・油揚を油抜きせず、そのまま魚焼でカリカリに焼き、できる限り細く切る。
   (切ってから焼いたり炒めたりするとバリバリになってしまう。)
【3: 盛り付ける。】
  ・冷やしておいた水菜に混ぜ、ポン酢をかける。

 --- 参照 ---
(1) 全国学校栄養士協議会推薦製品 食材別のレシピ一覧表 ほぐしささみ水煮
  http://www.gakkyu.or.jp/receipt/food.html#sasami_chicken
(鶏の写真) (C) veranda [JS by QPONさん 撮影: 名古屋市農業センター] http://dougafreesozai.com/index.html


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