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←イラスト (C) SweetRoom 
2008.7.23
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夏向きのお漬け物…


 何十年も続く木の桶に入った糠味噌を見かけなくなった。
 こうした糠床を使えば、何でも美味しく漬かるのだが。

 その美味しさを思い出す人も少なくない。

 そこで、小型容器の糠漬けが流行ってきたとか。
 不在の時は、冷蔵庫で保管すればなんとかなるらしい。

 驚いたことに、そんなことに凝るのは、若い人だとか。
 オジサンには、かき混ぜることさえ、できそうにない。

 ←この美しい写真を見て、漬け物の話をしたくなった。


 漬物を自分で作ってみたいと思う人は多いようだが、せいぜいが家庭の味が懐かしいからといった曖昧な理由だったりする。別に、目的意識がなければいけない訳ではないが、はっきりしないと、何をつくるか決まらないのでは。
 どうして自家製を食べたいのか、自分の頭を整理してからの、自家製漬け物への挑戦をお勧めする。

 それはともかく、本講座では、夏の漬け物を考えてみたい。
 と言えば、茗荷か、生姜の千切り入りの浅漬けと思い勝ちだが、それ以外もあるのでご紹介しよう。

 その前に、「漬け物」について一言。

 小生は、5種類の漬け物があると考えている。もしかすると、一般の分類とは違うかも知れないが。
 ちなみに、製造者のデータをご参考に提示しておいた。
 まあ偉そうなことを言えるほど、じっくり考えたこともないし、料理の素人の話だから、そのつもりでお読み頂きたい。
 良い機会なので、拙宅の状況をふりかえりながら整理してみた。

【漬け物の5タイプ】

1つ目は、エスニック型。キムチが代表選手である。
  キムチは、売れ行きナンバーワンのようだ。
  ⇒ 拙宅では、キムチは購入のみ。頻度は低いから、利用は平均以下だろう。
  ⇒ 韓国料理はもっぱら外食かできあい品利用で、キムチには関心が薄いため、評価能力はゼロ。

2つ目は、浅漬け。数日内に食べる必要があるもの。
  一夜漬け用の入れ物を買えば、簡単にできる。
  もっとも、スーパーには商品が沢山ならんでいる。
  ⇒拙宅では、 時々自家製が登場する。茗荷千切り、紫蘇の実塩漬け、丁子のどれかが入っている。
  ⇒ 「浅漬けの素」は便利だとも思わないので使ったことはないが、まあ同じようなものではないか。

3つ目は、長期保存用に塩か酢でじっくり漬けたもの。
  塩がキツイものは、滅多なことではお店には並ばない。
  しかし、農村では今でも結構自家製があり、古漬け料理が続いている。
  尚、日持ちしない系統は、浅漬け類の延長品と考えたらよい。
  ⇒ 拙宅では、一度も作ったことはない。自家製をもらうことがある。
  ⇒ 塩漬けはとても食べれないが、酢漬けの小粒ラッキョウは驚くほどの美味しさ。

4つ目が、現在版漬け物の基本型。しんなりさせた野菜に、調味液を滲みこませたもの。
  長期保存用塩漬けを塩抜きして、調味液に漬け込んだ商品が多い。
  もちろん、浅漬けに醤油味等を加えたものもある。
  ⇒ 拙宅では、時に、切干大根を調味液に浸して冷蔵庫でしばらくおいたものを食べるが、これも漬物である。
  ⇒ 旅行先で美味しければ購入し、しばらく自宅で食べるが、その後さらに取り寄せたことはない。

 おそらく、家庭の味というと、上記の4つではなく、糠漬けを考えるのではないか。
5つ目がこのタイプ。調整した漬け床を使うことになる。
  糠だけでなく、麹、酒粕、味噌も入る。
  ⇒ 拙宅では、糠漬け床を持ったことは一度もない。
  ⇒ 売っている糠漬けは漬かり具合がマチマチでどうも今一歩。3年もの沢庵は好物だが。

 多くの人が作ってみたいのは、この5番目の漬け物ではなかろうか。
 と言っても、糠漬けはえらく厄介。糠味噌の床は売っているから始めることは容易だが、毎日の管理を考えると、二の足を踏まざるを得まい。余程の決心がないとできない代物と言ってよかろう。

 と言って、諦めるのも残念だ。糠漬け以外で挑戦してみてはどうか。
 もちろん簡易版だが、これが結構イケルのである。しかも、夏のお酒の友になる。

【麹の漬け床】
 先ずは、麹版。
 麹というと、年末のベッタラ漬けや、魚が入ったものをすぐに想像してしまうのだが、それほど手をかけたものでなくても、できるものがある。三五八漬けだ。
 ごく最近、たまたま知ったのだが、福島県や山形県が発祥らしい。塩(3)+米麹(5)+米(8)の「漬け床」だという。
 この床に野菜を入れ、翌日食べるものらしい。
 本来なら、自宅で調合するか、プレミックスを買ってきて水を加えて醗酵させ、この「漬け床」を作る手筈。ところが、そんな手間をかけなくても同じようなものを食べれるそうだ。出来上がった「漬け床」を購入すればよいのである。
 こう言うと、糠漬けのようなおおがかりな「漬け床」を想像しがちだが、そんなものとは全く違うのである。量にしてから、大型ジャム瓶より少ない。とても、大きな野菜を漬け込むことができる「漬け床」ではないのだ。
 それではどうするかと言うと、「漬け床」に直接素材を入れず、「漬け床」から大匙一杯程度を採って、素材に薄く塗るのだ。
 塗った後は、密封ビニール袋に入れて、半日程度冷蔵庫に入れるだけで完成。驚くほど簡単。その割に美味しいから驚いた。
 「漬け床」管理は不要であり、なかなかの優れもの。

【酒粕の漬け床】
 こんな漬け物では、どうも「漬け床」を作った気がしないという人もいよう。
 その場合は、酒粕版を試そう。
 こちらは、「漬け床」は売っていないようだ。作るのが簡単だからかも。
 酒粕の質で成果が左右されそうだから、よさそうな酒粕が入手できる時に挑戦することをお勧めする。
 床作りの手順は以下の通り。神経質になる必要はない。
 ・購入した酒粕を、密封ビニール袋に入れてやわらかくなるように手でもむ。
  硬すぎ、ボロボロしていたら、少量の焼酎を加える。なければ、酒でもかまわない。
 ・硬い酒粕の場合は、少量加えて、よくもんでから1日冷蔵庫におくと柔らかくなる。
 ・ある程度揉めるようになったら、味醂を加えでさらに揉んでから、塩を加える。
 ・さらに甘めの味噌を加えて、混ざった感じがしたら完成である。
 ・野菜を入れ、2週間程度冷蔵庫で保管するだけ。何回か使える。

 さて、漬け込む素材だが、どちらの場合でも、大根・人参・セロリでいきたい。大根・人参は皮をむき、袋に入れやすい大きさの棒状に切るだけのこと。セロリも同様に茎で。ただ、筋は取り去っておいた方がよい。
 これらの野菜を選んだのは、硬いので、付着した「漬け床」がはがしやすいからである。
 それに、予め塩もみして水分を減らさなくても、漬けることができる。(水気が多いと床が傷みやすい。)

 尚、糠と違って、麹や酒粕は食べれるから、付着している「漬け床」を洗う必要はない。そのまま頂く。
 付いている方が美味しい。

【ついでに】
 なんとなく想像がつくと思うが、この漬け物は、買い物に行かない時に重宝する。大根・人参・セロリといった野菜があれば、ディップで食べるのも手だが、「和」のテーストを追求すると、味噌で食べることになりがち。これも悪くはないのだが、「洋」のディップに比べると今一歩感が否めない。シンプルなのはよいが、味の深み不足といったところか。(豆腐の味噌漬がある場合は別だ。)
 味噌単独味に比べると、「漬け床」はいかに複雑な味で大人好みだ。しかも、さっぱり感も失っていない。従って、暑い季節に合う。

 ただ、お漬け物だけでは物足りないかもしれない。そんな時は、お刺身をつけよう。もちろん、自家製。
 用意するのは、寒天(粉、糸、棒どれでも)、出汁(インスタントでも本格的でもご随意に)と、乾燥海草(若布、アオサ、棒青海苔、等)。  これだけで自明だろう。乾燥海草を細かく切り、予め水で戻しておき、出汁に入れて、寒天を煮溶かし、冷ましてから冷蔵庫で冷やすだけの話。 醤油や味醂などで味をつける必要はなかろう。
 固まってしまえば、溶けないから、安心して包丁で切れる。山葵醤油でもなんでも、お好きな味でどうぞ。

 --- 参照 ---
(漬物の種類---全日本漬物協同組合連合会) http://www.tsukemono-japan.org/pickle_category/index.html
  ・野菜風味主体漬物
  ・野菜風味に発酵味の加った漬物
  ・調味料の味の主体の漬物
(データ) 食品需給研究センター「食品産業総合動態基本調査より漬物生産量」(年次)
  http://www.tsukemono-japan.org/data/production_annual.pdf
(写真) [Wikipedia] (C) wilbanks (Flickr)漬物屋店頭の糠漬け(京都・中京区錦小路通の錦市場)
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Nukazuke_storefront_by_wilbanks_in_Nishiki-ichiba%2C_Kyoto.jpg


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