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2008.12.3
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素食文化に触れてみよう…


 欧米の都会では、スシ(鮨)から、ス〜シ〜(素食)に人気が移っているとか。
 僧侶OKの卍マークを掲げるレストランが世界に進出中なのだ。(1)
 精進料理の本場は台湾というイメージが定着したということ。


 仏教の普及と食を眺めてきたが、この先は禅宗の時代。ここは現代の精進料理に繋がる本丸。
 当然ながら、解説書は多い。薀蓄を傾けることもできそうだが、その前に、少しグローバルな目で現代の精進料理を見ておくことをお勧めする。
 と言っても、お隣の台湾料理を眺めるだけの話だが。

 台湾の人口は2,300万。そのなかで、菜食主義者は200万人を超えており、(2)その数は増えているという。もともと、Vegan(完全菜食者)が多かったが、神仏混交の日本とは違って、宗教的には9割以上が仏教/道教だから受け入れやすいということもありそうだ。
 実際、街には自助餐型「素食廰」があり、ベジタリアン専用というより、普通の料理の一種にすぎない。
 もちろん有名な高級「素食廰」もあるが、混んでいるようだ。そう思うのは、日本の観光客に積極的に紹介していない感じがするから。と言うとm違い。日本の団体観光客は、空いている時間に呼び込み、お茶とお菓子を供する方針に映る。流石ビジネスマン、ご立派。

 台湾の精進料理は、油分は少なく、味付けも淡白なのが特徴と言われている。そして、高級店の場合は、美しく手がこんだものが多い。当然ながら、海外でも人気急上昇中。
 おそらく、主要顧客はベジタリアンより、宗教的禁忌上避けざるを得なかった人達。中華料理が安心して食べられるから、大喜びしていると思う。
 湯葉(大豆)、麩(小麦)、エリンギ(茸)、を主体とした肉モドキを食べれば、本物の肉より美味しいと感じる人もいるだろうから、流行って当然かも。

 このような「素食」と比べると、日本の精進料理はだいぶ違うことがわかる。法事が主体で、普段食べる食事にはなっていないのである。

〜 京都にある臨済宗本山 〜
-寺院名- -創立者- -開祖-
南禅寺 亀山法皇 無関普門
[大明国師]
東福寺 九条道家 円爾弁円
[聖一国師]
大徳寺 宗峰妙超
[大燈国師]
妙心寺 花園法皇 関山慧玄
[無相大師]
天龍寺 足利尊氏 夢窓疎石
[7国師]
相国寺 足利義満 同上
建仁寺 源頼家 明菴栄西
[千光国師]
 臨済宗の本山が林立する「京」の状況を見ると、意外なことに、精進料理は本流ではなさそうである。ほとんどの高級料理店は「会席+懐石+精進」に対応しており、精進料理とは法事用の会席としか思えないからだ。
 ただ、、観光客向けに、お寺の雰囲気を味わってもらうための精進料理はそれなりに流行ってはいるようだが。

 その理由はよくわかる。「京」の禅寺が権力者と結びついて発展してきたため、料理は「修行僧向け」としてより、「賓客向け」が重要だったに違いないからだ。貴族と官位を得た上流武士が喜ぶものとなれば、宴席料理の伝統が入ってきて当然だろう。
 しかも、「五山」などと序列化で寺を競わせたようだから、料理も煌びやかになったに違いない。

 従って、調理のアウトソーシング(仕出し)化が進んだと思う。お寺のガイドラインに従って、外部の専門組織が賓客を満足させる食事を工夫したということ。流行に敏感で、貴族の習慣や茶道の思想など、なんでも取り入れたに違いない。
 「大徳寺の茶湯面」との俗称があるように、融合してしまったともいえよう。ちなみに、他のお寺は次のように呼ばれているとか。
 特徴がでていてなかなか面白い。
〜 本山近傍のお店(例) 〜
- 店名 - - 特徴 -
矢尾治 >>> [東福寺]仕出し
花末 >>> [妙心寺]仕出・懐石の料亭
阿じろ >>> [妙心寺]四季の料理
奥丹 >>> [南禅寺]勧進料理湯豆腐 
篩月 >>> [天龍寺]朱膳(折敷)一汁一飯五菜
大徳寺一久 >>> 「大徳寺精進料理方 五百有余年」
大徳寺納豆,大徳寺麩,犠牲豆腐,筏牛蒡
紫野和九傳 大徳寺店 >>> 「典座料理」
泉仙 大慈院店[大徳寺塔頭] >>> 鉄鉢を模した朱塗り丸型塗器(7重)
 ・妙心寺の算盤面
 ・東福寺の伽藍面
 ・南禅寺の武家面
 ・建仁寺の学問面
 ・相国寺の声明面
 ・天竜寺の羅漢面

 それはともかく、政治で揺れ動いた寺ばかりだし、廃仏毀釈の際は相当苦労したようだから、茶道を除けば、独自な食文化を残せなかったということかも知れない。

 ということで、今回は、素食を取り入れてみよう。
 以下のようなメニューでは如何。

■ご飯■
■回鍋肉もどき■
回鍋肉は豚肉ブロックを薄切りし、キャベツ、玉葱の乱切りをサラダ油で炒め、スープを加えて、調味料(オイスターソース/甜面醤/豆板醤/砂糖/塩)で味付けして、水溶き片栗粉で絡めたもの。これを精進風にするには、以下に代替するとよい。
 ・グルテンミート(あるいは大豆淡白薄切り品)
 ・胡麻油
 ・豆鼓+味噌
■青梗菜の塩炒め■
フライパン(できれば中華鍋)で軽いサラダ油を熱し、余分な油をとり、青梗菜を炒めたら、少量の水を加えてから塩をふり、火を弱め蓋をして蒸し煮にする。液体を切ってから皿に盛る。
■春雨中華スープ■
ニンジン、ダイコンを細切りにしたものを炒め、酒と野菜スープを加え て少々煮たら、細切り白菜と春雨を入れ柔らかくなったら塩で味付け。
■莢インゲンの酢の物■
筋をとった莢インゲンを茹で湯をよく切る。酢と胡麻油を合わせてから、かける。白胡麻をふりかける。
■白菜塩漬(一夜漬)■
中華だと、榨菜といきたいところだが。台湾では、山東菜がよく使われているようだが。

 --- 参照 ---
(1) 世界各地素食屋 http://www.godsdirectcontact.com/vegetarian/veg_c.html
(2) “Industry Overview − Vegetarian and Organic Foods” Food Taipei[2008.6.18-21]
   http://203.66.210.84/2008/Food/e-news200801/e-news200801en_1.htm
(素食を表す卍マークの写真) [Wikipedia] by Hadge  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Sush_Manji.JPG


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