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2009.1.21
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失敗防止料理法について…


 先ずは蒸せと、袋に記載されている冷凍餃子に出くわした。
 普通は、先ずは焦げ目つけで、その後が蒸だ。

 蒸を先行させると、貼りつき防止になるのは、本にも書いてある。
 ただ、上手く作れば、焦げ先の方が美味しいのでは。


 初心者向きに、色々な料理本があるが、オジサンには役に立たないことが多い。それを克服するために書くというのが、料理の話を書き始めた原点。今回は、それを踏まえた書評。・・・というほどのものではないが、参考になった本があったからご紹介ということ。読んでみたきっかけは、“料理を始めたばかりのころ、私は本当に失敗ばかりしていました。”と記載されていたからにすぎない。(1)

 この本には、実際の料理に当たって、どうすべきかという実践的なテクニックが色々書いてある。役に立つという点では、他の料理本に比べると出色の出来では。うなづかされる点も多い。もちろん、すべて納得という訳ではないが。
 「味見」を重要と見ている点も、この著者はわかっているなと感じさせるポイント。初心者はココができないからである。にもかかわらず、初心者本と言えば、包丁さばきと、調理手順の解説主体なのが不可思議極まる。もっとも、この本はそうでないと言っても、読了すれば味見のコツがわかるというほどではない。

 それはそれとして、残念なことに、読んだ印象を正直に言えば、どうも感覚が違うという一点につきる。
 その理由は単純。
 どうすべきか覚えさせるタイプという点では、他の本とそれほど変わらない印象を受けたから。本に書いてある通りにやってみて、そのやり方を身につけていけば料理は上手くなるよという姿勢に映ったのである。ここだけとれば、一般本とどっこいどっこい。

 なぜ、こんなつまらぬことにこだわるかと言えば、ビジネスの場で生活したオジサンの視点で眺めるから。理屈なしの、「この方法を真似すると素晴らし結果が得られるよ」という提案を嫌う体質が染み付いていると言ったらおわかりだろうか。理屈が自明でない提案は、仲間うちの情緒的なお勧めが多いから、素直に受け入れがたいのである。

 例えば、この本にも、調味料は「サシスセソ」の順番で入れろとの提案が含まれている。他の本にも書いてあることで、これ自体は別に珍しくない。おそらく鉄則だろう。しかし、ビジネスマンはこれさえもすぐにはついていけない。
 もし、こんなことを企業内で提案すれば、必ず、「何故だ?」ときかれる。この答が用意されていない提案ならゴミ箱行き。この世界では、論理を欠く主張は、浅薄な物真似と見されてしまうのである。そんな提案に乗れば、ろくなことがないというのが、経験則として染み付いているということでもあるが。
 そして、次に、どんな質問が続くかも、いわずもがな。「間髪をいれずに順番に入れても、効果があるとは思えないが、その間隔をどうやって見積もるの?」となる。
 ほとんどの料理本はこうした発想とは正反対。まあ、その方が主婦に喜ばれるということかも。

 だが、そのお陰で、オジサンが読むと、誤解を与えかねない法則になってしまう危険性もある。
 次のような「教え」が並んでいたので、解説しておこう。

■正しく「はかる」
 計量スプーンや時間の計測のコツがあるというのだ。確かにその通りである。だが、それほど微妙なら、初心者はまともな調味はできないのでは。
 本質的問題は、どの程度の正確な計量が必要かわからない点で、計量方法ではないと思う。レシピでは全くわからないから初心者泣かせなのだ。
 スプーン一杯の指示とは、0.7〜1.5なのか、はたまた、0.99〜1.01なのか、ということ。要するに、入れすぎたり、少なすぎるとどうなるのかを知りたいのだ。
 そもそも、素材は産地や時期で質は違うし、鍋や加熱機器の性能も様々。乾燥豆料理に挑戦すれば、そんなことはすぐ納得できる。従って、初心者に簡単だからとお勧めしているような本は、現実を知らない専門家が書いている可能性もある。

■調味料のそろえすぎは失敗のもと
 この言葉は、間違った印象を与える。
 酒は普通の日本酒、みりんは本物、酢は穀物酢、こしょうは粒を轢き、だしは昆布と削りがつおを使うことを推奨しているいるからだ。これはその通りだと思う。
 お燗ができる高アルコール濃度の純米酒と、本醸造みりんを使えば、美味くなるのはわかりきったこと。肥後の赤酒もお勧めだ。このような上質の調味料を「揃える」ことは、成功に繋がるのは間違いない。
 小生は、豆腐の味噌漬けが好きだが、これも実においしい調味料となる。もちろん、ディップとしても使える。こんなものも揃えるのは、料理の初心者にとっては嬉しいものだ。定番料理に、こんな調味料を鼻薬のように工夫して使ってみることが力量アップに繋がるのではないかと思う。
 定番モノで、そんな奇をてらうようなことをすべきでないと言う人もいようが、それは違うのではないか。
 油にしても、様々なものを「揃えた」方が豊かさを味わえるのは間違いなかろう。エクストラバージンオリーブオイルの味を覚えてしまえば、離れがたくなる。
 白身の刺身と大根のツマに、砕いたポテトチップ(揚げワンタンの代替)とナッツを散らし、ピーナッツオイルを振るだけでも、中華風の一品として嬉しいものができる。
 魚醤でエスニック感を楽しむのもよいだろう。
 そうそう、塩も良質なものを使うと味は抜群になったりする。
 初心者は「揃える」べきだと思う。

 ただし、ただ、揃えればよいという訳ではない。高価な手作り品が美味しいとは限らないからだ。初心者にとって、選定は簡単ではないのである。失敗もあろう。だが、成功した時の喜びはそれ以上である。従って、どんどん試そう。
 そのためには、良質そうなものを選び、できる限り少量購入するしかない。

 そして、もう一つ重要なことがある。簡便な製品を排除しないこと。
 例えば、インスタント出汁は重宝そのもの。薄味で出汁そのものをじっくり味わう時以外は、それで十分。都会で育った人の場合は、このほうが味の鍛錬になる。
 同じことで、ハーブソルトもお勧め。初心者にはハーブの適正量などわからないから、プレミックスタイプは有難い。
 こうした製品も駆使し、料理バラエティを広げることが、食事の楽しさを生むのでは。

 最後に。
 小生は、予見できる「失敗」はできる限り避けるべきと思う。失敗から学ぶことは多いのは当たり前の話で、学びのために、わざわざ失敗する必要などなかろう。

 --- 参照 ---
(1) 小林まさみ: 「失敗した人ほど上手になれる料理の本」 文化出版局 2006年


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