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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2009.1.28 |
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鹿肉料理を探る…万葉集の「乞食者の詠」には、老牡鹿の全てを利用し尽くす素晴らしさが歌われている。(1) 鹿肉を膾にし、肝も食べていたのである。 だからこそ、山の神様の御遣い役にもなったのだと思う。 残念ながら、そんな伝統は、その後、政治的に抹殺されてしまった。 お蔭で、我々は鹿肉の美味しさもわからない。 牛・豚肉は、切り分けたパック品があり、熱を通し味付けするだけで簡単に食べられるから、日本にも肉食文化が染み渡ってきたと見る人が多いが、多分違う。 そう感じるのは、Gibierの習慣がないから。 といっても、クリスマス頃になると、その雰囲気のメニューをよく見かけることになる。と言っても、せいぜい鹿肉が登場する程度のものでしかない。もっとも、鹿肉人気か、定番化しつつあるようだ。 ということで、サイトを巡回して、鹿肉評を眺めてみたが、どうも芳しくないようだ。癖があるとか、臭みを感じるという話が多い。なかには、硬いからわざわざ食べるものではないという指摘まで。 鹿肉と言えば、赤みで、癖がなく、素直な肉なのが普通なのだが。 どうしてこうなるかと言えば、美味しい肉は若い雌鹿という常識を欠くからだ。欧州型の肉食文化は輸入されたようで、実はされていないということ。 そんなことを、つい言いたくなったのは、最近、スーパーで塊肉が買えなくなったから。置いてなかったり、切り分け品より高単価だったりするからだ。塊肉は嬉しくない人が多いから、こうなるのである。まことに残念。 ついでといってはなんだが、鹿肉について聞いた話をお伝えしておこう。どこまで本当かは不明だが、素人相手に売られているものは、老鹿肉が多いとか。どうせわかるまい、ということだろう。 一方、もらいものの肉の場合、下手な血抜も多いという。そうなると、血液の腐臭が残ってしまうという。サイトの経験話は、こうした肉が対象なのかも。
生物としての分類や、大きさや年齢上の区別に見えるが、これは食材としての対象としての分類だと思う。もちろん、彼らにとっての垂涎モノは、小ぶりの“ノロ鹿”に決まっている。そして、そのなかで肉質が柔らかい低年齢品が嬉しいに違いないのである。 ただ、野生動物だから、個体差は大きい。まさに、それに合わせるかのように、“faon, here, daguet, brocard”といった言葉まで別途用意されている。お蔭で、なにがなんだかよくわからないのが正直なところ。 日本人だと、せいぜいが鹿肉としての言葉は、“faon”と“chevrillard”しか馴染みがないのでは。 その理由は、洋行帰りの人の食事話を本で読んで得た知識しかないからだろう。しかも、洋行したインテリと言っても、和食党かも。どこまで本当かは知らぬが、埴谷雄谷もフランスで、辻邦生にご飯ばかりごちそうになっていたそうだし。両者ともに、小生にとっては、学生時代の小説家だから、さもありなんという感じではあるが。 ちなみに、日本での養鹿は、日本鹿が大半で、これに次ぐのが赤鹿[大角:英語“Elk”]。水鹿とダマ鹿も僅かあるといったところ。(2) おそらく、売られている国産鹿肉は日本鹿のうちの蝦夷鹿だろう。(地域毎の変種・・・蝦夷鹿,本州鹿,九州鹿,馬毛鹿,屋久鹿,慶良間鹿,対馬鹿)それより、輸入モノ(ニュージーランド産をよく見かける.)は安価だが、こちらは、赤鹿とダマ鹿と見てよさそうだ。 話が長くなったが、なにが言いたいかといえば、“鹿肉のローストに赤スグリ(Groseilles/Redcurrant)のソース”を賞味することから始めるべきだということ。もしも、美味しく感じなかったら、保守ガチガチの和食党かも。スグリの甘さが入るソースでこそわかる、肉の味だが、それはインターナショナル派にしかわかるまい。 もっとも、肉の質が悪いということもあり得る。たいした量を使う訳ではないから、信頼できるレストランでお試しになったらどうだろう。 まあ、家庭料理として、鹿肉に挑戦するなら、老鹿の肉にぶち当たる可能性が高いから、紅葉鍋がよいのではないか。 山間部の温泉旅館では結構登場するから、お馴染みの人も多かろう。適当な味噌味で野菜と一緒に煮るだけの簡単料理である。注意することがあるのかよくわからないが、“和”と、“野趣”を大事にしたいなら、ゴボウだけは忘れて欲しくない。おそらく、それが煮えてから肉を入れないと、煮込みすぎて美味しさが損なわれるのでは。 肉の味がわかったら、フレンチに挑戦といきたいところだが、それよりは好きなお店を見つける方をお勧めしたい。 ただ、その場合、お酒はハウスワインに留めておこう。その資金は、他の料理の勉強に回して楽しもうではないか。 --- 参照 --- (1) 万葉集巻十六 3885 [訓読万葉集] http://www.asahi-net.or.jp/~SG2H-YMST/manyok/manyok16.html (2) 「養鹿実態とシカ亜科に関する遺伝的撹乱の可能性について」環境省 特定外来生物等分類群専門家グループ会合 http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/mamm_bird04/mat01-8.pdf (Lucas Cranach l'Ancien, Paradis, Vienne) [Wikipedia] http://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:Lucas_Cranach_d._%C3%84._035.jpg 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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