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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2009.8.26 |
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鶏胸肉料理の検討方法例…鶏胸肉の原価割れ販売が広がっているようだ。 と言うことは、他の部位は、その分をカバーする価格設定がされている訳だ。 それは、たまらぬ。 高級な鶏でも、捌いた胸肉は超廉価。 もともと安価な輸入冷凍ブロイラーになると、胸肉のまとめ買いパックは、付け間違いかと思うほどの底値。 一羽モノが売れない日本では、人気がない部位は、ここまでいくのかと、思わず感慨に浸ってしまうほど。 なかなか買おうとしない理由はよく知られており、調理すると、パサパサしがちだから。まあ、確かに、不味いと感じる商品に、いくら安いといっても、お金を出して買う気はなかなかおきなかろう。 だが、本当に不味い素材なのだろうか。少し考えてみたい。 パサパサの根源だが、脂分と水分が少ないということである。それに、繊維質が多少硬いということもありそうだ。 それなら、この素材を上手く使って、この欠点を埋める工夫をしたら如何かな。力のみせどころというほどではないが、頭を使えば、料理の勉強になるのは間違いあるまい。 多少理屈っぽくなるが、分析的に対応すれば、この程度の問題はなんとかなるのではないか。 解決には、2つの方向があろう。 1つは、どうせパサパサになるなら、それがかえって美味しく感じるとか、たいして影響が無い料理で使うやり方。 肉の水分量を減らすタイプの、蒸し鶏料理はその類と言えそうだ。燻製風味付けをするとか、美味しいタレを容易すれば、まあまあのものになるのでは。しかし、面白い路線とは言いがたいが。 もう1つは、パサパサ感を無くす技術を駆使する方策。 すでに述べたように、水、脂、繊維の3つ課題があることがわかっているのだから、ちょっと知恵を絞ればよいだけ。余り深く考えず、対処方法を並べてみよう。たいした内容ではないが、我慢してお読み頂きたい。 箇条書き整理だと余りに味気無いので、適当に文章にしてみたが、変わらないか。 【水分が出きらないような加熱料理方法を採用する。】 これが、オーソドックス。 方法としては、水分離脱時間を短くするか、単位時間当たりの水分離脱量を減らすかのどちらか。 前者なら、できるだけ薄切りにして、一気に加熱し、すぐ皿に盛ることになる。肉を投入しても温度が下がらないようにする必要がある。厚手のフライパンを使い、予めよく熱しておくことと、肉を一度に多量に入れないことで、十分対応可能。 後者は、水分が出にくい状態で、長時間、低温加熱するだけ。乾燥を避けるには、そのまま冷ます必要がある。言葉では簡単だが、保温・温調機能がある器具を使わないと素人には難しいかも。 【物理的に水を滲みこませる。】 加熱調理前に、液体が滲みやすいように肉に傷をつけてから、水に20〜30分漬ける。このような調理方法は、日本人には心理的抵抗感がありそうだから、この作り方で提供したい人は、他言無用。 水でなく、浸透し易い調味液も作れそうだが、素人には無理だろう。 【肉の蛋白質を化学的に変性させて、肉質を若干軟くして、保水量を大幅に増やす。】 一番確実な化学物質は酸である。酸処理すれば、柔らかくなるは間違いなかろう。ただ、強い酢を多量にかけると、酢味が残り食べたくなくなるだろう。と言って、弱い炭酸では、堅い肉質には歯がたちそうにないし。 味を考えると、軽目の酸味液で肉を揉み、数時間以上漬けてから、加熱調理という手がよさげ。(果実液、ヨーグルト、醸造酢、等。) 果実のなかには蛋白質分解酵素を沢山含むものがあり、長時間酵素反応させれば、肉が柔らかくなると同時に、肉の熟成味が生まれる可能性もありそうだ。(パパイヤ、パイナップル、マンゴー、イチジク、キウィ、等。)まあ、酵素より酸の効果に期待した方がよいと思うが。 さらに、酒を振るという手もある。まあ、酢と似た効果だが、かなり弱いと思われる。(アルコールも蛋白質構造を変えるようだ。(1)) 【脂あるいは油を滲みこませる。】 油で長時間煮れば、味は確実に変わる。ただ、水が沸騰する温度に至れば逆効果。そうなれば、食べれたものではないかも。ともかく、低温長時間加熱に徹すること。(60度位が安全だろう。70度を越すと、部分的に高熱になる可能性がありそうだ。) 温度管理が面倒なら、予め、油で肉を揉むという物理的に浸透させる方法もあろう。人工的に油を注入している気分は、どうも心地悪いと感じるかも知れぬが。そんな人は、調味油で味付けしていると考えたらよい。 マヨネーズなら、油だけでなく、酸も含まれており、ダブル効果だ。マヨ唐揚げ大好き人間には、ドンピシャ。 小生は鶏の唐揚げは余り食べないので、その辺りの機微はよくわからぬので、見当違かも知れぬが。 【加熱時に肉汁が流出しないように、表面に膜をつくる。】 誰でも考える方法。脂分が多い肉の表面だけ軽く焦がす処理は効果絶大だが、水と脂が少ない肉の欠点を補なうことは無理。 重要なのは、全表面を確実に覆うこと。粉をまぶしてからの加熱がよかろう。小麦粉ではなく、片栗粉がお勧め。それはトロミを感じさせるからだ。ただ、パサパサ感を補償する効果は期待できない。 トロミという点では、水飴や蜂蜜で表面をカバーする方法もなかなかのもの。もっとも、グリルでこんなことをすると、焦げ付かせることになりかねないが、上手く仕上げれば艶のある“照り焼”になる。 【硬い繊維を切る。】 物理的に繊維を切って柔らかくしてから、他の方法を併用すると効果的。ジャカード[針状]ナイフを使うとよいのだが、そんな道具を持っているオジサンなど稀。鋭いフォークやナイフで傷つければよいだろう。気分的にのらないかも知れぬが。 調理後に、フードプロセッサで微塵にしてしまうのも悪くない。繊維の堅さなど関係なくなるからだ。これが面倒なら、包丁で微塵切りにすればよいのである。 まあ上記は、とりあえず整理してみただけ。ここから結論を引き出すようなことは止めた方がよい。 さらっと読んで、ふと思いついた手法で、試してみるのが一番。ひらめき重視ということ。 当たり前だが、条件によっては化学反応は起きないし、反応は時間がかかることが多い。それに、肉によっても、効果は大きく違うし、調理の正確さも結果に大きく影響する。パラメーターが多すぎて、実験計画法で調理したいエンジニアなら別だろうが、直感的に決断するのが最良。これが直観になればたいしたものだが、それは高望みというもの。 要するに、頭で考えても、たいして役にはたたないのだ。しかし、当たるも八卦でやれば、ハズレ間違いなし。時間の無駄。 当たらなかったら、自分はセンスが無いと諦めるだけのこと。 もし、センスを磨きたいなら、料理でなにをしたいのかじっくり考え、本気で取り組むこと。これに尽きる。知識は必要だが、邪魔になるものでもある。こんな話、余計なお世話だったか。 具体的な料理に戻ろう。 例えば、安価な定食屋家業的気分で調理したいなら、輸入冷凍ものを解凍して使うことになる。ジャガードナイフを入れ、20〜30分間水に浸した後に、氷水で表面を締め、蜂蜜を塗って衣をつけ、比較的低温で唐揚にするのがよろしかろう。試したことなどないから、頭のなかだけのレシピ。お勧めはしないが、試みる価値はありそうだ。 まあ、一般家庭料理ということなら、皮と黄色い脂肪の部分を完全に取り去った肉の薄切り焼はどうか。フォークで満遍なく傷をつけたのち、調味料とマヨネーズを混ぜたタレでよく揉み、数時間以上漬けてから、さっとフライパンで焼くのがお勧め。いい加減な調理でもそれなりに食べることができる。注意すべき点は、加熱し過ぎないこと。 調味料としては、オイスターソースが手頃かも、マヨネースとはそれなりに合う。お好きなハーブを入れるともっと楽しめる。 残ったタレは、つけあわせの野菜炒めにつかえばよい。 美味しくたべたいというのなら、低温の油煮に限る。水は飛ばないし、脂分が肉のなかに入るから、パサパサ感が出ることはない。 ただ、オジサンの場合、この料理ができる人は限られる。 スキルの話ではなく、健康上の問題。心おきなく食べれる人は稀。 脂の海に浸かる肉と聞いただけで、その恐ろしさに目が眩むのが普通。 でも、たまには。・・・などと言うと、食べたくても食べれない人に嫌われそうだ。 とんでもなく美味しいのですぜ。・・・そんなお誘いの言葉をかけたりすると、その精神の緩みがイカンと、お説教を喰らいそう。 尚、作り方は簡単である。香辛料を振った肉を、油で煮るだけ。油は、サラダ油やオリーブオイルでもよいが、折角だから、鶏皮を暖めると出てくる脂はどうか。皮はとんでもなく安価だから、鶏肉と一緒に買ってくればよい。 油で数時間煮れば、肉は柔らかくなる。(温度管理が悪いと大失敗だが。)そして、そのまま冷ます。油漬けなので、すぐに全量を消費する必要はない。食べたい分だけ肉を薄切りして、グリルで軽く焼く。上質の肉ならソースなしでも美味。 要するに、鴨でなく、鶏胸の“コンフィ[confit]”(2)である。 ついでに、“リエット[rillettes]”(3)もどうかな。仕上がりが今一歩の場合は、自作の、油煮ツナ/カツオ缶として使おう。(缶詰も“シーチキン(R)”と呼ばれているし。チキンと言っても、ムネではなく、ササミだが。ただ、水煮缶しか使わないご家庭はどうにもならないが。) 上手くできれば、バゲットとワインだけで、こたえられぬ。 なにを考えているのといった文句を浴びる可能性もあるが、その時は、よくある豚肉リエットと違い、コレ、脂はずっと少ないのだヨという答えしかない。食べてもらえば、怒りもおさまると期待して。 --- 参照 --- (1) 廣田奈美,他: 「蛋白質に対すアルコールの3つの作用の統一的理解」生物物理 S29 [1997年] http://ci.nii.ac.jp/naid/110001152014 (2) [このレシピで使用する肉は胸ではなくモモ.] Mark Bittman: “Recipe of the Day: Chicken Confit” NewYorkTimes [December 26, 2008] http://bitten.blogs.nytimes.com/2008/12/26/recipe-of-the-day-chicken-confit/ (3) [胸ではなく手羽.] “Technique: Chicken Rillettes” An Obsession with Food & Wine [April 19, 2008] http://www.obsessionwithfood.com/2008_04_01_blog-archive.html (金のトリのイラスト) (C) 素材屋じゅん http://park18.wakwak.com/~osyare/index.html 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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