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2009.9.9
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コーヒーを愉しむには…

バッハの音楽には宗教性を感じるものが多い。
コーヒーを愛する未婚の娘が登場するカンタータは異質。
“Schweigt stille, plaudert nicht (Kaffee-Kantate)”(1)
バッハはコーヒー無しでは作曲できなかったのかも。
そう言えば、“コーヒールンバ”(2)も愛の話だ。
コーヒーアロマは若人の恋の特効薬ということか。
オジサンは、「頭にガツンと一発」期待だが。

↑ (C) EyesArt フリー画像素材EyesPic
 たいして美味しくないコーヒーを出すだけの喫茶店は、未だに一部地域で残ってはいるが、都会では廃れたと言ってよいのではないか。
 先日、地方の駅前で喫茶店に入ったら、香りがしない、ドロのようなコーヒーを出されて、まだそんな風習が残っているのに驚かされた。もっとも、メニューに“山菜うどん”があったから、食堂なのかも。
 東京は、コーヒーショップ乱立状態と言ってよいのではないか。ファーストフード系も加えると、すごい店舗数だ。

 豆も、至るところで売っている。スーパーでも様々なものが並ぶし、コーヒーショップも独自ブランド袋詰めを売っている。もちろん、コーヒー豆専門店もあり、プレミアム品を売る店も増えているような印象がある。

 しかし、その味には相当な差がある。
 自宅で飲むには、どうすべきか、じっくり考えてみるのもよいのでは。

 コーヒーの難しさは、味を左右するファクターが余りに多いこと。
 簡単に手に入るのは、焙煎した豆か粉だが、これがピンキリ。しかも、様々な種類が並ぶ。酸味、苦味、濃く、香り、甘さ、等の説明はあるが、飲んでみた印象と合っていることは稀。
 そして、淹れ方も色々。
 好き好きとはいえ、選択肢が多すぎて、なにがなんだかわからぬといったところ。

 ただ、これは美味しいと感じさせる特別な珈琲を出す店があるのは事実。そんな味を家でも出したいと思うのは人情。しかし、真似はできそうにないから、自己流の美味しさを追求することになる。
 そんな話をしたりすると、Barista/コーヒーマイスター(3)の修行をすべしいう人もいるようだが、そこまで踏み切る気にはなれぬ。

 そこで、少し、考えてみることにした次第。(気に入っていた珈琲豆屋さんが、先日閉店してしまったこともあるが。)

 あくまでも体験論なので、ご参考になるかはわからぬが。

 小生の場合、最初は、専門店挽きの豆はネル袋、米国からの輸入缶入り粉は電動サイフォンで飲んでいた。親の好み。
 これらは後始末が厄介なので、一人住まいになったとたんに止めてしまった。ただ、どうもインスタントは苦手なので、違う淹れ方を始めた。
 と言うことで、先ずは、その辺りから。

■淹れ方■
 思うに、豆の調達方法が習い性になってくると、美味しく飲むためには、水と淹れ方が勝負となる。水が駄目ならどうにもならないが、緑茶が美味しく飲めるなら十分と考えている。
従って、淹れ方をどうするかが、重要な問題となる。実際、結構、味が変わるのである。結局のところ、拙宅は、4種類並存状態。
どう考え方ているか、振り返ってみた。
【プレス式金属ポット】
サイフォンは見た目が面白いが、要は熱い湯のなかに粉を熱湯に浸して攪拌するだけだ。それなら、予め暖めておいた大きな保温ポットが優れていそうだと考えて使っている。豆の油分を感じることがあるから、新鮮な豆の挽きたてでないと、不味くなるのではないか。
粗挽きよりは、多少細かな方がコクがでる感じだ。それと、最初に蒸す程度に湯を注ぎ、暫くしてから、一気にお湯を差すとよい。
【プラスチックフィルターの機械ドリップ(1ッ穴)】
ネルドリップは面倒この上ないのでコーヒーメーカーにした。すでに、何年も使っている器具だ。購入時、輸入電器製品店の専門家に相談したら、ドリップ方式のコーヒーメーカーの場合、安物と高級品の違いはデザインだけと言われたので、選定に気を使っていない。しかし、今や、蒸らす等の機能が登場しており、通用しなくなっていそうだ。買い替えしたいところだが、えらく丈夫で壊れる兆しがないので果たせない。拙宅の機械は、紙フィルターは、使用できるが、全く使っていない。紙臭さを感じてしまうことと、豆から出る油分が紙に吸収されそうな気がするので。
【金属フィルターのハンドドリップ(1ッ穴)】
ドリップの場合、最初に粉を蒸らし、その後、湯をじっくり注がないと、本当の美味しさはわからないと聞き、ハンドドリップも併用している。確かに、同じ豆でも、機械式ドリップより、こちらの方が美味しく感じられることがある。しかし、ほとんどかわらないこともある。湯の注ぎ方のスキルなのか、粉の挽き方の違いか、原因はわからないまま。
美味しくする一番のコツは、豆の分量を多くすること。どういう訳か、規定量では、さっぱり美味しくないのである。スキル不足ということなのだろうが。
【蒸気式エスプレッソマシーン】
もともとは、直火式のエスプレッソ器具(“マキネッタ”)を使っていたが、ついていないといけないし、面倒なので、電気製品にした。慣れている、蒸気式を選んだ。しかし、電気店に並ぶのは、かなり高圧がかかるものばかり。短時間で抽出できるから、雑味は少ないと思われるが、圧力ゲージがあったりとかなり高度な機械のようだし、製品差がありそうなので未だに様子見。小型のポータブルマシーン(4)も魅力的だし。
粉の細かさで、味が変わるので、注意を要する。それと、軽く粉を叩くことを忘れると、味の深みが落ちる。
【他】
書いていて、学生時代、山歩きにパーコレーターを持っていったことを思い出した。他に手がなかったからだが、これは美味しいものではなかった。豆が安物という点を差し引いても。

■挽き方■
淹れ方にいくら力を入れても、美味しいのは、やはり挽き立て。香りが全くちがうからだ。淹れたとたんに、部屋に芳香が満ち、頭が活性化される気がする。これが欲しいなら、コーヒーミルは必需品。
プロペラ刃型電動コーヒーミルを使っている。汎用粉砕機も使っているが、結果の差はほとんど感じられない。粒度は豆の硬さと時間で大きく変わるので、コントロールは難しい。それに、華奢な刃を高速回転させるので、豆は熱くなり香気成分が飛ぶかも。
手挽きミルなら、粒度調整もできるし、熱くなることもないから、味にはよいと思っているが、ご遠慮申しあげている。時に一杯飲むような人ならよいが、時間がかかりすぎる。現実的ではない。
本格的に楽しみたいなら、業務用がお勧め。粒度は一定だし、粉砕で熱を持つこともない。ただ、高価だし、サイズが大きすぎる。しかし、その効果は大きいを思う。超高価な豆を購入される方なら、必需品では。 ベストを追求したいなら、最適な業務用小型機械がある。とてつもなく高価だそうである。特許リード刃を使用した「夢のローラーミル」。(5)日本人はコーヒー豆の粉砕にそこまでやるのだ。

■豆の保存■
淹れ方と挽き方にいくら力を入れても、豆の質が悪ければどうにもならない。新鮮な良質な豆を使うに限る。
油分はすぐに酸化するようだし、湿気が入ると香りは失われるから、劣化速度を抑える工夫は必要だろう。 酸素の遮断、湿気防護と、遮光、低温保存に努めるしかない。家庭で一番適している場所は冷凍庫。そこで、短期間だが、冷凍庫にいれている。もちろん常温に戻してから挽くが、下手をすると結露しかねないので厄介。余り出し入れしないことと、手際よく作業をすることで対応しているつもりだが。

■ロースト[焙煎]について■
ともかく、味を大きく左右するのは素材。しかし、売られているコーヒー豆とは、低加工度の農産物。 安定した品質を期待したいなら、半工業製品的な大企業のブレンド焙煎豆がベストだろう。酸素を遮断して売られているし。 しかし、焙煎仕立ての豆はやはり美味しい。香りの豊かさが違うからだ。
生豆も売っている店があるので、その気になれば、自分で焙煎することも簡単とされる。生豆をガスコンロ上で焙煎している珈琲店主の話である。ただ、豆にあった煎り方が素人にできるとは思えないが。
それに、1種類の豆だけのストレートは今一歩のものが多いから、豆毎に焙煎するとなると厄介だ。
小生は、ロースト度合いで豆を選ぶことが多い。完璧深要りの黒いイタリアン(エスプレッソ向き)は大好き。ブラック好みなので、フレンチ(カフェ・オレ向き)よりも濃い味になるのがが嬉しい。一般に、ローストすると酸味が消え、苦味が強くなるそうだが、濃い褐色のシティで酸味を感じるのも嬉しいものだ。売れ筋は中煎りだから、回転が悪そうな店ではこの手の商品は買わない。購入時に、その場で焙煎してくれる店が一番だが、そんなお店は少ない。
早い話、まともに焙煎している店なら、まず間違いなく美味しいということ。

■ブレンドについて■
一般に、単品ローストは、超高級な豆は別だが、味のバランスが取れているものは、どうも軽薄な感じがする。深みが乏しいと言ったらよいだろうか。単品はなら、これぞ ストレートならではと感じるような、特徴がある豆が嬉しい。
一般的には、ベースの豆に、味の調整用として1〜2種類加えたブレンド品がよいと思うが、これを自分でやるとなると豆毎に焙煎しなければならないから、大変な労力だ。

■豆について■
結局のところ、行き着くとことは、コーヒー豆。だが、どれを購入すべきの判断はとてつもなく難しい。もちろん解説書は色々あるが、いくら読んでも、どうもよくわからぬ。ざっと産地を並べてみたが、余りに多すぎる。しかも、国が同じでも、産地や品種で質は大きく違うし、同じ地域産でも高度が違ったリ、豆のサイズや不良の混じり具合で、品質の差がでてしまう。これは素人が手出しできるものではなさそうだ。
【カリブ海】
 ・ジャマイカ産 “ブルーマウンテン”、“ハイマウンテン”
 ・ハイチ産
 ・ドミニカ産
 ・キューバ産 “クリスタルマウンテン”
【中南米】
 ・グアテマラ産
 ・コスタリカ産
 ・コロンビア産 “エメラルドマウンテン”
 ・エクアドル産 “アンデスマウンテン”
 ・ペルー産 “エルバルゴマウンテン”
 ・ブラジル産 “サントス”
【太平洋】
 ・米国ハワイ島 “コナ”
【中東/西アフリカ】
 ・イエメン産 “モカ マタリ”
 ・エチオピア産 “ハラー”
 ・ケニア産
 ・タンザニア産 “キリマンジャロ”
【アジア】
 ・インドネシア・スマトラ島産 “マンデリン”、“ガヨマウンテン”
 ・インドネシア・スラウェシ島産 “トラジャ”
 ・インドネシア・ジャワ島産
 ・インドネシア・バリ島産 “キンタマニ”
 ・ベトナム産
 ・パプア・ニューギニア産

〜 生豆輸入価格 〜
[2008年通関統計]
- 国 - - \/Kg -
[総平均] 315
[グラフ表示国] 305
ベトナム 235
インドネシア 260
ブラジル 300
コロンビア 344
グアテマラ 373
[グラフ非表示国] 439
ケニア 426
ハイチ 746
イエメン 772
キューバ 760
ジャマイカ 2,558
アメリカ合衆国 2,850
ただ、数字を見れば、気付かされる点もある。
 ・ベトナムの輸入量は多いが、販売店で表示されているのを見たことがない。
   インスタントと缶・パック用だけということはあるまい。
 ・色々薀蓄はあろうが、4ヶ国を試すのが基本では。
   ブラジル、コロンビア、インドネシア、グアテマラ。
 ・“ブルーマウンテン”は希少価値商品ということ。
   コストパフォーマンスはとてつもなく悪そうだ。
   おそらく、全量日本に来ているのではないか。
 ・小売価格が思ったほどでない“コナ”を見かけたが、混ぜ物ではないか。
   人件費を考えれば、とんでもない高額商品でもおかしくないのでは。

要するに、産地はイメージでしかなく、味についてはたいした参考にならない。そんなこともあり、最近は、素性と品質を明確にした、「スペシャルティコーヒー」が出回るようになってきた。ただ、品物だけ出されても、素人には評価のしようがない。アドバイスしてくれるお店を見つけることが一番だろう。

 なにかお役に立つような話が含まれていただろうか。

 --- 参照 ---
(1) [一部音楽+訳詞] MIDIの小部屋(デデ謹製) “コーヒーカンタータ[BWV211]”
  http://www.asahi-net.or.jp/~SL9K-MTFJ/coffee.html
(2) [訳歌詞] 「コーヒー・ルンバ 西田佐知子」 作詞: Jose Manzo Perroni・中沢清二訳
  http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND40835/index.html
  [スペイン語元歌詞] “Moliendo cafe” KARAOKE
  http://www.redkaraoke.com/songs/moliendo-cafe/8223
(3) “World Barista Championship ”
  http://www.worldbaristachampionship.com/
  「コーヒーマイスターとは」
  http://www.scaj.org/meister/314.html
(4) “Simply espresso” Stelton
  http://www.stelton.com/ProductView.aspx?id=355
(5) 「RG-03 コーヒーミル」 井上製作所
  http://www.inoue-seisakujo.jp/roasters/rg03/rg03.html
(参考書) 田口護監修: 「コーヒーの事典」 成美堂出版 2008年
(通関統計) http://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?
  M=01&P=1,2,,,,,,,,4,1,2008,0,0,0,2,0901,,,,,,,,,,1,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,100
(コーヒーカップの写真) (C) EyesArt フリー画像素材EyesPic
  http://eyes-art.com/pic/


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