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2009.11.25+追記[2009.12.1]
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お好み焼きを考えてみた…


 お好みの ソースが焦げて 気分乗り
  お好み焼き好きの方には、ソースへの特別なこだわりがあるようだ。

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お好み焼きの本場は関西という訳でもなさそう。
 ホットプレートでお好み焼きでも作ってみるかということで、どう調理するのがよいのか考えてみた。
 本場は関西だろうからと安易に考えていたら、どうもそうでもないらしい。
 実際に調べた訳ではないのでどこまで本当かわからないが、“図書館や書店へ行っても、お好み焼きに関する書籍や著述がほとんどない”そうだ。(1)“大阪の郷土料理あるいは伝統料理としては、あまり認知されていません。”とのこと。

 感覚的には、そうは思えないが。と言うのは、どのような作り方をするものが美味しいかこだわる人は関西出身のことが多いからである。たいていは、東京のは本物ではないといった調子で話すから、ふ〜ん、そんなものか、ということになる。
〜お好み焼き店舗密度@2007(2)
苦瓜景子氏[夙川学院短大]調査
順位 府県 密度
(店/万人)
1 広島 6.09
2 徳島 3.56
3 兵庫 3.16
7 大阪 2.39
 ただ、データで見ると、そんなものかも。
 一番のお好み焼き好きは広島なのかも。家計調査の数字で見ればはっきりしそうだが、そこまで見る気はおきなかった。と言うのは、本場をどう見るべきかよくわからなかったから。
 結局、なんとなく納得してしまった説としては、以下3点である。(3)
  ・地方独特の呼称がある。
  ・「混ぜ焼き」ではなく、「重ね焼き」である。
  ・「地ソース」を使用している。

名称からすると、関西地区の隆盛は確かだ。
〜“お好み焼き”系の名称〜
東北
北関東
どんどん焼き
東京下町 もんじゃ焼き
静岡 遠州焼き
大阪 お好み焼き
洋食焼き
ネギ焼き
関西 モダン焼き
神戸/高砂 にくてん
広島 “広島風”お好み焼き
熊本 ちょぼ焼き(4)
(だいぶ違う料理だが、・・・)
沖縄 ヒラヤーチー(5)
朝鮮半島 チヂミ(6)
(プッチムゲ)
 徳島、広島、兵庫が三羽烏だとして、どんな名称があるのかざっと眺めて見ることにした。まあ、世界には類似料理は五万とありそうだが、右表のようなところか。
 余り食べないので、よくわからないので、抜けもあるかも知れぬが。

 “広島風”というのは、東京から見ての話で、後から有名になったから違いを際立たせるための接頭語であり、これは結構自己主張があるものに映る。
 しかし、関西地区には独自名称モノが多そうだし、呼び名へのこだわりも強いようだ。街おこして、全国名物作り運動だらけだが、“高砂名物にくてんをみなさんに知ってもらう”(7)だけで盛り上がる土地柄がありそうだ。

 ただ、「にくてん」にこだわるのはわかる気がする。お好み焼きとは、”好きに焼く” という意味の筈はなく、 ”好みの具を入れる” に違いなく、それは邪道であくまでも肉だぜという主張を感じる名称だからだ。

 そんなところを考えると、関西一円には、様々な名称がありそうな感じがする。具の内容にうるさいということだろうから、その点では日本一は間違いなかろう。

地ソースは多くても、こればかりはなんとも。
〜お好み焼きで耳にするソースメーカー例〜(8)
-地域- -企業-
佐野 ミツハソース >>>
東京 ユニオンソース >>>
江戸チドリ(佐野食品工業) >>>
トキハソース >>>
名古屋 コーミ >>>
京都 オジカソース >>>
蛇ノ目食品廣田徳七商店 >>>
ツバメ食品 >>>
大阪 イカリソース >>>
大黒ソース >>>
ブラザーソース(森彌食品) >>>
金紋ソース本舗 >>>
ツヅミソース >>>
ヘルメスソース(石見食品工業所) >>>
尼崎 ワンダフルソース(ハリマ食品) >>>
神戸 オリバーソース >>>
神戸宝ソース食品 >>>
ばらソース >>>
プリンセスソース(平山食品) >>>
三原 テングソース(中間醸造) >>>
広島 オタフクソース >>>
カープソース(毛利醸造) >>>
ミツワソース(サンフーズ) >>>
広島ぢゃけん(センナリ) >>>
徳島 イチミツボシ(加賀屋醤油) >>>
光食品 >>>
オサメソース >>>
全国 ブルドックソース >>>
カゴメ (本社: 名古屋) >>>
キッコーマン >>>
 さて、焼き方はとばして、地ソースを少し見てみようか。どうも、一時は矢鱈に流行ったようである。まあ、個人でもつくれないことはないから、独自品を出そうと思えばいくらでもできるだろうが、固定客獲得は簡単な話ではない。
 一寸、調べてみたが、関西には地域毎に味へのこだわりが相当あるようだ。広島とは様相が異なるようである。

 これだけ種類があると、選びようがない。ただ、感覚的には西日本のお好み焼のソースは“甘い〜”という感じがする。地元にしてみれば、その甘さ加減が美味しさの元なのだろうが。
 関西に様々な地ソースがあるのは、おそらくスパイスの味を楽しんでいるのだと思う。試供セールで試したことがあるが、関西の地ソースはおしなべて香味が立っている。

 これに気付くと、関西で育った人が、東京のはお好み焼きでないと言うのも当たっているかも。関東では、縁日屋台によく登場するが、一般にはソースは薄い酸味を利かたものが使われると聞いたことがある。ビールに合うかららしい。
 そして、なんと隠し味があり、それは醤油だという。
 関西の「洋食焼き」とは違うのである。

系譜が違うお好み焼きがありそうだ。
 ソースの味が違う話をしたが、それは東日本と西日本の味覚というだけではなさそうだ。
 そう思うのは、熊本に「ちょぼ焼き」があるから。これは、紛れも無く、関東スタイルの原型。特徴を引用させていただこう。(4)
  1. サイズが大きい。
  2. 具は自由に決められる。
  3. 出来上がったら必ず折りたたみ、長枕状にする。
  4. ヘラじゃなく箸で食う。
  5. 卵で綴じない。(具としては存在する.)
  6. 味付けがソースではなく醤油。
 当然ながらマヨネーズは使わない。
 マヨネーズ好きは、醤油やソース類と混合したものを、様々なものにつけて食べるが、それこそ“お好み”。

 そういえば、箸で食べる点も、大きな違いかも知れぬ。関西で本物を味いたいなら、ヘラ食が鉄則と聞かされたことがある。小生は、「ヘラ」とか「テコ」で、人前で食すのには著しく抵抗感があるので、できれば避けたいと思ったことを覚えている。
 もっとも、特別小さな起金「はがし」はそう気にはならない。もちろん、もんじゃ焼き用。腹に溜まる料理ではないから、どう考えても、子供向け駄菓子の一種だ。従って、その気分で食べる面白さがあり、なんとなく情緒が生まれる訳だ。
 このもんじゃ焼きだが、東京下町(月島/浅草)の観光食化している。(9)小生が始めて知ったのは、会社員になってからと遅い。名前も初耳だった。従って、誰かがブームとして仕掛けたと見ている。地場ビジネスの成功物語があるのではないか。
 薄く伸びる小麦粉液を焼いてパリパリした煎餅状部分の香ばしさを楽しむだけの料理という印象しかないので、小生は滅多に食べないが、人気が続いているようだ。そう思うのは、専用粉がスーパーで売られているから。
 自称、“通”の一人から聞いた話では、ソースは「ユニオンソース」で、具はベビースターラーメンが、もんじゃの王様だという。
 う〜む。残念だが、それを聞いても食指が動かぬ。

家庭用レシピ作りは難しい。
 さて、こうして眺めてみると、自家製お好み焼き作りは結構厄介なことに気付く。  前述の特徴にあがっていながら、抜かした「重ね焼き」が家庭では難しいからだ。重ねても焼けるには相当な熱量が必要である。家庭用電気製品は100V-15Aが上限だから、ホットプレートでは熱量的に力足らずではないか。
 本物を食べたいなら、好みの具を指定して、大きな焼き板で “焼き人”に作ってもらうしかあるまい。「重ね焼き」が正統というより、それができない調理用具では本格的なものができないということだと思う。

 従って、家庭で行うなら、「混ぜ焼き」だ。

 次が、ソース。こればかりは、お好み。地ソースとされているが、要するに、もともとはお店が指定した味のソースを作っていたということだろう。たいていは業務用であり、こんなものを家庭が買うのは無理。
 余り地場にこだわらず、自分の好きなものを選ぶしかあるまい。ただ、味に慣れているからといって、“LEA & PERRINS”のようなものは避けるべきだろう。味が付き易いドロドロ感溢れたものから選べばよいのではないか。
 どこのスーパーでも、お好み焼きソースは売っているが、こだわるのは考え物。甘さが合わないとつらいものがあるからだ。
 マヨネーズとの相性は考えない方がよいと思う。ソースだけで味わう方がよいだろう。ただ、甘い系統は沢山食べると多分飽きるから、その時に味に変化を与えるのに使う程度がよいと思う。

 焼き道具と、ソースが決まったら具の選定だ。“お好み”だから何でもよいのだろうが、豚バラ肉かイカとキャベツというところが、無難だろう。ただ、西日本流なら、豚より牛かな。徳島辺りは、牛小間かも。それもお勧めである。
 下準備といっても、食べ易いように切るだけだ。たいした準備ではない。ただ、ホットプレートの熱量が小さいとか、大量に作る場合は、具は予め軽く炒めておいた方がよかろう。

 手順からいえば、6段階。
  (1) 粉液の調合
  (2) 具の準備
  (3) 具と液の混練
  (4) 鉄板上で焼成
  (5) トッピング
  (6) ソース類塗布

トッピングは、決まりごとがあるのかよくわからないが、使われるものがある。
 【千切り紅生姜】
 【青海苔粉】
 【削り/粉鰹節】
 【天カス】
 【オプション(葱)】
 紅と緑の色期待はそれほど重要なものとも思えないから、生姜と海苔は好き好き。焼きソバとは違うと思う。
 粉液に鰹節の出汁を入れているなら、粉は加えない方がよいような気がする。ただ、削り節なら、味や食感で得るところは多きそうだ。
 ただ、「天カス」は意味があるかも。多分、魚介類を揚げた残りもので、その味が残っていることに意味があるのだと思う。汁を吸い込んで軟らかくなるものを食すのでもないし、もともと、焼き油を使っているから、油分を加える必要もないから、無くてもどうということもないのでは。
 葱は、好き好きだが、刺激がありすぎで折角のキャベツ味が薄れるので、予め軽く炒めたものはよいと思うが、家庭用の熱量では生感覚が強すぎるから避けた方がよいと思う。

 まあ、こんなことは末梢的な問題だ。家庭で一番厄介なのは、「粉液」の調整だろう。まあ、適当に小麦粉を水で溶けばできあがりではあるが、それなりに努力したいなら、少し考えた方がよい。
 一番簡単なのは、お好み焼き用の調整粉の購入だ。多分、初心者はこれ以上のものは作れないからお勧めする。
 店では、出汁を薄めた液を作り、これで同重量の薄力粉(粉は吟味されるらしい。)を溶き、十分寝かせる。(最低数時間で、普通は一晩らしい。)これに使用直前に、食感改良のためにすりおろした山芋を入れる。さらに、卵を入れたりすることもあるという。店毎に違いがあるのだと。従って、“らしい”という表記になるのである。
 このような調合に精力を使うのは面倒である。などと言うのは、東京で育った輩だからと言われそうだが。
 調整粉を使えば、まあそれなりのものができる。

 尚、飲み物は発泡系アルコール飲料がよいのでは。小生はビールだが、これも“お好み”。

【追記】
“こどもの頃に欠乏していた食の体験を取り戻そうとする厨房男の喰う・呑む・つくる・・・のはなし”と銘打ったブログを作成されている方からご意見を頂戴した。 [2009年11月25日]
   →  Blog「厨房男」

 なるほど感あり。“おじいちゃんの代はウチのオヤジと親戚関係”がある泉大津警察の横のお好み焼き屋さんを、けっこうちょくちょく使っていたという方だから当たり前だが。
 アドバイス頂いた内容を箇条書きにしてみた。
〜関西の状況について〜
  ・関西メーカーのソースは完成度が高い。
    -お好み焼き用ソースの専門家を擁す。
    -研究開発に注力している。
    -特に、調合にこだわっている。
  ・関西のソースは定番トッピングに合わせたものになる。
    -マヨネーズ+辛子(もしくは一味唐辛子)
  ・西日本の具は豚が基本。
    -「お好み焼き用」豚肉パックが存在する。[三枚肉を適当な厚みに切ったもの]
〜美味しく食べる方法〜
  ・試行した結果、混ぜ焼きより重ね焼きが美味との結論に至った。
    -混ぜ焼き「豚玉」はどうしても一味足らない感じがする。
     (豚肉の焦げた旨み不足が原因)
  ・家庭用ホットプレートでの「豚玉」作りにはコツがある。
    (1) 豚肉を敷いた上に生地を重ねる。
      (肉から染み出たラードでお好み焼きの表面がカリッと焼きあがる。)
    (2) 鰹節の粉を振る。(お店だと鯖節)
    (3) ホットプレートは熱量不足になりがちなので、蓋をして蒸し焼き。
      (中の生地まで適度に熱を通す。)
    (4) 蓋を取り、ひっくり返して、水分を飛ばす。
    [留意点]
      市販のお好み焼き用の三枚肉では些か薄すぎる。
      焼肉用の豚肉(通称トントロ)がよい。
    [Blog「厨房男」のイチオシレシピ] (上記の詳細)
      →  “お好み焼きのレシピをようやく・・・” Blog「厨房男」 [2009.08.26]

 --- 参照 ---
(1) 「粉モノ歴史館」 若竹学園[にっぽんお好み焼き協会]
   http://www.okonomiyaki.to/history.html
(2) “コナモン・大阪は名前負け!? たこ焼きは徳島、お好み焼きが広島1位” 産経新聞-msn [2008.2.20]
   http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/080220/sty0802202111003-n2.htm
(3) “お好み焼きのルーツは「にくてん」だった!! ” 中国新聞 [2002年12月11日]
   http://www.chugoku-np.co.jp/okonomi/special/O802121102.html
(4) “熊本ご当地お好み焼き「ちょぼ焼き」” blog俺のメシを晒す!! [2009年09月18日]
   http://plaza.rakuten.co.jp/meshiup/diary/200909180000/
(5) 「ヒラヤーチー」 だれでもうちなークッキング JTA
   http://www.churashima.net/gourmet/uchina_cooking/04/index.html
(6) “本場のチヂミは種類がたくさん!” ハイ・ソウルリポート ソウル観光公社
   http://japanese.visitseoul.net/visit2008jp/article.do?method=view&art_id=502466
(7) 「にくてん喰わん会事務局ブログ」
   http://nikutenjimukyoku.tenkomori.tv/
(8) ソース工業会会員一覧
   http://www.nippon-sauce.or.jp/guide/member.html
   「地ソース巡り」 blog日月のとりあえず今日も元気
   http://kotobuki1886.air-nifty.com/nichigetsunikki/cat7937756/index.html
   SITEMAP blog関西お好み焼き総研
   http://okosoken.osakazine.net/sitemap.html
(9) http://www.monja.gr.jp/
  http://www.asakusa-monjayaki.com/monja/
(お好み焼きのイラスト) (C) フリークリップアート食べ物素材
  http://clipart-food.com/


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