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2009.12.2
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南蛮菓子を試そう…


 カステラに 微糖はないかと きくメタボ
  油無しでも、甘い卵だけで十分美味しい。

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葡萄牙料理は日本人には違和感が余りないかも。
 今回は葡萄牙料理を考えてみたい。と言うのは、先日、ポルトガル料理店で遅い昼食を食べたから。
 料理自体に惚れた訳ではなく、ポルトガル語が日本で使われている例を記載したリーフレットがあり、単語の数が結構多かったので興味が湧いたにすぎない。

 日本の食にポルトガル語が入っているのは有名だが、少し調べてみると、その理由もわかる気がしてきた。
 鉄砲といった世界の最先端技術を持ち込んだこともあるから、仲良くしたかったと見ていたのだが、それだけではない。食の好みが似ているのだ。
 もちろん、肉食地域ではあるのだが、欧州の他の地域とは相当違う食文化だ。そのため、来日しても、違和感なく日本で食事ができたのではないか。そこで、日本人と食の交流が盛んに行われたのではないかと思えてくる。

 多分、一番親近感が湧いたのは、お米[Arroz]料理だ。欧州だから、リゾットが主体なのだろうが、それだけでなく、炊いたご飯も食べるのである。日本のご飯との違いと言えば、塩・油・ローリエを入れること。油が強いから、日本人にはキツかったかも知れぬが、結構食べることができたかも。そう思うのは、日本米によく似た形[Carolino]のお米を使うからで、外米タイプ[Agulha]ではないのだ。
 それに、海水天日塩を多用する習慣は日本と同じ。塩味大好きで意気投合したかも。
 揚げたての天麩羅[Tempero]を“塩の華[Flor de Sal]”(1)だけで食べる美味しさなど、今でも天下一品だし。

 世界制覇に動いた海の民だから、当然ながら、魚も好物。年末の京都 錦には棒鱈が並ぶが、それと同じで、ポルトガルでは肥えた干鱈[Bacalhau]だそうである。安物食材だったろう。もっとも、今では、どちらの国でも、高級品化していそうだが。
 それだけではない。鰯の塩焼き[Sardinhas Assadas]レモン汁かけも食卓に並ぶという。

 到来赤ワイン[Vino Tinto]も腐敗しにくいポートワインだったろうから、甘い酒を飲んでいた日本人にピタッとはまったのではなかろうか。

ポルトガルからは随分愉しみを教わったようだ。
 食では、揚げ物系統で、随分と教えてもらうことも多かったようだが、それ以外にも色々とあるようだ。
 一番はやはり、カルタ(carta)か。今でも、“ポルトガルの男はカードゲームが好き”だという。(2)賭博禁止だというが、実態はどうだか。

 なにせ、オイチョ(oito)を習い、ピン(pinta)の符丁が定着しているのだから、ただごとではない。

 “ランビキ”(alambique)を使えば、醗酵酒を蒸留し、ガ〜ンとくるアルコールリッチな酒にできることもわかり、焼酎を大いに堪能したに違いない。もちろん、タバコ(tabaco)も教わったのである。
 酒・煙草とくれば、あとは夜のお遊び。そう、京の先斗町(ponto)である。
 南蛮人のお陰で、一気に生活が乱れたか、生活に張りが生まれたのかは定かでないが。
 まあ、ともかく有難いことで、ポルトガル人には一目おくべきだろう。

昔の人は、南蛮菓子に仰天したのではないか。
 ただ、愉しみという点では、なんといっても南蛮菓子の影響が大きいと思う。様々な言葉が入っているからだ。
 その一番は、なんといっても、【Pao】パンである。今でも、菓子的なものも多い。
 そして、【Biscoito】ビスケット、【Caramelo】キャラメルとくる。後者は、カラメルなのかも知れぬが。日本の西洋菓子の原型はポルトガルから来たことがよくわかる。
 ただ、これらの言葉には西洋的イメージはあるが、文明開化以後の食品であり、南蛮感覚は無かろう。

 はっきりと南蛮好みとわかるのは、伝統砂糖菓子の方だ。
 【Confeito】金平糖と【Alfenim】有平糖

 前者は今でも人気がある。ポルトガルでは、角だらけの金平糖は少ないらしいが、多分フランス文化の影響だろう。地方では角出し形状を愛する人もいるのではないか。
 複雑な工程を経て製造されているかに見えるが、砂糖がけ機械さえあれば、えらく面倒だが作るのはそう難しくはないそうだ。日本にはただ一軒、専門店があるという。(3)

 後者は、昔はよく見かけたものである。小生は好きだが、さっぱりみかけなくなった。今はもっぱら茶菓子用途のようだ。(4)それなりのお値段ということかな。
 語源の説は色々見かけるが、ポルトガルの地方菓子だろう。今でも存在しているらしい。
 “a sugary paste that is hardened into shapes of little dolls and given as candy[Terceira Island @Azores]”(5)

 まあ、この辺りは、言われると、ああそうか南蛮菓子なのだな、といったところ。
 南蛮といえば、なんといっても、【Pan-de-lo】カステラ、【Bolo】ボーロ、【Fios de ovos】鶏卵素麺だろう。どれも卵リッチの甘さが際立つ菓子だ。そこが異国情緒を醸し出すのかも。
 カステラの語源はよくわかっていないようだが、“Pan-de-Castelo”[城]か、それとも、Pan-de-Castella”[王国名]かといった説しかないようだ。常識的には王国名だろう。好きな人は多いようで、全国どこでも作っている。それでも、地場品は人気があるようだ。(6)小生の場合は、上品な肌理細かなものでなく、ざくっとした食感で、底に粗目が残っている、手作り感が強いタイプが好きである。
 ボーロになると地場品中心になってくる。昔からお店の競争が激しかったようで、(7)今でも、名前が微妙に違うようである。(8)
 鶏卵素麺までくると、珍しいお菓子という感じかも。(9)

 この他に、小生は食べたことが無いのでよくわからぬが、【Sopa dourada】カスドースがあるそうだ。(10)
 【Queijada】ケイジャータ(11)と思われる復活南蛮菓子も登場したようだ。(12)

さて、つくるものは。
 葡萄牙から伝わった菓子が未だに健在なのを確認し、気分がのったところで、自製菓子を作ってみようではないか。といっても、カステラは荷が重い。
 ポルトガルらしさが堪能できるものにしようか。
 お勧めは、【Doce de ove】ドーチェ・ド・オヴォ。文字通りの代物。手順は以下の通り。
  (1) シロップを作る。
     ・砂糖(グラニュー糖)を、重量で半分の水に入れ、十分に煮詰める。
  (2) 卵黄を混ぜる。
     ・黄身だけ取り出し、コーンスターチを軽く振りいれ、よく混ぜる。
  (3) 卵黄液に熱いシロップを入れる。
     ・卵黄液を混ぜながら、熱したシロップを少しづつ入れる。
  (4) 鍋に入れ、加熱する。
     ・木ベラで混ぜながら煮立たせる。
     ・煮立ったら、弱火にして、木ベラで鍋に液が固着しないように力を入れ混ぜる。
     ・弱火で1分ほどでよい。
  (5) 石板か金属板の上に落として冷ます。
     ・形にこだわる必要はない。
 食べ方は自由。工夫次第。木の実をのせるのもよし。お抹茶というのも面白かろう。
 要するに、“ミルクとバター無しで、卵黄と砂糖だけの、こってりした甘さを味わおう”ということ。健康上この手のお菓子は拒絶するしかない方は、涙を流して頭で食べて下され。
 そうそう、和菓子店で最中の皮を買ってきて、その中に入れて食べると、和風調南蛮風情が楽しめる。これぞ、まさしく日本文化。

 折角だから、音楽も如何。
  → ファミローザハーモニー: 「Amor,Oracao,Gratidao〜愛・祈り・感謝」 (C) Famirosa harmony
      “ポルトガル、聖母マリアの奇蹟、シスター・ルシアに導かれ、カルメロ修道院で奇跡の録音!”
      [注] 作曲者 Vianna da Mottaはポルトガルのピアニスト


 --- 参照 ---
(1) “About Flor de Sal and Sal Marinho Tradicional ”
   http://www.flordesal.net/flordesal.htm
(2) “源流を歩く 美の国 日本=ウンスンカルタ 日本で生き延びた竜” 西日本新聞 [2005/09/28]
   http://www.nishinippon.co.jp/news/museum/special/050928.html
(3) 緑寿庵清水
   http://www.konpeito.co.jp/syouhin.html
(4) 「あるへいと」村岡総本舗
   http://www.muraoka-sohonpo.co.jp/product/aruheito.html
(5) http://www.azorestourism.com/english/guia/terceira.php
(6) 代表的カステラ店
   福砂屋
   http://www.castella.co.jp/
   文明堂総本店
   http://www.bunmeido.ne.jp/
   松翁軒
   http://www.shooken.com/
   杉谷本舗
   http://www.sugitanihonpo.co.jp/
   松井老舗
   http://www.fmc.jp/matsui/
   匠寛堂
   http://www.shokando.jp/
   長崎堂
   http://www.nagasakido.com/
(7) “昭和初期の名所、味 丸ぼうろは「北島」”差が新聞
   http://www.saga-s.co.jp/re_saga/1928Popularvote/kitajima.html
(8) 代表的ボーロ店
   「丸芳露」北島
   http://www.marubolo.com/kodawari/index.html
   「丸ぼうろ」村岡屋
   http://www.muraokaya.co.jp/rekishi_marubouro.php
   「佐賀丸ボーロ」岩松堂本舗
   http://shop.yumetenpo.jp/goods/goodsList.jsp?st=kasutera.biz&category=4&action=category
   「丸房露」菓心まるいち
   http://www.kashinmaruichi.co.jp/maruboro.html
   「丸ぼうろ」 木村製菓
   http://www.e-marubouro.com/
   「丸房露」栄城堂
   http://1912eijodo.jp/
   「丸房露」鶴屋本店・・・オランダ渡来
   http://www.marubouro.co.jp/
(9) 松屋 http://www.matsuya1673.com/article/index.html
(10) 蔦屋 http://www.hirado-tsutaya.jp/products/dento.html
(11) http://www.world66.com/europe/portugal/sintra/eating_out/queijada_de_sintra
(12) 丸谷一郎: “幻の南蛮菓子「ケジヤアド」、佐賀でレシピ発見…再現して販売” 読売新聞 [2009年4月20日]
   http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090116-754442/news/20090420-OYT1T00646.htm
(日本語化したポルトガル語出典)
  「日本語になったポルトガル語」 日本ポルトガル協会
  http://www.nippokyokai.org/BekkanNihongoPortugalgo.html
  「日本に伝わったポルトガル菓子」 朝日カルチャーセンター京都校 [2008年11月16日]
  http://fumi.yu-yake.com/profile/events/kyoto2/vol7-1.htm
(カステラのイラスト) (C) フリー素材の食べ物イラスト屋 http://food-illustration.com/


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