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2010.8.3
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勝手に考えた本格派ラタトゥイユ…

 拙宅のラタトゥイユ作りは、透明ガラス蓋の小さな古典的なセラミック深鍋で。
 冷めたらそのまま冷蔵庫へ。一般には、仏蘭西製琺瑯鍋が一番お洒落らしい。

イラスト (C) SweetRoom

 夏料理としてはラタトゥイユ[Ratatouille]がお勧め。夏野菜とオリーブオイルだけの簡単料理だし。・・・というような話を至るところで聞かされる。正しく、その通りだと思うが、調理の仕方は色々。
 どう作るか、一つの例を提示してみたくなった。拙宅では、以下のように作っている訳ではないが、まあ、それに準じたものを気に入って食べている。
 ご参考迄。

 まず、定義から入るのは野暮で恐縮なのだが、これは避けられない。一般的には、オリーブオイルを用いた野菜の雑多な煮込み料理であり、それはそうなのだが、ここを明確にしておいた方がよい。そうでないと、何を作っているのかわからなくなる。鶏肉と野菜のトマトソース煮込みの冷製のようなものもあるし、野菜のクタクタ煮としか思えないものもあるからだ。まあ、それはそれで好きなら結構な話だが、折角なら瓜科の野菜の美味しさを味わいたいものである。それこそがラタトゥイユ料理の醍醐味だと思うからだ。

 その場合は、以下を原則とすべきでは。
 ・瓜系の野菜だけを多種入れる。
    -最低4種を用いる。
 ・言葉の意味通りの“ごった煮”化は避ける。
    -水分が多い野菜なので、野菜の種類別に前処理をしっかり行う。
 ・長時間煮込まず、さっと仕上げる。
    -煮詰めたりない。
 ・野菜の旨味を賞味する。
    -ブイヨン類は使わ無い。肉類も入れない。
 ・熟した味の濃い野菜を使う。
    -新鮮な野菜はなるべく使わない。
 ・調味料は単純なものにする。
    -オリーブオイル・塩・胡椒だけ。
 ・大蒜と玉葱で風味を出す。
    -味を出すための材料は形を出さないようにする。
 ・香味ハーブ類はオプション。
    -好きなら入れて楽しむ。
 ・味を安定させるために多量に作る。
    -冷蔵庫で冷やしてから沢山食べる。

 並べてみるとずいぶん多いが、このなかで何が一番重要かおわかりになるだろうか。ここが肝なのである。この答えがわからないと、以下をお読みになってもピンとこないかも。
 答えは単純で、野菜の“調達”。料理の質の大半は野菜の質で決まる。言われれば当たり前となるが、それは頭で答えを出しているだけ。ラタトゥイユ好きならすぐにわかる答えなのである。
 それは、野菜の買い方が勝負だからだ。

 なかでもポイントは“熟した味の濃い野菜”という点。
 要するに、採れ過ぎて大特売中の商品や売れない不揃い品が最高のお勧めなのである。期限切れ間近とみなされ、トンデモ価格になっているモノのなかに、最適品があるということ。ただ、瓜系野菜は矢鱈と水分が多ので、陳列時間が長いとカビ類が繁殖しかねないから、その兆候が無いことを確認する必要がある。
 そうそう、“熟れた”の反対語になりかねない、“干乾びた”類の野菜も又最高であることを忘れずに。余計な水分が飛んでいるから味が濃くて美味しさが増すのである。
 つまり、淡い美しい色で瑞々しい感じを受ける野菜や、形が整った綺麗な野菜では、多くの場合、たいした味はだせないということ。産地や、栽培方法より、濃縮された野菜の旨味がありそうな商品を購入することが大事なのである。
 お店では、熟しきったトマトや、乾燥しかかった茄子を陳列していることは滅多にないから、できる限り、それに該当するものを購入するということ。野菜の“目利き”で料理の質が決まってしまうのだ。

 くどい説明なので辟易されたかも知れないが、早く言えば、遠出した際、お土産として、売れ残りの、農家直販不揃い品購入をお勧めしているということ。持ち帰りの際に潰れてもよいし、帰宅してから数日ほったらかしておいてもかまわない。お気楽そのもの。
 作ろうと意を決して全種類を購入するのではなく、バラバラと購入し、集まったら料理開始でよいのである。

 さて、その4種類の瓜だが、(A-1) トマト、(A-2) 茄子、(A-3) 胡瓜・ズッキーニ・冬瓜・白瓜類、(A-4) パプリカを指す。(A-3)は最低1種類あればよい。もちろん種類が増えたところで何の問題もない。ただ、この4種の分量のバランスがおかしくならないように留意すればよいだけのこと。

 調達の次に重要なのは、個々の前処理である。たいしたことをする訳ではない。繰り返すが、瓜科の野菜はほとんどが水分であることへの対処と、不味さの原因である皮を除こうというだけ。個別に、ポイントを書いておこう。繰り返すが、これすべては煮るに当たっての“前処理”である。注意すべきは、軽い処理に留めること。特に、それぞれに塩・胡椒ををふるので、かけすぎないこと。
(A-1) トマト
 ・湯剥きする。
    -皮ごと煮ると薄皮だけが残り不愉快極まる。
 ・青いヘタ部分は完全に取り去る。
    -硬いし青臭さが出かねない。
 ・輪切りにしておく。
    -流れ出た液体もすべてとっておく。
(A-2) 茄子
 ・皮をピーラーですべて剥く。(ヘタの方からだと簡単。)
    -皮は硬くて美味しくない。多少残ってもかまわない。
 ・しばらく放置し、できる限り乾燥させる。
    -水分が多いと味が落ちる。
 ・水に晒す必要はない。
    -水分減少の妨げになる処理はお勧めできない。
 ・輪切りにして、すぐに、軽く塩・胡椒をふる。
    -実から水が流れ出ないように注意。
 ・十分な量の油で軽く炒めて皿にとる。(焼かない。)
    -油を十分染み込ませるのが茄子の美味しさの鍵。
(A-3) 胡瓜・ズッキーニ・冬瓜・白瓜
 ・皮は斑でよいからピーラーで軽く剥く。
    -皮が味を高めることはないと見ている。(皮の食感が好きなら多少は残す。)
 ・鍋に入れる直前に輪切りにして、軽く塩・胡椒をふる。
    -汁が流れ出ないように注意する。
 ・ヘタ部分は多めに捨てる。尻は少しでよいが。
    -苦味部分の混入は避けよう。
 ・十分炒めて皿にとる。
    -好き好きではあるが、多少の焼き色がついても気にしない。
(A-4) パプリカ
 ・軽く焼くとよいが、まず焦げるので止めた方がよい。
    -プロの美味しい料理は、水分を飛ばしている。
 ・ヘタ、尻、種と綿をよく取り去る。
    -内側の白い綿部分は手でよくもぎ取ること。
 ・大きく刻んで軽く塩・胡椒をふってしばらく放置。
    -残念ながら水分はたいして飛ばない。
(B) 南瓜
 ・なくてもよい。瓜系だから入れたければ如何。
    -美味しくなるという訳でもないが、南瓜好きならお勧め。
 ・他の野菜に比べて少量にしておくこと。
    -カボチャの甘さが強すぎると興ざめとなる。
 ・皮はつけないで、薄板切りにする。
    -生でも食べられそうな厚さにするとよい。
 ・軽く炒めるておく。
    -焦げない程度に両面を油焼きしているようなもの。
(C) ピーマン、苦瓜
 ・特に欲しくなければ、入れない。
    -味を落とすから。
 ・どうしても彩が欲しいなら別である。
    -ピーマンはピンキリ。価格で判断できない。
(X) 玉葱
 ・玉葱は風味付けでなく、野菜として入れてもよい。これが好きな人もいる。
    -所謂、櫛切りにして、ざっと水で洗う。

 準備ができたら、本番。
(1) 大蒜と玉葱の微塵切りを作る。好きな量で。
(2) 大目のオリーブオイルに大蒜を入れ、低温で熱して風味を出す。
(3) 火を多少強めて玉葱を入れて十分炒める。
(4) 玉葱がしっとりしたら、さらに火を強めて、パプリカを入れて炒める。
  玉葱そのものも食べたいなら、同時に櫛切りを入れる。
(5) 火が通った感じがしたら、トマト以外の、処理済みの瓜類全量を入れ、さらに炒める。
(6) 熱が行き渡ったら、輪切りトマトを手で潰しながら鍋に入れる。
  とっておいた流出液体も入れる。
(7) 火加減を調節して、数分、蒸し煮状態にする。
(8) 味を見て、塩・胡椒でさらに調整し、最後に少量のオリーブオイルを追加する。
(9) 火からおろし、冷めたら冷蔵庫で保存。

 尚、ハーブ類は適当に。セロリ好きなら、パプリカと一緒にざっと刻んで入れてとよい。香りになれているなら、プロバンス風にするのがよい。とりあえず、タイムを入れておくだけでも、夏らしさが出るかも。 以上、ごたごた細かく書いたが、レシピを覚えるような料理ではない。材料の水分を減らして、それぞれに下味をつけ、煮詰める時間を短くしているにすぎない。野菜調達が上首尾にできさえすれば、それほど気にしなくてもよい話。原則に従えば、こうなるという見本を示したにすぎない。

 尚、これだけ気遣って作ったラタトゥイユはどう食べようが美味しい。 ミルク・バターが入らない田舎パン(Pain de Campagne)とキリリと冷やした白ワインで暑さを忘れるというのはどうか。
 

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