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オジサンのための料理講座  ↓イラスト (C) SweetRoom

2016.1.30

アイリッシュ的食事を試す…

2月1日は、知る人ぞ知る、アイルランドのキリスト教の修道女の日、St Brigit's Day。
ケルト文化からすれば、春の始まりを告げる日ということになろうか。家事が得意な人で、土着の文化的伝統を守りながら布教を続けたということで人気があるらしい。
よく知られているイベントは、3月17日の方。アイルランドにケルト文化を融合しながらカトリック布教を進めた聖人の記念日、St Patrick's Day。
イースターの前の断食期間の真っただ中に、このような記念日が設定されていること自体がケルト的と言えるのだとか。それこそ、肉食禁忌期間の中日に突如コーンビーフキャベツ煮を食すお祭りが行われる訳で。おそらく、春分を前にした伝統行事日だったのだろう。

日本では3月17日前後の土日に各地でイベント。2016年の東京での、緑色のパレードは3月20日(日)。こういう時代、発祥は宗教でも、世俗的な「お祭り」として、信仰に関係なく多くの人々が交流を愉しむ行事が盛んになることは素晴らしいこと。
食の多様化もそういう観点では結構重要だと思う。

ということでケルト的食を取り上げてみた。
よく耳にするのが、ラムとじゃがいものアイリッシュシチューやギネスの牛肉煮込み。その料理の特徴は、"Easy, healthy, tasty."らしい。
和食を食べている身から考えると、特段健康に寄与する料理とも思えないが、ギタギタ脂の肉料理ではないから、カロリー過多になる恐れはなさそうである。
一方、簡便との指摘は間違いなく当たっている。
シチューは、小麦粉とバターのホワイトソースのルーを使うことが多いが、そうはならない。タマネギ味に塩胡椒調味で、ハーブ類を加えるだけ。えらく手抜き。和食で言えば、肉じゃがのようなもの。
ソーダブレッドにしても、イースト醗酵無しで、小麦粉とバターミルクに重曹を加えて作る訳で、ショートニング的な油脂無し。実に簡素で手間いらず。しかし、冷めると堅くなる可能性が高そうで、惹かれるようなパンとは言い難かろう。

冷静に眺めれば「乏しい食材」のなかで生き抜いてきた民族の知恵の結晶のような気がする。日本のように、食材の種類が豊富で、利用方法の工夫を重ねてきた民族とは体質が違っていそう。一番の違いは、アイリッシュは肉食が嬉しい民族という点ではなかろうか。米国に移住した人達がコーンビーフ缶詰を作り出した位なのだから。
島国だから魚食も大いにあるが、それは肉食禁忌期間の代替食的色彩が濃い。西欧としては珍しい海藻食も存在するが、致し方なく食べてきたのでは。
しかし、だからこそ魅力的な「食」とは言えまいか。

と言うことなら、テキトーに自称アイリッシュ料理で楽しむのも一興。

【Soda bread擬】
日本ではバターミルクが売っていないから、水にヨーグルトを加えたもので代用。少々逸脱するが、オリーブオイルも少々加えよう。
全粒粉と薄力粉を半々にベーキングパウダーを入れ、気持ち程度に三温糖も。余り捏ねまわさずにまとめ、ナイフで薄切りにして、オーブンで焼く。米国移民的にはなるが、キャラウエイシードと干葡萄も入れるのも悪くなかろう。
もちろん、焼き立てを食べる。

【PEPPERED (smoked) MACKEREL FILLET IN SUNFLOWER OIL, canned】
燻製サバのパテはガレットのお店で時々食べるが、自分で燻製を作成するのはいかにも面倒。そこまでする気はしないというに過ぎぬが。そうなると、缶詰購入しかなかろう。
アイルランド産サバの燻製オイル漬け缶詰があるからだ。と言っても、扱い店が限られている。しかも、全く同じ商品にもかかわらず、矢鱈に高級品化させている店がある一方で、驚くほど廉価だったりするので、訳がわからぬ。
国産の"缶つま"シリーズにも同様なものがあるようだが、食べたことはない。このシリーズ日本人好みの味付けnようだから、こちらが無難かも。
ともあれ、ママでパンに乗せるだけ。パテ風にしたいなら、潰してマヨネーズとレモン絞り汁を加えるとよかろう。

【Coddle】
ポテトスープの素を水で溶かしたものに、大きなじゃがいも四つ切、ざっくり切った玉葱と人参、ぶつぎりベーコンを入れたら、タイムをちぎって乗せ、粗挽胡椒を軽く振りかける。後は煮るだけ。保温鍋だと超楽。
出来上がっ頃あいになったら、スープの味を見て、必要なら塩を加える。
スープ皿に盛ったらパセリ微塵切りを。アイルランドではジャガイモはボイルするもので、米国的なベークは稀だったとか。

手抜き料理がアイリッシュという偏見を増長させると拙いので、お暇なら【Colcannon擬】という手も。2月1日のFeast Dayとしては、本来はコレとジャガイモケーキだろうが、手がかかり過ぎるので、小生は敬遠。・・・法蓮草糸切とベーコンを少量の水でドロドロ煮。湯は捨てて裏漉し。バターを溶かし、これと、玉葱微塵切、マッシュポテトをよく混ぜながら炒める。塩胡椒で調味。

【スイーツ】
Irish Moss(天草類似の紅藻類)を使ったデザート(寒天スイーツ的)が有名らしいが、ゼラチンで代用。寒天だと中華風になりかねないので。
牛乳を温め粉ゼラチンを入れバニラエッセンスを滴下し、冷ましてから冷蔵庫へ。
砂糖無しなので、食べる際に、コンデンスミルクかけで、苺を添える。アイルランドではコンデンスミルク需用が乏しいそうだから、このような場合は多分生クリームになるのだろうが、それはよしにした。
もちろん紅茶で。ミルクティー文化の国だから、おそらく相当濃く出る茶葉を使っていると思われる。小生はストレート好きなので、缶を購入して持て余してもこまるので、ここは馴れた茶葉で多少濃い目ということに。

アイリッシュの食事は、最近はワインがらしいが、それまでは飲みながらの習慣は全くなかったそうだ。缶/瓶ビールなどもっての他ということ。
家で食べ終わってからそそくさと出かけ、パブで生ビールなのだ。
寒い夜に、それはえらく面倒だ。
そうなると、Cork Dry Ginか。小生はこの名前初耳。コークは港町だから、船員相手のホワイトリカーだったのだろうが。その地も、今や、グルメのメッカらしいから、もしも人気ブランドだとすればちょっと試したくもなる。それに、通常は常温ジントニックで食前酒というのにもビックリさせられたし。一体、どんな香りになるのだろう。
ところが、生憎とお店にはこのブランドはなかった。取り寄せる気にもならないので、やむを得ず敬遠。・・・ジンと言えばロンドン系が主流。(主要ブランド:Bombay Sapphire, Beefeater, Gordon's, Tanqueray, Gilbey's)例外は冷凍庫内で冷やして飲む独のシュタインヘイガーか。
そうなると、ウイスキー。

【Irish whiskey】
スコッチと違い、ピュアポット3度蒸留であることが特徴とされている。ピートのスモーキーフレーバーを感じさせない軽さがウリ。となると、ストレートでガンガン飲む人達が多いのかも。
出番はもっぱら冬で、ホットもアリだそうな。
折角だから、クローブの実を浮かせるのがよさげ。

と言うことで、ここまで。

(参考)
松井ゆみ子:「家庭で作れるアイルランド料理」 河出書房新社 2013年
松井ゆみ子:「ケルトの国のごちそうめぐり」 河出書房新社 2004年
松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー@アイルランド生活ブログ-ICT
[1976年版復刻] マーナ デイヴィス[伊丹十三 訳]:「ポテト・ブック」河出書房新社 2014年

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